出エジプト記


3101 【主】はモーセに告げて仰せられた。
3102 「見よ。わたしは、ユダ部族のフルの子であるウリの子ベツァルエルを名ざして召し、
3103 彼に知恵と英知と知識とあらゆる仕事において、神の霊を満たした。
3104 それは、彼が、金や銀や青銅の細工を巧みに設計し、
3105 はめ込みの宝石を彫り、木を彫刻し、あらゆる仕事をするためである。
3106 見よ。わたしは、ダン部族のアヒサマクの子オホリアブを、彼のもとに任命した。わたしはすべて心に知恵のある者に知恵を授けた。彼らはわたしがあなたに命じたものを、ことごとく作る。
3107 すなわち、会見の天幕、あかしの箱、その上の『贖いのふた』、天幕のあらゆる設備品、
3108 机とその付属品、純金の燭台と、そのいろいろな器具、香の壇、
3109 全焼のいけにえの祭壇と、そのあらゆる道具、洗盤とその台、
3110 式服、すなわち、祭司として仕える祭司アロンの聖なる装束と、その子らの装束、
3111 そそぎの油、聖所のためのかおりの高い香である。彼らは、すべて、わたしがあなたに命じたとおりに作らなければならない。」
3112 【主】はモーセに告げて仰せられた。
3113 「あなたはイスラエル人に告げて言え。あなたがたは、必ずわたしの安息を守らなければならない。これは、代々にわたり、わたしとあなたがたとの間のしるし、わたしがあなたがたを聖別する【主】であることを、あなたがたが知るためのものなのである。
3114 これは、あなたがたにとって聖なるものであるから、あなたがたはこの安息を守らなければならない。これを汚す者は必ず殺されなければならない。この安息中に仕事をする者は、だれでも、その民から断ち切られる。
3115 六日間は仕事をしてもよい。しかし、七日目は、【主】の聖なる全き休みの安息日である。安息の日に仕事をする者は、だれでも必ず殺されなければならない。
3116 イスラエル人はこの安息を守り、永遠の契約として、代々にわたり、この安息を守らなければならない。
3117 これは、永遠に、わたしとイスラエル人との間のしるしである。それは【主】が六日間に天と地とを造り、七日目に休み、いこわれたからである。」
3118 こうして主は、シナイ山でモーセと語り終えられたとき、あかしの板二枚、すなわち、神の指で書かれた石の板をモーセに授けられた。
3201 民はモーセが山から降りて来るのに手間取っているのを見て、アロンのもとに集まり、彼に言った。「さあ、私たちに先立って行く神を、造ってください。私たちをエジプトの地から連れ上ったあのモーセという者が、どうなったのか、私たちにはわからないから。」
3202 それで、アロンは彼らに言った。「あなたがたの妻や、息子、娘たちの耳にある金の耳輪をはずして、私のところに持って来なさい。」
3203 そこで、民はみな、その耳にある金の耳輪をはずして、アロンのところに持って来た。
3204 彼がそれを、彼らの手から受け取り、のみで型を造り、鋳物の子牛にした。彼らは、「イスラエルよ。これがあなたをエジプトの地から連れ上ったあなたの神だ」と言った。
3205 アロンはこれを見て、その前に祭壇を築いた。そして、アロンは呼ばわって言った。「あすは【主】への祭りである。」
3206 そこで、翌日、朝早く彼らは全焼のいけにえをささげ、和解のいけにえを供えた。そして、民はすわっては、飲み食いし、立っては、戯れた。
3207 【主】はモーセに仰せられた。「さあ、すぐ降りて行け。あなたがエジプトの地から連れ上ったあなたの民は、堕落してしまったから。
3208 彼らは早くも、わたしが彼らに命じた道からはずれ、自分たちのために鋳物の子牛を造り、それを伏し拝み、それにいけにえをささげ、『イスラエルよ。これがあなたをエジプトの地から連れ上ったあなたの神だ』と言っている。」
3209 【主】はまた、モーセに仰せられた。「わたしはこの民を見た。これは、実にうなじのこわい民だ。
3210 今はただ、わたしのするままにせよ。わたしの怒りが彼らに向かって燃え上がって、わたしが彼らを絶ち滅ぼすためだ。しかし、わたしはあなたを大いなる国民としよう。」
3211 しかしモーセは、彼の神、【主】に嘆願して言った。「【主】よ。あなたが偉大な力と力強い御手をもって、エジプトの地から連れ出されたご自分の民に向かって、どうして、あなたは御怒りを燃やされるのですか。
3212 また、どうしてエジプト人が『神は彼らを山地で殺し、地の面から絶ち滅ぼすために、悪意をもって彼らを連れ出したのだ』と言うようにされるのですか。どうか、あなたの燃える怒りをおさめ、あなたの民へのわざわいを思い直してください。
3213 あなたのしもべアブラハム、イサク、イスラエルを覚えてください。あなたはご自身にかけて彼らに誓い、そうして、彼らに、『わたしはあなたがたの子孫を空の星のようにふやし、わたしが約束したこの地をすべて、あなたがたの子孫に与え、彼らは永久にこれを相続地とするようになる』と仰せられたのです。」
3214 すると、【主】はその民に下すと仰せられたわざわいを思い直された。
3215 モーセは向き直り、二枚のあかしの板を手にして山から降りた。板は両面から書いてあった。すなわち、表と裏に書いてあった。
3216 板はそれ自体神の作であった。その字は神の字であって、その板に刻まれていた。
3217 ヨシュアは民の叫ぶ大声を聞いて、モーセに言った。「宿営の中にいくさの声がします。」
3218 するとモーセは言った。「それは勝利を叫ぶ声ではなく、敗北を嘆く声でもない。私の聞くのは、歌を歌う声である。」
3219 宿営に近づいて、子牛と踊りを見るなり、モーセの怒りは燃え上がった。そして手からあの板を投げ捨て、それを山のふもとで砕いてしまった。
3220 それから、彼らが造った子牛を取り、これを火で焼き、さらにそれを粉々に砕き、それを水の上にまき散らし、イスラエル人に飲ませた。
3221 モーセはアロンに言った。「この民はあなたに何をしたのですか。あなたが彼らにこんな大きな罪を犯させたのは。」
3222 アロンは言った。「わが主よ。どうか怒りを燃やさないでください。あなた自身、民の悪いのを知っているでしょう。
3223 彼らは私に言いました。『私たちに先立って行く神を、造ってくれ。私たちをエジプトの地から連れ上ったあのモーセという者が、どうなったのか、私たちにはわからないから。』
3224 それで、私は彼らに、『だれでも、金を持っている者は私のために、それを取りはずせ』と言いました。彼らはそれを私に渡したので、私がこれを火に投げ入れたところ、この子牛が出て来たのです。」
3225 モーセは、民が乱れており、アロンが彼らをほうっておいたので、敵の物笑いとなっているのを見た。
3226 そこでモーセは宿営の入口に立って「だれでも、【主】につく者は、私のところに」と言った。するとレビ族がみな、彼のところに集まった。
3227 そこで、モーセは彼らに言った。「イスラエルの神、【主】はこう仰せられる。おのおの腰に剣を帯び、宿営の中を入口から入口へ行き巡って、おのおのその兄弟、その友、その隣人を殺せ。」
3228 レビ族は、モーセのことばどおりに行った。その日、民のうち、おおよそ三千人が倒れた。
3229 そこで、モーセは言った。「あなたがたは、おのおのその子、その兄弟に逆らっても、きょう、【主】に身をささげよ。主が、きょう、あなたがたに祝福をお与えになるために。」
3230 翌日になって、モーセは民に言った。「あなたがたは大きな罪を犯した。それで今、私は【主】のところに上って行く。たぶんあなたがたの罪のために贖うことができるでしょう。」
3231 そこでモーセは【主】のところに戻って、申し上げた。「ああ、この民は大きな罪を犯してしまいました。自分たちのために金の神を造ったのです。
3232 今、もし、彼らの罪をお赦しくだされるものなら──。しかし、もしも、かないませんなら、どうか、あなたがお書きになったあなたの書物から、私の名を消し去ってください。」
3233 すると【主】はモーセに仰せられた。「わたしに罪を犯した者はだれであれ、わたしの書物から消し去ろう。
3234 しかし、今は行って、わたしがあなたに告げた場所に、民を導け。見よ。わたしの使いが、あなたの前を行く。わたしのさばきの日にわたしが彼らの罪をさばく。」
3235 こうして、【主】は民を打たれた。アロンが造った子牛を彼らが礼拝したからである。
3301 【主】はモーセに仰せられた。「あなたも、あなたがエジプトの地から連れ上った民も、わたしがアブラハム、イサク、ヤコブに誓って、『これをあなたの子孫に与える』と言った地にここから上って行け。
3302 わたしはあなたがたの前にひとりの使いを遣わし、わたしが、カナン人、エモリ人、ヘテ人、ペリジ人、ヒビ人、エブス人を追い払い、
3303 乳と蜜の流れる地にあなたがたを行かせよう。わたしは、あなたがたのうちにあっては上らないからである。あなたがたはうなじのこわい民であるから、わたしが途中であなたがたを絶ち滅ぼすようなことがあるといけないから。」
3304 民はこの悪い知らせを聞いて悲しみ痛み、だれひとり、その飾り物を身に着ける者はいなかった。
3305 【主】はモーセに、仰せられた。「イスラエル人に言え。あなたがたは、うなじのこわい民だ。一時でもあなたがたのうちにあって、上って行こうものなら、わたしはあなたがたを絶ち滅ぼしてしまうだろう。今、あなたがたの飾り物を身から取りはずしなさい。そうすれば、わたしはあなたがたをどうするかを考えよう。」
3306 それで、イスラエル人はホレブの山以来、その飾り物を取りはずしていた。
3307 モーセはいつも天幕を取り、自分のためにこれを宿営の外の、宿営から離れた所に張り、そしてこれを会見の天幕と呼んでいた。だれでも【主】に伺いを立てる者は、宿営の外にある会見の天幕に行くのであった。
3308 モーセがこの天幕に出て行くときは、民はみな立ち上がり、おのおの自分の天幕の入口に立って、モーセが天幕に入るまで、彼を見守った。
3309 モーセが天幕に入ると、雲の柱が降りて来て、天幕の入口に立った。主はモーセと語られた。
3310 民は、みな、天幕の入口に雲の柱が立つのを見た。民はみな立って、おのおの自分の天幕の入口で伏し拝んだ。
3311 【主】は、人が自分の友と語るように、顔と顔とを合わせてモーセに語られた。モーセが宿営に帰ると、彼の従者でヌンの子ヨシュアという若者が幕屋を離れないでいた。
3312 さて、モーセは【主】に申し上げた。「ご覧ください。あなたは私に、『この民を連れて上れ』と仰せになります。しかし、だれを私といっしょに遣わすかを知らせてくださいません。しかも、あなたご自身で、『わたしは、あなたを名ざして選び出した。あなたは特にわたしの心にかなっている』と仰せになりました。
3313 今、もしも、私があなたのお心にかなっているのでしたら、どうか、あなたの道を教えてください。そうすれば、私はあなたを知ることができ、あなたのお心にかなうようになれるでしょう。この国民があなたの民であることをお心に留めてください。」
3314 すると主は仰せられた。「わたし自身がいっしょに行って、あなたを休ませよう。」
3315 それでモーセは申し上げた。「もし、あなたご自身がいっしょにおいでにならないなら、私たちをここから上らせないでください。
3316 私とあなたの民とが、あなたのお心にかなっていることは、いったい何によって知られるのでしょう。それは、あなたが私たちといっしょにおいでになって、私とあなたの民が、地上のすべての民と区別されることによるのではないでしょうか。」
3317 【主】はモーセに仰せられた。「あなたの言ったそのことも、わたしはしよう。あなたはわたしの心にかない、あなたを名ざして選び出したのだから。」
3318 すると、モーセは言った。「どうか、あなたの栄光を私に見せてください。」
3319 主は仰せられた。「わたし自身、わたしのあらゆる善をあなたの前に通らせ、【主】の名で、あなたの前に宣言しよう。わたしは、恵もうと思う者を恵み、あわれもうと思う者をあわれむ。」
3320 また仰せられた。「あなたはわたしの顔を見ることはできない。人はわたしを見て、なお生きていることはできないからである。」
3321 また【主】は仰せられた。「見よ。わたしのかたわらに一つの場所がある。あなたは岩の上に立て。
3322 わたしの栄光が通り過ぎるときには、わたしはあなたを岩の裂け目に入れ、わたしが通り過ぎるまで、この手であなたをおおっておこう。
3323 わたしが手をのけたら、あなたはわたしのうしろを見るであろうが、わたしの顔は決して見られない。」




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