民数記
1001 ついで【主】はモーセに告げて仰せられた。
1002 「銀のラッパを二本作らせよ。それを打ち物作りとし、あなたはそれで会衆を召集し、また宿営を出発させなければならない。
1003 この二つが長く吹き鳴らされると、全会衆が会見の天幕の入口の、あなたのところに集まる。
1004 もしその一つが吹き鳴らされると、イスラエルの分団のかしらである族長たちがあなたのところに集まる。
1005 また、あなたがたがそれを短く吹き鳴らすと、東側に宿っている宿営が出発する。
1006 あなたがたが二度目に短く吹き鳴らすと、南側に宿っている宿営が出発する。彼らが出発するには、短く吹き鳴らさなければならない。
1007 集会を召集するときには、長く吹き鳴らさなければならない。短く吹き鳴らしてはならない。
1008 祭司であるアロンの子らがラッパを吹かなければならない。これはあなたがたにとって、代々にわたる永遠の定めである。
1009 また、あなたがたの国で、あなたがたを襲う侵略者との戦いに出る場合は、ラッパを短く吹き鳴らす。あなたがたが、あなたがたの神、【主】の前に覚えられ、あなたがたの敵から救われるためである。
1010 また、あなたがたの喜びの日、あなたがたの例祭と新月の日に、あなたがたの全焼のいけにえと、和解のいけにえの上に、ラッパを鳴り渡らせるなら、あなたがたは、あなたがたの神の前に覚えられる。わたしはあなたがたの神、【主】である。」
1011 二年目の 二月の二十日に、雲があかしの幕屋の上から離れて上った。
1012 それでイスラエル人はシナイの荒野を出て旅立ったが、雲はパランの荒野でとどまった。
1013 彼らは、モーセを通して示された【主】の命令によって初めて旅立ち、
1014 まず初めにユダ族の宿営の旗が、その軍団ごとに出発した。軍団長はアミナダブの子ナフション。
1015 イッサカル部族の軍団長はツアルの子ネタヌエル。
1016 ゼブルン部族の軍団長はヘロンの子エリアブ。
1017 幕屋が取りはずされ、幕屋を運ぶゲルション族、メラリ族が出発。
1018 ルベンの宿営の旗が、その軍団ごとに出発。軍団長はシェデウルの子エリツル。
1019 シメオン部族の軍団長はツリシャダイの子シェルミエル。
1020 ガド部族の軍団長はデウエルの子エルヤサフ。
1021 聖なる物を運ぶケハテ人が出発。彼らが着くまでに、幕屋は建て終えられる。
1022 また、エフライム族の宿営の旗が、その軍団ごとに出発。軍団長はアミフデの子エリシャマ。
1023 マナセ部族の軍団長はペダツルの子ガムリエル。
1024 ベニヤミン部族の軍団長はギデオニの子アビダンであった。
1025 ダン部族の宿営の旗が、全宿営の後衛としてその軍団ごとに出発。軍団長はアミシャダイの子アヒエゼル。
1026 アシェル部族の軍団長はオクランの子パグイエル。
1027 ナフタリ部族の軍団長はエナンの子アヒラ。
1028 以上がイスラエル人の軍団ごとの出発順序であって、彼らはそのように出発した。
1029 さて、モーセは、彼のしゅうとミデヤン人レウエルの子ホバブに言った。「私たちは、【主】があなたがたに与えると言われた場所へ出発するところです。私たちといっしょに行きましょう。私たちはあなたをしあわせにします。【主】がイスラエルにしあわせを約束しておられるからです。」
1030 彼はモーセに答えた。「私は行きません。私の生まれ故郷に帰ります。」
1031 そこでモーセは言った。「どうか私たちを見捨てないでください。あなたは、私たちが荒野のどこで宿営したらよいかご存じであり、私たちにとって目なのですから。
1032 私たちといっしょに行ってくだされば、【主】が私たちに下さるしあわせを、あなたにもおわかちしたいのです。」
1033 こうして、彼らは【主】の山を出て、三日の道のりを進んだ。【主】の契約の箱は三日の道のりの間、彼らの先頭に立って進み、彼らの休息の場所を捜した。
1034 彼らが宿営を出て進むとき、昼間は【主】の雲が彼らの上にあった。
1035 契約の箱が出発するときには、モーセはこう言っていた。「【主】よ。立ち上がってください。あなたの敵は散らされ、あなたを憎む者は、御前から逃げ去りますように。」
1036 またそれがとどまるときに、彼は言っていた。「【主】よ。お帰りください。イスラエルの幾千万の民のもとに。」
1101 さて、民はひどく不平を鳴らして【主】につぶやいた。【主】はこれを聞いて怒りを燃やし、【主】の火が彼らに向かって燃え上がり、宿営の端をなめ尽くした。
1102 すると民はモーセに向かってわめいた。それで、モーセが【主】に祈ると、その火は消えた。
1103 【主】の火が、彼らに向かって燃え上がったので、その場所の名をタブエラと呼んだ。
1104 また彼らのうちに混じってきていた者が、激しい欲望にかられ、そのうえ、イスラエル人もまた大声で泣いて、言った。「ああ、肉が食べたい。
1105 エジプトで、ただで魚を食べていたことを思い出す。きゅうりも、すいか、にら、たまねぎ、にんにくも。
1106 だが今や、私たちののどは干からびてしまった。何もなくて、このマナを見るだけだ。」
1107 マナは、コエンドロの種のようで、その色はベドラハのようであった。
1108 人々は歩き回って、それを集め、ひき臼でひくか、臼でついて、これをなべで煮て、パン菓子を作っていた。その味は、おいしいクリームの味のようであった。
1109 夜、宿営に露が降りるとき、マナもそれといっしょに降りた。
1110 モーセは、民がその家族ごとに、それぞれ自分の天幕の入口で泣くのを聞いた。【主】の怒りは激しく燃え上がり、モーセも腹立たしく思った。
1111 モーセは【主】に申し上げた。「なぜ、あなたはしもべを苦しめられるのでしょう。なぜ、私はあなたのご厚意をいただけないのでしょう。なぜ、このすべての民の重荷を私に負わされるのでしょう。
1112 私がこのすべての民をはらんだのでしょうか。それとも、私が彼らを生んだのでしょうか。それなのになぜ、あなたは私に、『うばが乳飲み子を抱きかかえるように、彼らをあなたの胸に抱き、わたしが彼らの先祖たちに誓った地に連れて行け』と言われるのでしょう。
1113 どこから私は肉を得て、この民全体に与えなければならないのでしょうか。彼らは私に泣き叫び、『私たちに肉を与えて食べさせてくれ』と言うのです。
1114 私だけでは、この民全体を負うことはできません。私には重すぎます。
1115 私にこんなしうちをなさるのなら、お願いです、どうか私を殺してください。これ以上、私を苦しみに会わせないでください。」
1116 【主】はモーセに仰せられた。「イスラエルの長老たちのうちから、あなたがよく知っている民の長老で、そのつかさである者七十人をわたしのために集め、彼らを会見の天幕に連れて来て、そこであなたのそばに立たせよ。
1117 わたしは降りて行って、その所であなたと語り、あなたの上にある霊のいくらかを取って彼らの上に置こう。それで彼らも民の重荷をあなたとともに負い、あなたはただひとりで負うことがないようになろう。
1118 あなたは民に言わなければならない。あすのために身をきよめなさい。あなたがたは肉が食べられるのだ。あなたがたが泣いて、『ああ肉が食べたい。エジプトでは良かった』と、【主】につぶやいて言ったからだ。【主】が肉を下さる。あなたがたは肉が食べられるのだ。
1119 あなたがたが食べるのは、一日や二日や五日や十日や二十日だけではなく、
1120 一か月もであって、ついにはあなたがたの鼻から出て来て、吐きけを催すほどになる。それは、あなたがたのうちにおられる【主】をないがしろにして、御前に泣き、『なぜ、こうして私たちはエジプトから出て来たのだろう』と言ったからだ。」
1121 しかしモーセは申し上げた。「私といっしょにいる民は徒歩の男子だけで六十万です。しかもあなたは、彼らに肉を与え、一月の間食べさせる、と言われます。
1122 彼らのために羊の群れ、牛の群れをほふっても、彼らに十分でしょうか。彼らのために海の魚を全部集めても、彼らに十分でしょうか。」
1123 【主】はモーセに答えられた。「【主】の手は短いのだろうか。わたしのことばが実現するかどうかは、今わかる。」
1124 ここでモーセは出て行って、【主】のことばを民に告げた。そして彼は民の長老たちのうちから七十人を集め、彼らを天幕の回りに立たせた。
1125 すると【主】は雲の中にあって降りて来られ、モーセと語り、彼の上にある霊を取って、その七十人の長老にも与えた。その霊が彼らの上にとどまったとき、彼らは預言した。しかし、それを重ねることはなかった。
1126 そのとき、ふたりの者が宿営に残っていた。ひとりの名はエルダデ、もうひとりの名はメダデであった。彼らの上にも霊がとどまった。──彼らは長老として登録された者たちであったが、天幕へは出て行かなかった──彼らは宿営の中で預言した。
1127 それで、ひとりの若者が走って来て、モーセに知らせて言った。「エルダデとメダデが宿営の中で預言しています。」
1128 若いときからモーセの従者であったヌンの子ヨシュアも答えて言った。「わが主、モーセよ。彼らをやめさせてください。」
1129 しかしモーセは彼に言った。「あなたは私のためを思ってねたみを起こしているのか。【主】の民がみな、預言者となればよいのに。【主】が彼らの上にご自分の霊を与えられるとよいのに。」
1130 それからモーセとイスラエルの長老たちは、宿営に戻った。
1131 さて、【主】のほうから風が吹き、海の向こうからうずらを運んで来て、宿営の上に落とした。それは宿営の回りに、こちら側に約一日の道のり、あちら側にも約一日の道のり、地上に約二キュビトの高さになった。
1132 民はその日は、終日終夜、その翌日も一日中出て行って、うずらを集め、──最も少なく集めた者でも、十ホメルほど集めた──彼らはそれらを、宿営の回りに広く広げた。
1133 肉が彼らの歯の間にあってまだかみ終わらないうちに、【主】の怒りが民に向かって燃え上がり、【主】は非常に激しい疫病で民を打った。
1134 こうして、欲望にかられた民を、彼らがそこに埋めたので、その場所の名をキブロテ・ハタアワと呼んだ。
1135 キブロテ・ハタアワから、民はハツェロテに進み、ハツェロテにとどまった。
1201 そのとき、ミリヤムはアロンといっしょに、モーセがめとっていたクシュ人の女のことで彼を非難した。モーセがクシュ人の女をめとっていたからである。
1202 彼らは言った。「【主】はただモーセとだけ話されたのでしょうか。私たちとも話されたのではないでしょうか。」【主】はこれを聞かれた。
1203 さて、モーセという人は、地上のだれにもまさって非常に謙遜であった。
1204 そこで、【主】は突然、モーセとアロンとミリヤムに、「あなたがた三人は会見の天幕の所へ出よ」と言われたので、彼ら三人は出て行った。
1205 【主】は雲の柱の中にあって降りて来られ、天幕の入口に立って、アロンとミリヤムを呼ばれた。ふたりが出て行くと、
1206 仰せられた。「わたしのことばを聞け。もし、あなたがたのひとりが預言者であるなら、【主】であるわたしは、幻の中でその者にわたしを知らせ、夢の中でその者に語る。
1207 しかしわたしのしもべモーセとはそうではない。彼はわたしの全家を通じて忠実な者である。
1208 彼とは、わたしは口と口とで語り、明らかに語って、なぞで話すことはしない。彼はまた、【主】の姿を仰ぎ見ている。なぜ、あなたがたは、わたしのしもべモーセを恐れずに非難するのか。」
1209 【主】の怒りが彼らに向かって燃え上がり、主は去って行かれた。
1210 雲が天幕の上から離れ去ると、見よ、ミリヤムはツァラアトになり、雪のようになっていた。アロンがミリヤムのほうを振り向くと、見よ、彼女はツァラアトに冒されていた。
1211 アロンはモーセに言った。「わが主よ。私たちが愚かで犯しました罪の罰をどうか、私たちに負わせないでください。
1212 どうか、彼女を、その肉が半ば腐って母の胎から出て来る死人のようにしないでください。」
1213 それで、モーセは【主】に叫んで言った。「神よ。どうか、彼女をいやしてください。」
1214 しかし【主】はモーセに言われた。「彼女の父が、彼女の顔につばきしてさえ、彼女は七日間、恥をかかせられたことになるではないか。彼女を七日間、宿営の外に締め出しておかなければならない。その後に彼女を連れ戻すことができる。」
1215 それでミリヤムは七日間、宿営の外に締め出された。民はミリヤムが連れ戻されるまで、旅立たなかった。
1216 その後、民はハツェロテから旅立ち、パランの荒野に宿営した。