出エジプト記


1001 【主】はモーセに仰せられた。「パロのところに行け。わたしは彼とその家臣たちを強情にした。それは、わたしがわたしのこれらのしるしを彼らの中に、行うためであり、
1002 わたしがエジプトに対して力を働かせたあのことを、また、わたしが彼らの中で行ったしるしを、あなたが息子や孫に語って聞かせるためであり、わたしが【主】であることを、あなたがたが知るためである。」
1003 モーセとアロンはパロのところに行って、彼に言った。「ヘブル人の神、【主】はこう仰せられます。『いつまでわたしの前に身を低くすることを拒むのか。わたしの民を行かせ、彼らをわたしに仕えさせよ。
1004 もし、あなたが、わたしの民を行かせることを拒むなら、見よ、わたしはあす、いなごをあなたの領土に送る。
1005 いなごが地の面をおおい、地は見えなくなる。また、雹の害を免れて、あなたがたに残されているものを食い尽くし、野に生えているあなたがたの木をみな食い尽くす。
1006 またあなたの家とすべての家臣の家、および全エジプトの家に満ちる。このようなことは、あなたの先祖たちも、そのまた先祖たちも、彼らが地上にあった日からきょうに至るまで、かつて見たことのないものであろう。』」こうして彼は身を返してパロのもとを去った。
1007 家臣たちはパロに言った。「いつまでこの者は私たちを陥れるのですか。この男たちを行かせ、彼らの神、【主】に仕えさせてください。エジプトが滅びるのが、まだおわかりにならないのですか。」
1008 モーセとアロンはパロのところに連れ戻された。パロは彼らに言った。「行け。おまえたちの神、【主】に仕えよ。だが、いったいだれが行くのか。」
1009 モーセは答えた。「私たちは若い者や年寄りも連れて行きます。息子や娘も、羊の群れも牛の群れも連れて行きます。私たちは【主】の祭りをするのですから。」
1010 パロは彼らに言った。「私がおまえたちとおまえたちの幼子たちとを行かせるくらいなら、【主】がおまえたちとともにあるように、とでも言おう。見ろ。悪意はおまえたちの顔に表れている。
1011 そうはいかない。さあ、壮年の男だけ行って、【主】に仕えよ。それがおまえたちの求めていることだ。」こうして彼らをパロの前から追い出した。
1012 【主】はモーセに仰せられた。「あなたの手をエジプトの地の上に差し伸ばせ。いなごの大群がエジプトの地を襲い、その国のあらゆる草木、雹の残したすべてのものを食い尽くすようにせよ。」
1013 モーセはエジプトの地の上に杖を差し伸ばした。【主】は終日終夜その地の上に東風を吹かせた。朝になると東風がいなごの大群を運んで来た。
1014 いなごの大群はエジプト全土を襲い、エジプト全域にとどまった。実におびただしく、こんないなごの大群は、前にもなかったし、このあとにもないであろう。
1015 それらは全地の面をおおったので、地は暗くなった。それらは、地の草木も、雹を免れた木の実も、ことごとく食い尽くした。エジプト全土にわたって、緑色は木にも野の草にも少しも残らなかった。
1016 パロは急いでモーセとアロンを呼び出して言った。「私は、おまえたちの神、【主】とおまえたちに対して罪を犯した。
1017 どうか今、もう一度だけ、私の罪を赦してくれ。おまえたちの神、【主】に願って、主が私から、ただこの死を取り除くようにしてくれ。」
1018 彼はパロのところから出て、【主】に祈った。
1019 すると、【主】はきわめて強い西の風に変えられた。風はいなごを吹き上げ、葦の海に追いやった。エジプト全域に、一匹のいなごも残らなかった。
1020 しかし【主】がパロの心をかたくなにされたので、彼はイスラエル人を行かせなかった。
1021 【主】はモーセに仰せられた。「あなたの手を天に向けて差し伸べ、やみがエジプトの地の上に来て、やみにさわれるほどにせよ。」
1022 モーセが天に向けて手を差し伸ばしたとき、エジプト全土は三日間真っ暗やみとなった。
1023 三日間、だれも互いに見ることも、自分の場所から立つこともできなかった。しかしイスラエル人の住む所には光があった。
1024 パロはモーセを呼び寄せて言った。「行け。【主】に仕えよ。ただおまえたちの羊と牛は、とどめておけ。幼子はおまえたちといっしょに行ってもよい。」
1025 モーセは言った。「あなた自身が私たちの手にいけにえと全焼のいけにえを与えて、私たちの神、【主】にささげさせなければなりません。
1026 私たちは家畜もいっしょに連れて行きます。ひづめ一つも残すことはできません。私たちは、私たちの神、【主】に仕えるためにその中から選ばなければなりません。しかも私たちは、あちらに行くまでは、どれをもって【主】に仕えなければならないかわからないのです。」
1027 しかし、【主】はパロの心をかたくなにされた。パロは彼らを行かせようとはしなかった。
1028 パロは彼に言った。「私のところから出て行け。私の顔を二度と見ないように気をつけろ。おまえが私の顔を見たら、その日に、おまえは死ななければならない。」
1029 モーセは言った。「結構です。私はもう二度とあなたの顔を見ません。」
1101 【主】はモーセに仰せられた。「わたしはパロとエジプトの上になお一つのわざわいを下す。そのあとで彼は、あなたがたをここから行かせる。彼があなたがたを行かせるときは、ほんとうにひとり残らずあなたがたをここから追い出してしまおう。
1102 さあ、民に語って聞かせよ。男は隣の男から、女は隣の女から銀の飾りや金の飾りを求めるように。」
1103 【主】はエジプトが民に好意を持つようにされた。モーセその人も、エジプトの国でパロの家臣と民とに非常に尊敬されていた。
1104 モーセは言った。「【主】はこう仰せられます。『真夜中ごろ、わたしはエジプトの中に出て行く。
1105 エジプトの国の初子は、王座に着くパロの初子から、ひき臼のうしろにいる女奴隷の初子、それに家畜の初子に至るまで、みな死ぬ。
1106 そしてエジプト全土にわたって、大きな叫びが起こる。このようなことはかつてなく、また二度とないであろう。』
1107 しかしイスラエル人に対しては、人から家畜に至るまで、犬も、うなりはしないでしょう。これは、【主】がエジプト人とイスラエル人を区別されるのを、あなたがたが知るためです。
1108 あなたのこの家臣たちは、みな、私のところに来て伏し拝み、『あなたとあなたに従う民はみな出て行ってください』と言うでしょう。私はそのあとで出て行きます。」こうしてモーセは怒りに燃えてパロのところから出て行った。
1109 【主】はモーセに仰せられた。「パロはあなたがたの言うことを聞き入れないであろう。それはわたしの不思議がエジプトの地で多くなるためである。」
1110 モーセとアロンは、パロの前でこれらの不思議をみな行った。しかし【主】はパロの心をかたくなにされ、パロはイスラエル人を自分の国から出て行かせなかった。
1201 【主】は、エジプトの国でモーセとアロンに仰せられた。
1202 「この月をあなたがたの月の始まりとし、これをあなたがたの年の最初の月とせよ。
1203 イスラエルの全会衆に告げて言え。この月の十日に、おのおのその父祖の家ごとに、羊一頭を、すなわち、家族ごとに羊一頭を用意しなさい。
1204 もし家族が羊一頭の分より少ないなら、その人はその家のすぐ隣の人と、人数に応じて一頭を取り、めいめいが食べる分量に応じて、その羊を分けなければならない。
1205 あなたがたの羊は傷のない一歳の雄でなければならない。それを子羊かやぎのうちから取らなければならない。
1206 あなたがたはこの月の十四日までそれをよく見守る。そしてイスラエルの民の全集会は集まって、夕暮れにそれをほふり、
1207 その血を取り、羊を食べる家々の二本の門柱と、かもいに、それをつける。
1208 その夜、その肉を食べる。すなわち、それを火に焼いて、種を入れないパンと苦菜を添えて食べなければならない。
1209 それを、生のままで、または、水で煮て食べてはならない。その頭も足も内臓も火で焼かなければならない。
1210 それを朝まで残してはならない。朝まで残ったものは、火で焼かなければならない。
1211 あなたがたは、このようにしてそれを食べなければならない。腰の帯を引き締め、足に、くつをはき、手に杖を持ち、急いで食べなさい。これは【主】への過越のいけにえである。
1212 その夜、わたしはエジプトの地を巡り、人をはじめ、家畜に至るまで、エジプトの地のすべての初子を打ち、また、エジプトのすべての神々にさばきを下そう。わたしは【主】である。
1213 あなたがたのいる家々の血は、あなたがたのためにしるしとなる。わたしはその血を見て、あなたがたの所を通り越そう。わたしがエジプトの地を打つとき、あなたがたには滅びのわざわいは起こらない。
1214 この日は、あなたがたにとって記念すべき日となる。あなたがたはこれを【主】への祭りとして祝い、代々守るべき永遠のおきてとしてこれを祝わなければならない。
1215 あなたがたは七日間種を入れないパンを食べなければならない。その 一日目に、あなたがたの家から確かにパン種を取り除かなければならない。 一日から 七日までの間に種を入れたパンを食べる者は、だれでもイスラエルから断ち切られるからである。
1216 また 一日に聖なる会合を開き、 七日にも聖なる会合を開かなければならない。この期間中、どんな仕事もしてはならない。ただし、みなが食べなければならないものだけは作ることができる。
1217 あなたがたは種を入れないパンの祭りを守りなさい。それは、ちょうどこの日に、わたしがあなたがたの集団をエジプトの地から連れ出すからである。あなたがたは永遠のおきてとして代々にわたって、この日を守りなさい。
1218 最初の月の十四日の夕方から、その月の二十一日の夕方まで、種を入れないパンを食べなければならない。
1219 七日間はあなたがたの家にパン種があってはならない。だれでもパン種の入ったものを食べる者は、在留異国人でも、この国に生まれた者でも、その者はイスラエルの会衆から断ち切られるからである。
1220 あなたがたはパン種の入ったものは何も食べてはならない。あなたがたが住む所ではどこででも、種を入れないパンを食べなければならない。」
1221 そこで、モーセはイスラエルの長老たちをみな呼び寄せて言った。「あなたがたの家族のために羊を、ためらうことなく、取り、過越のいけにえとしてほふりなさい。
1222 ヒソプの一束を取って、鉢の中の血に浸し、その鉢の中の血をかもいと二本の門柱につけなさい。朝まで、だれも家の戸口から外に出てはならない。
1223 【主】がエジプトを打つために行き巡られ、かもいと二本の門柱にある血をご覧になれば、【主】はその戸口を過ぎ越され、滅ぼす者があなたがたの家に入って、打つことがないようにされる。
1224 あなたがたはこのことを、あなたとあなたの子孫のためのおきてとして、永遠に守りなさい。
1225 また、【主】が約束どおりに与えてくださる地に入るとき、あなたがたはこの儀式を守りなさい。
1226 あなたがたの子どもたちが『この儀式はどういう意味ですか』と言ったとき、
1227 あなたがたはこう答えなさい。『それは【主】への過越のいけにえだ。主がエジプトを打ったとき、主はエジプトにいたイスラエル人の家を過ぎ越され、私たちの家々を救ってくださったのだ。』」すると民はひざまずいて、礼拝した。
1228 こうしてイスラエル人は行って、行った。【主】がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。
1229 真夜中になって、【主】はエジプトの地のすべての初子を、王座に着くパロの初子から、地下牢にいる捕虜の初子に至るまで、また、すべての家畜の初子をも打たれた。
1230 それで、その夜、パロやその家臣および全エジプトが起き上がった。そして、エジプトには激しい泣き叫びが起こった。それは死人のない家がなかったからである。
1231 パロはその夜、モーセとアロンを呼び寄せて言った。「おまえたちもイスラエル人も立ち上がって、私の民の中から出て行け。おまえたちが言うとおりに、行って、【主】に仕えよ。
1232 おまえたちの言うとおりに、羊の群れも牛の群れも連れて出て行け。そして私のためにも祝福を祈れ。」
1233 エジプトは、民をせきたてて、強制的にその国から追い出した。人々が、「われわれもみな死んでしまう」と言ったからである。
1234 それで民は練り粉をまだパン種を入れないままで取り、こね鉢を着物に包み、肩にかついだ。
1235 イスラエル人はモーセのことばどおりに行い、エジプトから銀の飾り、金の飾り、それに着物を求めた。
1236 【主】はエジプトがこの民に好意を持つようにされたので、エジプトは彼らの願いを聞き入れた。こうして、彼らはエジプトからはぎ取った。
1237 イスラエル人はラメセスから、スコテに向かって旅立った。幼子を除いて、徒歩の壮年の男子は約六十万人。
1238 さらに、多くの入り混じって来た外国人と、羊や牛などの非常に多くの家畜も、彼らとともに上った。
1239 彼らはエジプトから携えて来た練り粉を焼いて、パン種の入れてないパン菓子を作った。それには、パン種が入っていなかった。というのは、彼らは、エジプトを追い出され、ぐずぐずしてはおられず、また食料の準備もできなかったからである。
1240 イスラエル人がエジプトに滞在していた期間は四百三十年であった。
1241 四百三十年が終わったとき、ちょうどその日に、【主】の全集団はエジプトの国を出た。
1242 この夜、【主】は彼らをエジプトの国から連れ出すために、寝ずの番をされた。この夜こそ、イスラエル人はすべて、代々にわたり、【主】のために寝ずの番をするのである。
1243 【主】はモーセとアロンに仰せられた。「過越のいけにえに関するおきては次のとおりである。外国人はだれもこれを食べてはならない。
1244 しかし、だれでも金で買われた奴隷は、あなたが割礼を施せば、これを食べることができる。
1245 居留者と雇い人は、これを食べてはならない。
1246 これは一つの家の中で食べなければならない。あなたはその肉を家の外に持ち出してはならない。またその骨を折ってはならない。
1247 イスラエルの全会衆はこれを行わなければならない。
1248 もし、あなたのところに異国人が在留していて、【主】に過越のいけにえをささげようとするなら、彼の家の男子はみな割礼を受けなければならない。そうしてから、その者は、近づいてささげることができる。彼はこの国に生まれた者と同じになる。しかし無割礼の者は、だれもそれを食べてはならない。
1249 このおしえは、この国に生まれた者にも、あなたがたの中にいる在留異国人にも同じである。」
1250 イスラエル人はみな、そのように行った。【主】がモーセとアロンに命じられたとおりに行った。
1251 ちょうどその日に、【主】はイスラエル人を、集団ごとに、エジプトの国から連れ出された。




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