出エジプト記
1301 【主】はモーセに告げて仰せられた。
1302 「イスラエル人の間で、最初に生まれる初子はすべて、人であれ家畜であれ、わたしのために聖別せよ。それはわたしのものである。」
1303 モーセは民に言った。「奴隷の家であるエジプトから出て来たこの日を覚えていなさい。【主】が力強い御手で、あなたがたをそこから連れ出されたからである。種を入れたパンを食べてはならない。
1304 アビブの月のこの日にあなたがたは出発する。
1305 【主】があなたに与えるとあなたの先祖たちに誓われたカナン人、ヘテ人、エモリ人、ヒビ人、エブス人の地、乳と蜜の流れる地に、あなたを連れて行かれるとき、次の儀式をこの月に守りなさい。
1306 七日間、あなたは種を入れないパンを食べなければならない。七日目は【主】への祭りである。
1307 種を入れないパンを七日間、食べなければならない。あなたのところに種を入れたパンがあってはならない。あなたの領土のどこにおいても、あなたのところにパン種があってはならない。
1308 その日、あなたは息子に説明して、『これは、私がエジプトから出て来たとき、【主】が私にしてくださったことのためなのだ』と言いなさい。
1309 これをあなたの手の上のしるしとし、またあなたの額の上の記念としなさい。それは【主】のおしえがあなたの口にあるためであり、【主】が力強い御手で、あなたをエジプトから連れ出されたからである。
1310 あなたはこのおきてを年々その定められた時に守りなさい。
1311 【主】が、あなたとあなたの先祖たちに誓われたとおりに、あなたをカナン人の地に導き、そこをあなたに賜るとき、
1312 すべて最初に生まれる者を、【主】のものとしてささげなさい。あなたの家畜から生まれる初子もみな、雄は【主】のものである。
1313 ただし、ろばの初子はみな、羊で贖わなければならない。もし贖わないなら、その首を折らなければならない。あなたの子どもたちのうち、男の初子はみな、贖わなければならない。
1314 後になってあなたの子があなたに尋ねて、『これは、どういうことですか』と言うときは、彼に言いなさい。『【主】は力強い御手によって、私たちを奴隷の家、エジプトから連れ出された。
1315 パロが私たちを、なかなか行かせなかったとき、【主】はエジプトの地の初子を、人の初子をはじめ家畜の初子に至るまで、みな殺された。それで、私は初めに生まれる雄をみな、いけにえとして、【主】にささげ、私の子どもたちの初子をみな、私は贖うのだ。』
1316 これを手の上のしるしとし、また、あなたの額の上の記 としなさい。それは【主】が力強い御手によって、私たちをエジプトから連れ出されたからである。」
1317 さて、パロがこの民を行かせたとき、神は、彼らを近道であるペリシテ人の国の道には導かれなかった。神はこう言われた。「民が戦いを見て、心が変わり、エジプトに引き返すといけない。」
1318 それで神はこの民を葦の海に沿う荒野の道に回らせた。イスラエル人は編隊を組み、エジプトの国から離れた。
1319 モーセはヨセフの遺骸を携えて来た。それはヨセフが、「神は必ずあなたがたを顧みてくださる。そのとき、あなたがたは私の遺骸をここから携え上らなければならない」と言って、イスラエルの子らに堅く誓わせたからである。
1320 こうして彼らはスコテから出て行き、荒野の端にあるエタムに宿営した。
1321 【主】は、昼は、途上の彼らを導くため、雲の柱の中に、夜は、彼らを照らすため、火の柱の中にいて、彼らの前を進まれた。彼らが昼も夜も進んで行くためであった。
1322 昼はこの雲の柱、夜はこの火の柱が民の前から離れなかった。
1401 【主】はモーセに告げて仰せられた。
1402 「イスラエル人に、引き返すように言え。そしてミグドルと海の間にあるピ・ハヒロテに面したバアル・ツェフォンの手前で宿営せよ。あなたがたは、それに向かって海辺に宿営しなければならない。
1403 パロはイスラエル人について、『彼らはあの地で迷っている。荒野は彼らを閉じ込めてしまった』と言うであろう。
1404 わたしはパロの心をかたくなにし、彼が彼らのあとを追えば、パロとその全軍勢を通してわたしは栄光を現し、エジプトはわたしが【主】であることを知るようになる。」そこでイスラエル人はそのとおりにした。
1405 民の逃げたことがエジプトの王に告げられると、パロとその家臣たちは民についての考えを変えて言った。「われわれはいったい何ということをしたのだ。イスラエルを去らせてしまい、われわれに仕えさせないとは。」
1406 そこでパロは戦車を整え、自分でその軍勢を率い、
1407 えり抜きの戦車六百とエジプトの全戦車を、それぞれ補佐官をつけて率いた。
1408 【主】がエジプトの王パロの心をかたくなにされたので、パロはイスラエル人を追跡した。しかしイスラエル人は臆することなく出て行った。
1409 それでエジプトは彼らを追跡した。パロの戦車の馬も、騎兵も、軍勢も、ことごとく、バアル・ツェフォンの手前、ピ・ハヒロテで、海辺に宿営している彼らに追いついた。
1410 パロは近づいていた。それで、イスラエル人が目を上げて見ると、なんと、エジプト人が彼らのあとに迫っているではないか。イスラエル人は非常に恐れて、【主】に向かって叫んだ。
1411 そしてモーセに言った。「エジプトには墓がないので、あなたは私たちを連れて来て、この荒野で、死なせるのですか。私たちをエジプトから連れ出したりして、いったい何ということを私たちにしてくれたのです。
1412 私たちがエジプトであなたに言ったことは、こうではありませんでしたか。『私たちのことはかまわないで、私たちをエジプトに仕えさせてください。』事実、エジプトに仕えるほうがこの荒野で死ぬよりも私たちには良かったのです。」
1413 それでモーセは民に言った。「恐れてはいけない。しっかり立って、きょう、あなたがたのために行われる【主】の救いを見なさい。あなたがたは、きょう見るエジプト人をもはや永久に見ることはできない。
1414 【主】があなたがたのために戦われる。あなたがたは黙っていなければならない。」
1415 【主】はモーセに仰せられた。「なぜあなたはわたしに向かって叫ぶのか。イスラエル人に前進するように言え。
1416 あなたは、あなたの杖を上げ、あなたの手を海の上に差し伸ばし、海を分けて、イスラエル人が海の真ん中のかわいた地を進み行くようにせよ。
1417 見よ。わたしはエジプト人の心をかたくなにする。彼らがそのあとから入って来ると、わたしはパロとその全軍勢、戦車と騎兵を通して、わたしの栄光を現そう。
1418 パロとその戦車とその騎兵を通して、わたしが栄光を現すとき、エジプトはわたしが【主】であることを知るのだ。」
1419 ついでイスラエルの陣営の前を進んでいた神の使いは、移って、彼らのあとを進んだ。それで、雲の柱は彼らの前から移って、彼らのうしろに立ち、
1420 エジプトの陣営とイスラエルの陣営との間に入った。それは真っ暗な雲であったので、夜を迷い込ませ、一晩中、一方が他方に近づくことはなかった。
1421 そのとき、モーセが手を海の上に差し伸ばすと、【主】は一晩中強い東風で海を退かせ、海を陸地とされた。それで水は分かれた。
1422 そこで、イスラエル人は海の真ん中のかわいた地を、進んで行った。水は彼らのために右と左で壁となった。
1423 エジプト人は追いかけて来て、パロの馬も戦車も騎兵も、みな彼らのあとから海の中に入って行った。
1424 朝の見張りのころ、【主】は火と雲の柱のうちからエジプトの陣営を見おろし、エジプトの陣営をかき乱された。
1425 その戦車の車輪をはずして、進むのを困難にされた。それでエジプト人は言った。「イスラエル人の前から逃げよう。【主】が彼らのために、エジプトと戦っておられるのだから。」
1426 このとき【主】はモーセに仰せられた。「あなたの手を海の上に差し伸べ、水がエジプト人と、その戦車、その騎兵の上に返るようにせよ。」
1427 モーセが手を海の上に差し伸べたとき、夜明け前に、海がもとの状態に戻った。エジプト人は水が迫って来るので逃げたが、【主】はエジプト人を海の真ん中に投げ込まれた。
1428 水はもとに戻り、あとを追って海に入ったパロの全軍勢の戦車と騎兵をおおった。残された者はひとりもいなかった。
1429 イスラエル人は海の真ん中のかわいた地を歩き、水は彼らのために、右と左で壁となったのである。
1430 こうして、【主】はその日イスラエルをエジプトの手から救われた。イスラエルは海辺に死んでいるエジプト人を見た。
1431 イスラエルは【主】がエジプトに行われたこの大いなる御力を見たので、民は【主】を恐れ、【主】とそのしもべモーセを信じた。
1501 そこで、モーセとイスラエル人は、【主】に向かって、この歌を歌った。彼らは言った。「【主】に向かって私は歌おう。主は輝かしくも勝利を収められ、馬と乗り手とを海の中に投げ込まれたゆえに。
1502 主は、私の力であり、ほめ歌である。主は、私の救いとなられた。この方こそ、わが神。私はこの方をほめたたえる。私の父の神。この方を私はあがめる。
1503 【主】はいくさびと。その御名は【主】。
1504 主はパロの戦車も軍勢も海の中に投げ込まれた。えり抜きの補佐官たちも葦の海におぼれて死んだ。
1505 大いなる水は彼らを包んでしまい、彼らは石のように深みに下った。
1506 【主】よ。あなたの右の手は力に輝く。【主】よ。あなたの右の手は敵を打ち砕く。
1507 あなたは大いなる威力によって、あなたに立ち向かう者どもを打ち破られる。あなたが燃える怒りを発せられると、それは彼らを刈り株のように焼き尽くす。
1508 あなたの鼻の息で、水は積み上げられ、流れはせきのように、まっすぐ立ち、大いなる水は海の真ん中で固まった。
1509 敵は言った。『私は追って、追いついて、略奪した物を分けよう。おのれの望みを彼らによってかなえよう。剣を抜いて、この手で彼らを滅ぼそう。』
1510 あなたが風を吹かせられると、海は彼らを包んでしまった。彼らは大いなる水の中に鉛のように沈んだ。
1511 【主】よ。神々のうち、だれかあなたのような方があるでしょうか。だれがあなたのように、聖であって力強く、たたえられつつ恐れられ、奇しいわざを行うことができましょうか。
1512 あなたが右の手を伸ばされると、地は彼らをのみこんだ。
1513 あなたが贖われたこの民を、あなたは恵みをもって導き、御力をもって、聖なる御住まいに伴われた。
1514 国々の民は聞いて震え、もだえがペリシテの住民を捕らえた。
1515 そのとき、エドムの首長らは、おじ惑い、モアブの有力者らは、震え上がり、カナンの住民は、みな震えおののく。
1516 恐れとおののきが彼らを襲い、あなたの偉大な御腕により、彼らが石のように黙りますように。【主】よ。あなたの民が通り過ぎるまで。あなたが買い取られたこの民が通り過ぎるまで。
1517 あなたは彼らを連れて行き、あなたご自身の山に植えられる。【主】よ。御住まいのためにあなたがお造りになった場所に。主よ。あなたの御手が堅く建てた聖所に。
1518 【主】はとこしえまでも統べ治められる。」
1519 パロの馬が戦車や騎兵とともに海の中に入ったとき、【主】は海の水を彼らの上に返されたのであった。しかしイスラエル人は海の真ん中のかわいた土の上を歩いて行った。
1520 アロンの姉、女預言者ミリヤムはタンバリンを手に取り、女たちもみなタンバリンを持って、踊りながら彼女について出て来た。
1521 ミリヤムは人々に応えて歌った。「【主】に向かって歌え。主は輝かしくも勝利を収められ、馬と乗り手とを海の中に投げ込まれた。」
1522 モーセはイスラエルを葦の海から旅立たせた。彼らはシュルの荒野へ出て行き、三日間、荒野を歩いた。彼らには水が見つからなかった。
1523 彼らはマラに来たが、マラの水は苦くて飲むことができなかった。それで、そこはマラと呼ばれた。
1524 民はモーセにつぶやいて、「私たちは何を飲んだらよいのですか」と言った。
1525 モーセは【主】に叫んだ。すると、【主】は彼に一本の木を示されたので、モーセはそれを水に投げ入れた。すると、水は甘くなった。その所で主は彼に、おきてと定めを授け、その所で彼を試みられた。
1526 そして、仰せられた。「もし、あなたがあなたの神、【主】の声に確かに聞き従い、主が正しいと見られることを行い、またその命令に耳を傾け、そのおきてをことごとく守るなら、わたしはエジプトに下したような病気を何一つあなたの上に下さない。わたしは【主】、あなたをいやす者である。」
1527 こうして彼らはエリムに着いた。そこには、十二の水の泉と七十本のなつめやしの木があった。そこで、彼らはその水のほとりに宿営した。