2201 イエスはもう一度たとえをもって彼らに話された。
2202 「天の御国は、王子のために結婚の披露宴を設けた王にたとえることができます。
2203 王は、招待しておいたお客を呼びに、しもべたちを遣わしたが、彼らは来たがらなかった。
2204 それで、もう一度、次のように言いつけて、別のしもべたちを遣わした。『お客に招いておいた人たちにこう言いなさい。「さあ、食事の用意ができました。雄牛も太った家畜もほふって、何もかも整いました。どうぞ宴会にお出かけください。」』
2205 ところが、彼らは気にもかけず、ある者は畑に、別の者は商売に出て行き、
2206 そのほかの者たちは、王のしもべたちをつかまえて恥をかかせ、そして殺してしまった。
2207 王は怒って、兵隊を出して、その人殺しどもを滅ぼし、彼らの町を焼き払った。
2208 そのとき、王はしもべたちに言った。『宴会の用意はできているが、招待しておいた人たちは、それにふさわしくなかった。
2209 だから、大通りに行って、出会った者をみな宴会に招きなさい。』
2210 それで、しもべたちは、通りに出て行って、良い人でも悪い人でも出会った者をみな集めたので、宴会場は客でいっぱいになった。
2211 ところで、王が客を見ようとして入って来ると、そこに婚礼の礼服を着ていない者がひとりいた。
2212 そこで、王は言った。『あなたは、どうして礼服を着ないで、ここに入って来たのですか。』しかし、彼は黙っていた。
2213 そこで、王はしもべたちに、『あれの手足を縛って、外の暗やみに放り出せ。そこで泣いて歯ぎしりするのだ』と言った。
2214 招待される者は多いが、選ばれる者は少ないのです。」
2215 そのころ、パリサイ人たちは出て来て、どのようにイエスをことばのわなにかけようかと相談した。
2216 彼らはその弟子たちを、ヘロデ党の者たちといっしょにイエスのもとにやって、こう言わせた。「先生。私たちは、あなたが真実な方で、真理に基づいて神の道を教え、だれをもはばからない方だと存じています。あなたは、人の顔色を見られないからです。
2217 それで、どう思われるのか言ってください。税金をカイザルに納めることは、律法にかなっていることでしょうか。かなっていないことでしょうか。」
2218 イエスは彼らの悪意を知って言われた。「偽善者たち。なぜ、わたしをためすのか。
2219 納め金にするお金をわたしに見せなさい。」そこで彼らは、デナリを一枚イエスのもとに持って来た。
2220 そこで彼らに言われた。「これは、だれの肖像ですか。だれの銘ですか。」
2221 彼らは、「カイザルのです」と言った。そこで、イエスは言われた。「それなら、カイザルのものはカイザルに返しなさい。そして神のものは神に返しなさい。」
2222 彼らは、これを聞いて驚嘆し、イエスを残して立ち去った。
2223 その日、復活はないと言っているサドカイ人たちが、イエスのところに来て、質問して、
2224 言った。「先生。モーセは『もし、ある人が子のないままで死んだなら、その弟は兄の妻をめとって、兄のための子をもうけねばならない』と言いました。
2225 ところで、私たちの間に七人兄弟がありました。長男は結婚しましたが、死んで、子がなかったので、その妻を弟に残しました。
2226 次男も三男も、七人とも同じようになりました。
2227 そして、最後に、その女も死にました。
2228 すると復活の際には、その女は七人のうちだれの妻なのでしょうか。彼らはみな、その女を妻にしたのです。」
2229 しかし、イエスは彼らに答えて言われた。「そんな思い違いをしているのは、聖書も神の力も知らないからです。
2230 復活の時には、人はめとることも、とつぐこともなく、天の御使いたちのようです。
2231 それに、死人の復活については、神があなたがたに語られた事を、あなたがたは読んだことがないのですか。
2232 『わたしは、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である』とあります。神は死んだ者の神ではありません。生きている者の神です。」
2233 群衆はこれを聞いて、イエスの教えに驚いた。
2234 しかし、パリサイ人たちは、イエスがサドカイ人たちを黙らせたと聞いて、いっしょに集まった。
2235 そして、彼らのうちのひとりの律法の専門家が、イエスをためそうとして、尋ねた。
2236 「先生。律法の中で、たいせつな戒めはどれですか。」
2237 そこで、イエスは彼に言われた。「『心を尽くし、思いを尽くし、知力を尽くして、あなたの神である主を愛せよ。』
2238 これがたいせつな 一の戒めです。
2239 『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』という 二の戒めも、それと同じようにたいせつです。
2240 律法全体と預言者とが、この二つの戒めにかかっているのです。」
2241 パリサイ人たちが集まっているときに、イエスは彼らに尋ねて言われた。
2242 「あなたがたは、キリストについて、どう思いますか。彼はだれの子ですか。」彼らはイエスに言った。「ダビデの子です。」
2243 イエスは彼らに言われた。「それでは、どうしてダビデは、御霊によって、彼を主と呼び、
2244 『主は私の主に言われた。「わたしがあなたの敵をあなたの足の下に従わせるまでは、わたしの右の座に着いていなさい。」』と言っているのですか。
2245 ダビデがキリストを主と呼んでいるのなら、どうして彼はダビデの子なのでしょう。」
2246 それで、だれもイエスに一言も答えることができなかった。また、その日以来、もはやだれも、イエスにあえて質問をする者はなかった。
2301 そのとき、イエスは群衆と弟子たちに話をして、
2302 こう言われた。「律法学者、パリサイ人たちは、モーセの座を占めています。
2303 ですから、彼らがあなたがたに言うことはみな、行い、守りなさい。けれども、彼らの行いをまねてはいけません。彼らは言うことは言うが、実行しないからです。
2304 また、彼らは重い荷をくくって、人の肩に載せ、自分はそれに指一本さわろうとはしません。
2305 彼らのしていることはみな、人に見せるためです。経札の幅を広くしたり、衣のふさを長くしたりするのもそうです。
2306 また、宴会の上座や会堂の上席が大好きで、
2307 広場であいさつされたり、人から先生と呼ばれたりすることが好きです。
2308 しかし、あなたがたは先生と呼ばれてはいけません。あなたがたの教師はただひとりしかなく、あなたがたはみな兄弟だからです。
2309 あなたがたは地上のだれかを、われらの父と呼んではいけません。あなたがたの父はただひとり、すなわち天にいます父だけだからです。
2310 また、師と呼ばれてはいけません。あなたがたの師はただひとり、キリストだからです。
2311 あなたがたのうちの一番偉大な者は、あなたがたに仕える人でなければなりません。
2312 だれでも、自分を高くする者は低くされ、自分を低くする者は高くされます。
2313 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは人々から天の御国をさえぎっているのです。自分も入らず、入ろうとしている人々をも入らせません。
2314 〔わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちはやもめの家を食いつぶし、見えのために長い祈りをしています。だから、おまえたちは人一倍ひどい罰を受けます。〕
2315 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは改宗者をひとりつくるのに、海と陸とを飛び回り、改宗者ができると、彼を自分より倍も悪いゲヘナの子にするのです。
2316 わざわいだ。目の見えぬ手引きども。おまえたちは言う。『だれでも、神殿をさして誓ったのなら、何でもない。しかし、神殿の黄金をさして誓ったら、その誓いを果たさなければならない。』
2317 愚かで、目の見えぬ者たち。黄金と、黄金を聖いものにする神殿と、どちらがたいせつなのか。
2318 また、言う。『だれでも、祭壇をさして誓ったのなら、何でもない。しかし、祭壇の上の供え物をさして誓ったら、その誓いを果たさなければならない。』
2319 目の見えぬ者たち。供え物と、その供え物を聖いものにする祭壇と、どちらがたいせつなのか。
2320 だから、祭壇をさして誓う者は、祭壇をも、その上のすべての物をもさして誓っているのです。
2321 また、神殿をさして誓う者は、神殿をも、その中に住まわれる方をもさして誓っているのです。
2322 天をさして誓う者は、神の御座とそこに座しておられる方をさして誓うのです。
2323 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは、はっか、いのんど、クミンなどの十分の一を納めているが、律法の中ではるかに重要なもの、正義とあわれみと誠実を、おろそかにしているのです。これこそしなければならないことです。ただし、十分の一もおろそかにしてはいけません。
2324 目の見えぬ手引きども。ぶよは、こして除くが、らくだは飲み込んでいます。
2325 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは杯や皿の外側はきよめるが、その中は強奪と放縦でいっぱいです。
2326 目の見えぬパリサイ人たち。まず、杯の内側をきよめなさい。そうすれば、外側もきよくなります。
2327 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは白く塗った墓のようなものです。墓はその外側は美しく見えても、内側は、死人の骨や、あらゆる汚れたものがいっぱいです。
2328 そのように、おまえたちも外側は人に正しく見えても、内側は偽善と不法でいっぱいです。
2329 わざわいだ。偽善の律法学者、パリサイ人。おまえたちは預言者の墓を建て、義人の記念碑を飾って、
2330 『私たちが、父祖たちの時代に生きていたら、預言者たちの血を流すような仲間にはならなかっただろう』と言います。
2331 こうして、預言者を殺した者たちの子孫だと、自分で証言しています。
2332 おまえたちも父祖たちの罪の目盛りの不足分を満たしなさい。
2333 おまえたち蛇ども、まむしのすえども。おまえたちは、ゲヘナの刑罰をどうしてのがれることができよう。
2334 だから、わたしが預言者、知者、律法学者たちを遣わすと、おまえたちはそのうちのある者を殺し、十字架につけ、またある者を会堂でむち打ち、町から町へと迫害して行くのです。
2335 それは、義人アベルの血からこのかた、神殿と祭壇との間で殺されたバラキヤの子ザカリヤの血に至るまで、地上で流されるすべての正しい血の報復がおまえたちの上に来るためです。
2336 まことに、おまえたちに告げます。これらの報いはみな、この時代の上に来ます。
2337 ああ、エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者。わたしは、めんどりがひなを翼の下に集めるように、あなたの子らを幾たび集めようとしたことか。それなのに、あなたがたはそれを好まなかった。
2338 見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。
2339 あなたがたに告げます。『祝福あれ。主の御名によって来られる方に』とあなたがたが言うときまで、あなたがたは今後決してわたしを見ることはありません。」
2401 イエスが宮を出て行かれるとき、弟子たちが近寄って来て、イエスに宮の建物をさし示した。
2402 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「このすべての物に目をみはっているのでしょう。まことに、あなたがたに告げます。ここでは、石がくずされずに、積まれたまま残ることは決してありません。」
2403 イエスがオリーブ山ですわっておられると、弟子たちが、ひそかにみもとに来て言った。「お話しください。いつ、そのようなことが起こるのでしょう。あなたの来られる時や世の終わりには、どんな前兆があるのでしょう。」
2404 そこで、イエスは彼らに答えて言われた。「人に惑わされないように気をつけなさい。
2405 わたしの名を名のる者が大ぜい現れ、『私こそキリストだ』と言って、多くの人を惑わすでしょう。
2406 また、戦争のことや、戦争のうわさを聞くでしょうが、気をつけて、あわてないようにしなさい。これらは必ず起こることです。しかし、終わりが来たのではありません。
2407 民族は民族に、国は国に敵対して立ち上がり、方々にききんと地震が起こります。
2408 しかし、そのようなことはみな、産みの苦しみの初めなのです。
2409 そのとき、人々は、あなたがたを苦しいめに会わせ、殺します。また、わたしの名のために、あなたがたはすべての国の人々に憎まれます。
2410 また、そのときは、人々が大ぜいつまずき、互いに裏切り、憎み合います。
2411 また、にせ預言者が多く起こって、多くの人々を惑わします。
2412 不法がはびこるので、多くの人たちの愛は冷たくなります。
2413 しかし、最後まで耐え忍ぶ者は救われます。
2414 この御国の福音は全世界に宣べ伝えられて、すべての国民にあかしされ、それから、終わりの日が来ます。
2415 それゆえ、預言者ダニエルによって語られたあの『荒らす憎むべき者』が、聖なる所に立つのを見たならば、(読者はよく読み取るように。)
2416 そのときは、ユダヤにいる人々は山へ逃げなさい。
2417 屋上にいる者は家の中の物を持ち出そうと下に降りてはいけません。
2418 畑にいる者は着物を取りに戻ってはいけません。
2419 だがその日、哀れなのは身重の女と乳飲み子を持つ女です。
2420 ただ、あなたがたの逃げるのが、冬や安息日にならぬよう祈りなさい。
2421 そのときには、世の初めから、今に至るまで、いまだかつてなかったような、またこれからもないような、ひどい苦難があるからです。
2422 もし、その日数が少なくされなかったら、ひとりとして救われる者はないでしょう。しかし、選ばれた者のために、その日数は少なくされます。
2423 そのとき、『そら、キリストがここにいる』とか、『そこにいる』とか言う者があっても、信じてはいけません。
2424 にせキリスト、にせ預言者たちが現れて、できれば選民をも惑わそうとして、大きなしるしや不思議なことをして見せます。
2425 さあ、わたしは、あなたがたに前もって話しました。
2426 だから、たとい、『そら、荒野にいらっしゃる』と言っても、飛び出して行ってはいけません。『そら、へやにいらっしゃる』と聞いても、信じてはいけません。
2427 人の子の来るのは、いなずまが東から出て、西にひらめくように、ちょうどそのように来るのです。
2428 死体のある所には、はげたかが集まります。
2429 だが、これらの日の苦難に続いてすぐに、太陽は暗くなり、月は光を放たず、星は天から落ち、天の万象は揺り動かされます。
2430 そのとき、人の子のしるしが天に現れます。すると、地上のあらゆる種族は、悲しみながら、人の子が大能と輝かしい栄光を帯びて天の雲に乗って来るのを見るのです。
2431 人の子は大きなラッパの響きとともに、御使いたちを遣わします。すると御使いたちは、天の果てから果てまで、四方からその選びの民を集めます。
2432 いちじくの木から、たとえを学びなさい。枝が柔らかになって、葉が出て来ると、夏の近いことがわかります。
2433 そのように、これらのことのすべてを見たら、あなたがたは、人の子が戸口まで近づいていると知りなさい。
2434 まことに、あなたがたに告げます。これらのことが全部起こってしまうまでは、この時代は過ぎ去りません。
2435 この天地は滅び去ります。しかし、わたしのことばは決して滅びることがありません。
2436 ただし、その日、その時がいつであるかは、だれも知りません。天の御使いたちも子も知りません。ただ父だけが知っておられます。
2437 人の子が来るのは、ちょうど、ノアの日のようだからです。
2438 洪水前の日々は、ノアが箱舟に入るその日まで、人々は、飲んだり、食べたり、めとったり、とついだりしていました。
2439 そして、洪水が来てすべての物をさらってしまうまで、彼らはわからなかったのです。人の子が来るのも、そのとおりです。
2440 そのとき、畑にふたりいると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。
2441 ふたりの女が臼をひいていると、ひとりは取られ、ひとりは残されます。
2442 だから、目をさましていなさい。あなたがたは、自分の主がいつ来られるか、知らないからです。
2443 しかし、このことは知っておきなさい。家の主人は、どろぼうが夜の何時に来ると知っていたら、目を見張っていたでしょうし、また、おめおめと自分の家に押し入られはしなかったでしょう。
2444 だから、あなたがたも用心していなさい。なぜなら、人の子は、思いがけない時に来るのですから。
2445 主人から、その家のしもべたちを任されて、食事時には彼らに食事をきちんと与えるような忠実な賢いしもべとは、いったいだれでしょう。
2446 主人が帰って来たときに、そのようにしているのを見られるしもべは幸いです。
2447 まことに、あなたがたに告げます。その主人は彼に自分の全財産を任せるようになります。
2448 ところが、それが悪いしもべで、『主人はまだまだ帰るまい』と心の中で思い、
2449 その仲間を打ちたたき、酒飲みたちと飲んだり食べたりし始めていると、
2450 そのしもべの主人は、思いがけない日の思わぬ時間に帰って来ます。
2451 そして、彼をきびしく罰して、その報いを偽善者たちと同じにするに違いありません。しもべはそこで泣いて歯ぎしりするのです。