哀歌

0101 ああ、人の群がっていたこの町は、ひとり寂しくすわっている。国々の中で大いなる者であったのに、やもめのようになった。諸州のうちの女王は、苦役に服した。
0102 彼女は泣きながら夜を過ごし、涙は頬を伝っている。彼女の愛する者は、だれも慰めてくれない。その友もみな彼女を裏切り、彼女の敵となってしまった。
0103 ユダは悩みと多くの労役のうちに捕らえ移された。彼女は異邦の民の中に住み、いこうこともできない。苦しみのうちにあるときに、彼女に追い迫る者たちがみな、彼女に追いついた。
0104 シオンへの道は喪に服し、だれも例祭に行かない。その門はみな荒れ果て、その祭司たちはうめき、おとめたちは憂いに沈んでいる。シオンは苦しんでいる。
0105 彼女の仇がかしらとなり、彼女の敵が栄えている。彼女の多くのそむきの罪のために、【主】が彼女を悩ましたのだ。彼女の幼子たちも、仇によってとりことなって行った。
0106 シオンの娘からは、すべての輝きがなくなり、首長たちは、牧場のない鹿のようになって、追う者の前を力なく歩む。
0107 エルサレムは、悩みとさすらいの日にあたって、昔から持っていた自分のすべての宝を思い出す。その民が仇の手によって倒れ、だれも彼女を助ける者がないとき、仇はその破滅を見てあざ笑う。
0108 エルサレムは罪に罪を重ねて、汚らわしいものとなった。彼女を尊んだ者たちもみな、その裸を見て、これを卑しめる。彼女もうめいてたじろいだ。
0109 彼女の汚れはすそにまでついている。彼女は自分の末路を思わなかった。それで、驚くほど落ちぶれて、だれも慰める者がない。「【主】よ。私の悩みを顧みてください。敵は勝ち誇っています。」
0110 仇が彼女の宝としているものすべてに手を伸ばしました。異邦の民が、その聖所に入ったのを彼女は見ました。あなたの集団に加わってはならないと、あなたがかつて命じられたものが。
0111 彼女の民はみなうめき、食べ物を捜しています。気力を取り戻そうとして、自分の宝としているものを食物に代えています。「【主】よ。私が、卑しい女になり果てたのをよく見てください。」
0112 道行くみなの人よ。よく見よ。【主】が燃える怒りの日に私を悩まし、私をひどいめに会わされたこのような痛みがほかにあるかどうかを。
0113 主は高い所から火を送り、私の骨の中にまで送り込まれた。私の足もとに網を張り、私をうしろにのけぞらせ、私を荒れすさんだ女、終日、病んでいる女とされた。
0114 私のそむきの罪のくびきは重く、主の御手で、私の首に結びつけられた。主は、私の力をくじき、私を、彼らの手にゆだね、もう立ち上がれないようにされた。
0115 主は、私のうちにいたつわものをみな追い払い、一つの群れを呼び集めて、私を攻め、私の若い男たちを滅ぼされた。主は、酒ぶねを踏むように、おとめユダの娘を踏みつぶされた。
0116 このことで、私は泣いている。私の目、この目から涙があふれる。私を元気づけて慰めてくれる者が、私から遠ざかったからだ。敵に打ち負かされて、私の子らは荒れすさんでいる。
0117 シオンが手を差し出しても、これを慰める者はない。【主】は仇に命じて、四方からヤコブを攻めさせた。エルサレムは彼らの間で、汚らわしいものとなった。
0118 【主】は正義を行われる。しかし、私は主の命令に逆らった。だが、すべての国々の民よ、聞け。私の痛みを見よ。私の若い女たちも、若い男たちも、とりことなって行った。
0119 私は愛する者たちを呼んだのに、彼らは私を欺いた。私の祭司も長老たちも、町の中で息絶えた。気力を取り戻そうとして、自分の食物を捜していたときに。
0120 「【主】よ。ご覧ください。私は苦しみ、私のはらわたは煮え返り、私の心は私のうちで転倒しています。私が逆らい続けたからです。外では剣が子を奪い、家の中は死のようです。
0121 彼らは私のため息を聞いても、だれも私を慰めてくれません。私の敵はみな、私のわざわいを聞いて、喜びました。あなたが、そうなさったからです。あなたが、かつて告げられた日を来させてください。そうすれば、彼らも私と同じようになるでしょう。
0122 彼らのすべての悪を、御前に出させ、あなたが、私のすべてのそむきの罪に対して、報い返されたように、彼らにも報い返してください。私のため息は大きく、私の心は痛みます。」
0201 ああ、主はシオンの娘を御怒りで曇らせ、イスラエルの栄えを天から地に投げ落とし、御怒りの日に、ご自分の足台を思い出されなかった。
0202 主は、ヤコブのすべての住まいを、容赦なく滅ぼし、ユダの娘の要塞を、憤って打ちこわし、王国とその首長たちを、地に打ちつけて汚された。
0203 燃える怒りをもって、イスラエルのすべての角を折り、敵の前で、右の手を引き戻し、あたりを焼き尽くす燃える火で、ヤコブを焼かれた。
0204 主は敵のように、弓を張り、右の手でしっかり構え、仇のように、いとしい者たちのすべてを虐殺し、シオンの娘の天幕に火のように憤りを注がれた。
0205 主は、敵のようになって、イスラエルを滅ぼし、そのすべての宮殿を滅ぼし、その要塞を荒れすたらせて、ユダの娘の中にうめきと嘆きをふやされた。
0206 主は、畑の仮小屋のように、ご自分の幕屋を投げ捨てて、例祭の場所を荒れすたらせた。【主】はシオンでの例祭と安息日とを忘れさせ、激しい憤りで、王と祭司を退けられた。
0207 主は、その祭壇を拒み、聖所を汚し、その宮殿の城壁を敵の手に渡された。すると、例祭の日のように、彼らは、【主】の宮でほえたけった。
0208 【主】は、シオンの娘の城壁を荒れすたらせようと決め、測りなわでこれを測り、これを滅ぼして手を引かれなかった。塁と城壁は悲しみ嘆き、これらは共にくずれ落ちた。
0209 その城門も地にめり込み、主はそのかんぬきを打ちこわし、打ち砕いた。その王も首長たちも異邦人の中にあり、もう律法はない。預言者にも、【主】からの幻がない。
0210 シオンの娘の長老たちは、地にすわって黙りこみ、頭にはちりをまき散らし、身には荒布をまとった。エルサレムのおとめたちは、その頭を地に垂れた。
0211 私の目は涙でつぶれ、私のはらわたは煮え返り、私の肝は、私の民の娘の傷を見て、地に注ぎ出された。幼子や乳飲み子が都の広場で衰え果てている。
0212 彼らは母親に、穀物とぶどう酒はどこにあるのか、と言い続け、町の広場で傷つけられて衰え果てた者のように、母のふところで息も絶えようとしている。
0213 エルサレムの娘よ。私はあなたを何にたとえ、あなたを何になぞらえよう。おとめ、シオンの娘よ。私は何にあなたを比べて、あなたを慰めることができよう。あなたの傷は海のように大きい。だれがあなたをいやすことができよう。
0214 あなたの預言者たちは、あなたのために、むなしい、ごまかしばかりを預言して、あなたの繁栄を元どおりにするために、あなたの咎をあばこうともせず、あなたのために、むなしい、人を惑わすことばを預言した。
0215 道行く人はみな、あなたに向かって手を打ち鳴らし、エルサレムの娘をあざけって頭を振り、「これが、美のきわみと言われた町、全地の喜びの町であったのか」と言う。
0216 あなたの敵はみな、あなたに向かって大きく口を開いて、あざけり、歯ぎしりして言う。「われわれはこれを滅ぼした。ああ、これこそ、われわれの待ち望んでいた日。われわれはこれに巡り会い、じかに見た」と。
0217 【主】は企てたことを行い、昔から告げておいたみことばを成し遂げられた。滅ぼして、容赦せず、あなたのことで敵を喜ばせ、あなたの仇の角を高く上げられた。
0218 彼らは主に向かって心の底から叫んだ。シオンの娘の城壁よ。昼も夜も、川のように涙を流せ。ぼんやりしてはならない。目を閉じてはならない。
0219 夜の間、夜の見張りが立つころから、立って大声で叫び、あなたの心を水のように、主の前に注ぎ出せ。主に向かって手を差し上げ、あなたの幼子たちのために祈れ。彼らは、あらゆる街頭で、飢えのために弱り果てている。
0220 「【主】よ。ご覧ください。顧みてください。あなたはだれにこのようなしうちをされたでしょうか。女が、自分の産んだ子、養い育てた幼子を食べてよいでしょうか。主の聖所で、祭司や預言者が虐殺されてよいでしょうか。
0221 幼い者も年寄りも道ばたで地に横たわり、私の若い女たちも若い男たちも剣に倒れました。あなたは御怒りの日に虐殺し、彼らを容赦なくほふりました。
0222 あなたは、例祭の日のように、私の恐れる者たちを、四方から呼び集めました。【主】の御怒りの日に、のがれた者も生き残った者もいませんでした。私が養い育てた者を、私の敵は絶ち滅ぼしてしまいました。」
0301 私は主の激しい怒りのむちを受けて悩みに会った者。
0302 主は私を連れ去って、光のないやみを歩ませ、
0303 御手をもって一日中、くり返して私を攻めた。
0304 主は私の肉と皮とをすり減らし、骨を砕き、
0305 苦味と苦難で私を取り囲んだ。
0306 ずっと前に死んだ者のように、私を暗い所に住まわせた。
0307 主は私を囲いに入れて、出られないようにし、私の青銅の足かせを重くした。
0308 私が助けを求めて叫んでも、主は私の祈りを聞き入れず、
0309 私の道を切り石で囲み、私の通り道をふさいだ。
0310 主は、私にとっては、待ち伏せしている熊、隠れている獅子。
0311 主は、私の道をかき乱し、私を耕さず、私を荒れすたれさせた。
0312 主は弓を張り、私を矢の的のようにし、
0313 矢筒の矢を、私の腎臓に射込んだ。
0314 私は、私の民全体の物笑いとなり、一日中、彼らのあざけりの歌となった。
0315 主は私を苦味で飽き足らせ、苦よもぎで私を酔わせ、
0316 私の歯を小石で砕き、灰の中に私をすくませた。
0317 私のたましいは平安から遠のき、私はしあわせを忘れてしまった。
0318 私は言った。「私の誉れと、【主】から受けた望みは消えうせた」と。
0319 私の悩みとさすらいの思い出は、苦よもぎと苦味だけ。
0320 私のたましいは、ただこれを思い出しては沈む。
0321 私はこれを思い返す。それゆえ、私は待ち望む。
0322 私たちが滅びうせなかったのは、【主】の恵みによる。主のあわれみは尽きないからだ。
0323 それは朝ごとに新しい。「あなたの真実は力強い。
0324 【主】こそ、私の受ける分です」と私のたましいは言う。それゆえ、私は主を待ち望む。
0325 【主】はいつくしみ深い。主を待ち望む者、主を求めるたましいに。
0326 【主】の救いを黙って待つのは良い。
0327 人が、若い時に、くびきを負うのは良い。
0328 それを負わされたなら、ひとり黙ってすわっているがよい。
0329 口をちりにつけよ。もしや希望があるかもしれない。
0330 自分を打つ者に頬を与え、十分そしりを受けよ。
0331 主は、いつまでも見放してはおられない。
0332 たとい悩みを受けても、主は、その豊かな恵みによって、あわれんでくださる。
0333 主は人の子らを、ただ苦しめ悩まそうとは、思っておられない。
0334 地上のすべての捕らわれ人を足の下に踏みにじり、
0335 人の権利を、いと高き方の前で曲げ、
0336 人がそのさばきをゆがめることを、主は見ておられないだろうか。
0337 主が命じたのでなければ、だれがこのようなことを語り、このようなことを起こしえようか。
0338 わざわいも幸いも、いと高き方の御口から出るのではないか。
0339 生きている人間は、なぜつぶやくのか。自分自身の罪のためにか。
0340 私たちの道を尋ね調べて、【主】のみもとに立ち返ろう。
0341 私たちの手をも心をも天におられる神に向けて上げよう。
0342 「私たちはそむいて逆らいました。あなたは私たちを赦してくださいませんでした。
0343 あなたは、御怒りを身にまとい、私たちを追い、容赦なく殺されました。
0344 あなたは雲を身にまとい、私たちの祈りをさえぎり、
0345 私たちを国々の民の間で、あくたとし、いとわれる者とされました。」
0346 私たちの敵はみな、私たちに向かって口を大きく開き、
0347 恐れと穴、荒廃と破滅が私たちのものになった。
0348 私の民の娘の破滅のために、私の目から涙が川のように流れ、
0349 私の目は絶えず涙を流して、やむことなく、
0350 【主】が天から見おろして、顧みてくださる時まで続く。
0351 私の目は私の町のすべての娘を見て、この心を苦しめる。
0352 わけもないのに、私の敵となった者たちは、鳥をねらうように、私をつけねらった。
0353 彼らは私を穴に入れて殺そうとし、私の上に石を投げつけた。
0354 水は私の頭の上にあふれ、私は「もう絶望だ」と言った。
0355 「【主】よ。私は深い穴から御名を呼びました。
0356 あなたは私の声を聞かれました。救いを求める私の叫びに耳を閉じないでください。
0357 私があなたに呼ばわるとき、あなたは近づいて、『恐れるな』と仰せられました。
0358 主よ。あなたは、私のたましいの訴えを弁護して、私のいのちを贖ってくださいました。
0359 【主】よ。あなたは、私がしいたげられるのをご覧になりました。どうか、私の訴えを正しくさばいてください。
0360 あなたは、私に対する彼らの復讐と、たくらみとをことごとくご覧になりました。
0361 【主】よ。あなたは、私に対する彼らのそしりとすべてのたくらみとを聞かれました。
0362 私の敵のくちびると彼らのつぶやきが、一日中、私に向けられています。
0363 彼らの起き伏しに目を留めてください。私は彼らのからかいの歌となっています。
0364 【主】よ。彼らの手のわざに応じて、彼らに報復し、
0365 横着な心を彼らに与え、彼らに、あなたののろいを下してください。
0366 【主】よ。御怒りをもって彼らを追い、天の下から彼らを根絶やしにしてください。」

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