0101 これは、モーセがヨルダンの向こうの地、パランと、トフェル、ラバン、ハツェロテ、ディ・ザハブとの間の、スフの前にあるアラバの荒野で、イスラエルのすべての民に告げたことばである。
0102 ホレブから、セイル山を経てカデシュ・バルネアに至るのには十一日かかる。
0103 四十年の 十一月の一日にモーセは、【主】がイスラエル人のために彼に命じられたことを、ことごとく彼らに告げた。
0104 モーセが、ヘシュボンに住んでいたエモリ人の王シホン、およびアシュタロテに住んでいたバシャンの王オグをエデレイで打ち破って後のことである。
0105 ヨルダンの向こうの地、モアブの地で、モーセは、このみおしえを説明し始めて言った。
0106 私たちの神、【主】は、ホレブで私たちに告げて仰せられた。「あなたがたはこの山に長くとどまっていた。
0107 向きを変えて、出発せよ。そしてエモリ人の山地に行き、その近隣のすべての地、アラバ、山地、低地、ネゲブ、海辺、カナン人の地、レバノン、さらにあの大河ユーフラテス川にまで行け。
0108 見よ。わたしはその地をあなたがたの手に渡している。行け。その地を所有せよ。これは、【主】があなたがたの先祖アブラハム、イサク、ヤコブに誓って、彼らとその後の子孫に与えると言われた地である。」
0109 私はあの時、あなたがたにこう言った。「私だけではあなたがたの重荷を負うことはできない。
0110 あなたがたの神、【主】が、あなたがたをふやされたので、見よ、あなたがたは、きょう、空の星のように多い。
0111 ──どうかあなたがたの父祖の神、【主】が、あなたがたを今の千倍にふやしてくださるように。そしてあなたがたに約束されたとおり、あなたがたを祝福してくださるように──
0112 私ひとりで、どうして、あなたがたのもめごとと重荷と争いを背負いきれよう。
0113 あなたがたは、部族ごとに、知恵があり、悟りがあり、経験のある人々を出しなさい。彼らを、あなたがたのかしらとして立てよう。」
0114 すると、あなたがたは私に答えて、「あなたが、しようと言われることは良い」と言った。
0115 そこで私は、あなたがたの部族のかしらで、知恵があり、経験のある者たちを取り、彼らをあなたがたの上に置き、かしらとした。千人の長、百人の長、五十人の長、十人の長、また、あなたがたの部族のつかさである。
0116 またそのとき、私はあなたがたのさばきつかさたちに命じて言った。「あなたがたの身内の者たちの間の事をよく聞きなさい。ある人と身内の者たちとの間、また在留異国人との間を正しくさばきなさい。
0117 さばきをするとき、人をかたよって見てはならない。身分の低い人にも高い人にもみな、同じように聞かなければならない。人を恐れてはならない。さばきは神のものである。あなたがたにとってむずかしすぎる事は、私のところに持って来なさい。私がそれを聞こう。」
0118 私はまた、そのとき、あなたがたのなすべきすべてのことを命じた。
0119 私たちの神、【主】が、私たちに命じられたとおりに、私たちはホレブを旅立ち、あなたがたが見た、あの大きな恐ろしい荒野を、エモリ人の山地への道をとって進み、カデシュ・バルネアまで来た。
0120 そのとき、私はあなたがたに言った。「あなたがたは、私たちの神、【主】が私たちに与えようとされるエモリ人の山地に来た。
0121 見よ。あなたの神、【主】は、この地をあなたの手に渡されている。上れ。占領せよ。あなたの父祖の神、【主】があなたに告げられたとおりに。恐れてはならない。おののいてはならない。」
0122 すると、あなたがた全部が、私に近寄って来て、「私たちより先に人を遣わし、私たちのために、その地を探らせよう。私たちの上って行く道や、入って行く町々について、報告を持ち帰らせよう」と言った。
0123 私にとってこのことは良いと思われたので、私は各部族からひとりずつ、十二人をあなたがたの中から取った。
0124 彼らは山地に向かって登って行き、エシュコルの谷まで行き、そこを探り、
0125 また、その地のくだものを手に入れ、私たちのもとに持って下って来た。そして報告をもたらし、「私たちの神、【主】が、私たちに与えようとしておられる地は良い地です」と言った。
0126 しかし、あなたがたは登って行こうとせず、あなたがたの神、【主】の命令に逆らった。
0127 そしてあなたがたの天幕の中でつぶやいて言った。「【主】は私たちを憎んでおられるので、私たちをエジプトの地から連れ出してエモリ人の手に渡し、私たちを根絶やしにしようとしておられる。
0128 私たちはどこへ上って行くのか。私たちの身内の者たちは、『その民は私たちよりも大きくて背が高い。町々は大きく城壁は高く天にそびえている。しかも、そこでアナク人を見た』と言って、私たちの心をくじいた。」
0129 それで、私はあなたがたに言った。「おののいてはならない。彼らを恐れてはならない。
0130 あなたがたに先立って行かれるあなたがたの神、【主】が、エジプトにおいて、あなたがたの目の前で、あなたがたのためにしてくださったそのとおりに、あなたがたのために戦われるのだ。
0131 また、荒野では、あなたがたがこの所に来るまでの、全道中、人がその子を抱くように、あなたの神、【主】が、あなたを抱かれたのを見ているのだ。
0132 このようなことによってもまだ、あなたがたはあなたがたの神、【主】を信じていない。
0133 主は、あなたがたが宿営する場所を捜すために、道中あなたがたの先に立って行かれ、夜は火のうち、昼は雲のうちにあって、あなたがたの進んで行く道を示されるのだ。」
0134 【主】は、あなたがたの不平を言う声を聞いて怒り、誓って言われた。
0135 「この悪い世代のこれらの者のうちには、わたしが、あなたがたの先祖たちに与えると誓ったあの良い地を見る者は、ひとりもいない。
0136 ただエフネの子カレブだけがそれを見ることができる。彼が踏んだ地を、わたしは彼とその子孫に与えよう。彼は【主】に従い通したからだ。」
0137 【主】はあなたがたのために、この私に対しても怒って言われた。「あなたも、そこに、入れない。
0138 あなたに仕えているヌンの子ヨシュアが、そこに、入るのだ。彼を力づけよ。彼がそこをイスラエルに受け継がせるからだ。
0139 あなたがたが、略奪されるだろうと言ったあなたがたの幼子たち、今はまだ善悪のわきまえのないあなたがたの子どもたちが、そこに、入る。わたしは彼らにそこを与えよう。彼らはそれを所有するようになる。
0140 あなたがたは向きを変え、葦の海への道を荒野に向かって旅立て。」
0141 すると、あなたがたは私に答えて言った。「私たちは【主】に向かって罪を犯した。私たちの神、【主】が命じられたとおりに、私たちは上って行って、戦おう。」そして、おのおの武具を身に帯びて、向こう見ずに山地に登って行こうとした。
0142 それで【主】は私に言われた。「彼らに言え。『上ってはならない。戦ってはならない。わたしがあなたがたのうちにはいないからだ。あなたがたは敵に打ち負かされてはならない。』」
0143 私が、あなたがたにこう告げたのに、あなたがたは聞き従わず、【主】の命令に逆らい、不遜にも山地に登って行った。
0144 すると、その山地に住んでいたエモリ人が出て来て、あなたがたを迎え撃ち、蜂が追うようにあなたがたを追いかけ、あなたがたをセイルのホルマにまで追い散らした。
0145 あなたがたは帰って来て、【主】の前で泣いたが、【主】はあなたがたの声を聞き入れず、あなたがたに耳を傾けられなかった。
0146 こうしてあなたがたは、あなたがたがとどまった期間だけの長い間カデシュにとどまった。
0201 それから、私たちは向きを変え、【主】が私に告げられたように、葦の海への道を荒野に向かって旅立って、その後、長らくセイル山のまわりを回っていた。
0202 【主】は私にこう仰せられた。
0203 「あなたがたは長らくこの山のまわりを回っていたが、北のほうに向かって行け。
0204 民に命じてこう言え。あなたがたは、セイルに住んでいるエサウの子孫、あなたがたの同族の領土内を通ろうとしている。彼らはあなたがたを恐れるであろう。あなたがたは、十分に注意せよ。
0205 彼らに争いをしかけてはならない。わたしは彼らの地を、足の裏で踏むほども、あなたがたには与えない。わたしはエサウにセイル山を彼の所有地として与えたからである。
0206 食物は、彼らから金で買って食べ、水もまた、彼らから金で買って飲まなければならない。
0207 事実、あなたの神、【主】は、あなたのしたすべてのことを祝福し、あなたの、この広大な荒野の旅を見守ってくださったのだ。あなたの神、【主】は、この四十年の間あなたとともにおられ、あなたは、何一つ欠けたものはなかった。」
0208 それで私たちは、セイルに住むエサウの子孫である私たちの同族から離れ、アラバへの道から離れ、エラテからも、またエツヨン・ゲベルからも離れて進んで行った。そして、私たちはモアブの荒野への道を進んで行った。
0209 【主】は私に仰せられた。「モアブに敵対してはならない。彼らに戦いをしかけてはならない。あなたには、その土地を所有地としては与えない。わたしはロトの子孫にアルを所有地として与えたからである。
0210 ──そこには以前、エミム人が住んでいた。強大な民で、数も多く、アナク人のように背が高かった。
0211 アナク人と同じく、彼らもレファイムであるとみなされていたが、モアブ人は彼らをエミム人と呼んでいた。
0212 ホリ人は、以前セイルに住んでいたが、エサウの子孫がこれを追い払い、これを根絶やしにして、彼らに代わって住んでいた。ちょうど、イスラエルが【主】の下さった所有の地に対してしたようにである──
0213 今、立ってゼレデ川を渡れ。」そこで私たちはゼレデ川を渡った。
0214 カデシュ・バルネアを出てからゼレデ川を渡るまでの期間は三十八年であった。それまでに、その世代の戦士たちはみな、宿営のうちから絶えてしまった。【主】が彼らについて誓われたとおりであった。
0215 まことに【主】の御手が彼らに下り、彼らをかき乱し、宿営のうちから絶やされた。
0216 戦士たちがみな、民のうちから絶えたとき、
0217 【主】は私に告げて仰せられた。
0218 「あなたは、きょう、モアブの領土、アルを通ろうとしている。
0219 それで、アモン人に近づくが、彼らに敵対してはならない。彼らに争いをしかけてはならない。あなたには、アモン人の地を所有地としては与えない。ロトの子孫に、それを所有地として与えているからである。
0220 ──そこもまたレファイムの国とみなされている。以前は、レファイムがそこに住んでいた。アモン人は、彼らをザムズミム人と呼んでいた。
0221 これは強大な民であって数も多く、アナク人のように背も高かった。【主】がこれを根絶やしにされたので、アモン人がこれを追い払い、彼らに代わって住んでいた。
0222 それは、セイルに住んでいるエサウの子孫のために、主が彼らの前からホリ人を根絶やしにされたのと同じである。それで彼らはホリ人を追い払い、彼らに代わって住みつき、今日に至っている。
0223 また、ガザ近郊の村々に住んでいたアビム人を、カフトルから出て来たカフトル人が根絶やしにして、これに代わって住みついた──
0224 立ち上がれ。出発せよ。アルノン川を渡れ。見よ。わたしはヘシュボンの王エモリ人シホンとその国とを、あなたの手に渡す。占領し始めよ。彼と戦いを交えよ。
0225 きょうから、わたしは全天下の国々の民に、あなたのことでおびえと恐れを臨ませる。彼らは、あなたのうわさを聞いて震え、あなたのことでわななこう。」
0226 そこで私は、ケデモテの荒野から、ヘシュボンの王シホンに使者を送り、和平を申し込んで言った。
0227 「あなたの国を通らせてください。私は大路だけを通って、右にも左にも曲がりません。
0228 食物は金で私に売ってください。それを食べます。水も、金を取って私に与えてください。それを飲みます。徒歩で通らせてくださるだけでよいのです。
0229 セイルに住んでいるエサウの子孫や、アルに住んでいるモアブ人が、私にしたようにしてください。そうすれば、私はヨルダンを渡って、私たちの神、【主】が私たちに与えようとしておられる地に行けるのです。」
0230 しかし、ヘシュボンの王シホンは、私たちをどうしても通らせようとはしなかった。それは今日見るとおり、彼をあなたの手に渡すために、あなたの神、【主】が、彼を強気にし、その心をかたくなにされたからである。
0231 【主】は私に言われた。「見よ。わたしはシホンとその地とをあなたの手に渡し始めた。占領し始めよ。その地を所有せよ。」
0232 シホンとそのすべての民が、私たちを迎えて戦うため、ヤハツに出て来たとき、
0233 私たちの神、【主】は、彼を私たちの手に渡された。私たちは彼とその子らと、そのすべての民とを打ち殺した。
0234 そのとき、私たちは、彼のすべての町々を攻め取り、すべての町々──男、女および子ども──を聖絶して、ひとりの生存者も残さなかった。
0235 ただし、私たちが分捕った家畜と私たちが攻め取った町々で略奪した物とは別である。
0236 アルノン川の縁にあるアロエルおよび谷の中の町から、ギルアデに至るまで、私たちよりも強い町は一つもなかった。私たちの神、【主】が、それらをみな、私たちの手に渡されたのである。
0237 ただアモン人の地、ヤボク川の全岸と山地の町々には、私たちの神、【主】が命じられたとおりに、近寄らなかった。
0301 私たちはバシャンへの道を上って行った。するとバシャンの王オグとそのすべての民は、エデレイで私たちを迎えて戦うために出て来た。
0302 そのとき、【主】は私に仰せられた。「彼を恐れてはならない。わたしは、彼と、そのすべての民と、その地とを、あなたの手に渡している。あなたはヘシュボンに住んでいたエモリ人の王シホンにしたように、彼にしなければならない。」
0303 こうして私たちの神、【主】は、バシャンの王オグとそのすべての民をも、私たちの手に渡されたので、私たちはこれを打ち殺して、ひとりの生存者をも残さなかった。
0304 そのとき、私たちは彼の町々をことごとく攻め取った。私たちが取らなかった町は一つもなかった。取った町は六十、アルゴブの全地域であって、バシャンのオグの王国であった。
0305 これらはみな、高い城壁と門とかんぬきのある要害の町々であった。このほかに、城壁のない町々が非常に多くあった。
0306 私たちはヘシュボンの王シホンにしたように、これらを聖絶した。そのすべての町々──男、女および子ども──を聖絶した。
0307 ただし、すべての家畜と、私たちが取った町々で略奪した物とは私たちのものとした。
0308 このようにして、そのとき、私たちは、ふたりのエモリ人の王の手から、ヨルダンの向こうの地を、アルノン川からヘルモン山まで取った。
0309 ──シドン人はヘルモンをシルヨンと呼び、エモリ人はこれをセニルと呼んでいる──
0310 すなわち、高原のすべての町、ギルアデの全土、バシャンの全土、サルカおよびエデレイまでのバシャンのオグの王国の町々である。
0311 ──バシャンの王オグだけが、レファイムの生存者として残っていた。見よ。彼の寝台は鉄の寝台、それはアモン人のラバにあるではないか。その長さは、規準のキュビトで九キュビト、その幅は四キュビトである──
0312 この地を、私たちは、そのとき、占領した。アルノン川のほとりのアロエルの一部と、ギルアデの山地の半分と、その町々とを私はルベン人とガド人とに与えた。
0313 ギルアデの残りと、オグの王国であったバシャンの全土とは、マナセの半部族に与えた。それはアルゴブの全地域で、そのバシャンの全土はレファイムの国と呼ばれている。
0314 マナセの子ヤイルは、ゲシュル人とマアカ人との境界までのアルゴブの全地域を取り、自分の名にちなんで、バシャンをハボテ・ヤイルと名づけて、今日に至っている。
0315 マキルには私はギルアデを与えた。
0316 ルベン人とガド人には、ギルアデからアルノン川の、国境にあたる川の真ん中まで、またアモン人の国境ヤボク川までを与えた。
0317 またアラバをも与えた。それはヨルダンを境界として、キネレテからアラバの海、すなわち、東のほうのピスガの傾斜地のふもとにある塩の海までであった。
0318 私はそのとき、あなたがたに命じて言った。「あなたがたの神、【主】は、あなたがたがこの地を所有するように、あなたがたに与えられた。しかし、勇士たちはみな武装して、同族、イスラエル人の先に立って渡って行かなければならない。
0319 ただし、あなたがたの妻と子どもと家畜は、私が与えた町々にとどまっていてもよい。私はあなたがたが家畜を多く持っているのを知っている。
0320 【主】があなたがたと同じように、あなたがたの同族に安住の地を与え、彼らもまた、ヨルダンの向こうで、あなたがたの神、【主】が与えようとしておられる地を所有するようになったなら、そのとき、あなたがたは、おのおの私が与えた自分の所有地に帰ることができる。」
0321 私は、そのとき、ヨシュアに命じて言った。「あなたは、あなたがたの神、【主】が、これらふたりの王になさったすべてのことをその目で見た。【主】はあなたがたがこれから渡って行くすべての国々にも、同じようにされる。
0322 彼らを恐れてはならない。あなたがたのために戦われるのはあなたがたの神、【主】であるからだ。」
0323 私は、そのとき、【主】に懇願して言った。
0324 「神、主よ。あなたの偉大さと、あなたの力強い御手とを、あなたはこのしもべに示し始められました。あなたのわざ、あなたの力あるわざのようなことのできる神が、天、あるいは地にあるでしょうか。
0325 どうか、私に、渡って行って、ヨルダンの向こうにある良い地、あの良い山地、およびレバノンを見させてください。」
0326 しかし【主】は、あなたがたのために私を怒り、私の願いを聞き入れてくださらなかった。そして【主】は私に言われた。「もう十分だ。このことについては、もう二度とわたしに言ってはならない。
0327 ピスガの頂に登って、目を上げて西、北、南、東を見よ。あなたのその目でよく見よ。あなたはこのヨルダンを渡ることができないからだ。
0328 ヨシュアに命じ、彼を力づけ、彼を励ませ。彼はこの民の先に立って渡って行き、あなたの見るあの地を彼らに受け継がせるであろう。」
0329 こうして私たちはベテ・ペオルの近くの谷にとどまっていた。