エレミヤ書

0401 「イスラエルよ。もし帰るのなら、──【主】の御告げ──わたしのところに帰って来い。もし、あなたが忌むべき物をわたしの前から除くなら、あなたは迷うことはない。
0402 あなたが真実と公義と正義とによって『【主】は生きておられる』と誓うなら、国々は主によって互いに祝福し合い、主によって誇り合う。」
0403 まことに【主】は、ユダの人とエルサレムとに、こう仰せられる。「耕地を開拓せよ。いばらの中に種を蒔くな。
0404 ユダの人とエルサレムの住民よ。【主】のために割礼を受け、心の包皮を取り除け。さもないと、あなたがたの悪い行いのため、わたしの憤りが火のように出て燃え上がり、消す者もいないだろう。」
0405 「ユダに告げ、エルサレムに聞かせて言え。国中に角笛を吹け。大声で叫んで言え。『集まれ。城壁のある町に行こう。』
0406 シオンのほうに旗を掲げよ。のがれよ。立ち止まるな。わたしがわざわいを北からもたらし、大いなる破滅をもたらすから。
0407 獅子はその茂みから上って来、国々を滅ぼす者は彼らの国から進み出た。あなたの国を荒れ果てさせるために。あなたの町々は滅び、住む者もいなくなろう。」
0408 そのために荒布をまとい、悲しみ嘆け。【主】の燃える怒りが、私たちから去らないからだ。
0409 「その日には、──【主】の御告げ──王の心、つかさたちの心は、ついえ去り、祭司はおののき、預言者は驚く。」
0410 そこで、私は言った。「ああ、神、主よ。まことに、あなたはこの民とエルサレムを全く欺かれました──『あなたがたには平和が来る』と仰せられて。それなのに、剣が私ののどに触れています。」
0411 その時、この民とエルサレムにこう告げられる。荒野にある裸の丘の熱風が、わたしの民の娘のほうに吹いて来る。──吹き分けるためでもなく、清めるためでもない。
0412 これよりも、もっと激しい風が、わたしのために吹いて来る。今、わたしは彼らにさばきを下そう。
0413 見よ。それは雲のように上って来る。その戦車はつむじ風のよう、その馬は鷲よりも速い。ああ。私たちは荒らされる。
0414 エルサレムよ。救われるために、心を洗って悪を除け。いつまで、あなたの中には邪念が宿っているのか。
0415 ああ、ダンから告げる声がある。エフライムの山からわざわいを告げ知らせている。
0416 国々に知らせよ。さあ、エルサレムに告げ知らせよ。包囲する者たちが遠くの地から来て、ユダの町々に叫び声をあげる。
0417 彼らは畑の番人のように、ユダを取り囲む。それは、ユダがわたしに逆らったからだ。──【主】の御告げ──
0418 あなたの行いと、あなたのわざが、あなたの身にこれを招いたのだ。これがあなたへのわざわいで、実に苦い。もう、あなたの心臓にまで達している。
0419 私のはらわた、私のはらわた。私は痛み苦しむ。私の心臓の壁よ。私の心は高鳴り、私はもう、黙っていられない。私のたましいよ。おまえが角笛の音と、戦いの雄たけびを聞くからだ。
0420 破滅に次ぐ破滅が知らされる。全国が荒らされるからだ。たちまち、私の天幕も荒らされ、私の幕屋も倒される。
0421 いつまで私は、旗を見、角笛の音を聞かなければならないのだ。
0422 実に、わたしの民は愚か者で、わたしを知らない。彼らは、ばかな子らで、彼らは悟りがない。彼らは悪事を働くのに賢くて、善を行うことを知らない。
0423 私が地を見ると、見よ、茫漠として何もなく、天を見ると、その光はなかった。
0424 私が山々を見ると、見よ、揺れ動き、すべての丘は震えていた。
0425 私が見ると、見よ、人はひとりもいなく、空の鳥もみな飛び去っていた。
0426 私が見ると、見よ、果樹園は荒野となり、町々は【主】の御前で、その燃える怒りによって、取りこわされていた。
0427 まことに【主】はこう仰せられる。「全地は荒れ果てる。しかし、わたしはことごとくは滅ぼさない。
0428 このために、地は嘆き悲しみ、上の天も暗くなる。わたしが語り、わたしが企てたからだ。わたしは悔いず、取りやめもしない。」
0429 騎兵と射手の叫びに、町中の人が逃げ去った。彼らは草むらに入り、岩によじのぼった。すべての町が捨てられ、そこに住む人もない。
0430 踏みにじられた女よ。あなたが緋の衣をまとい、金の飾りで身を飾りたてても、それが何の役に立とう。目を塗って大きく見せても、美しく見せても、かいがない。恋人たちは、あなたをうとみ、あなたのいのちを取ろうとしている。
0431 まことに、わたしは、産みの苦しみをする女のような声、初子を産む女のようなうめき、シオンの娘の声を聞いた。彼女はあえぎ、手を伸べて言う。「ああ。私は殺す者たちのために疲れ果てた。」
0501 エルサレムのちまたを行き巡り、さあ、見て知るがよい。その広場で捜して、だれか公義を行い、真実を求める者を見つけたら、わたしはエルサレムを赦そう。
0502 たとい彼らが、「【主】は生きておられる」と言っても、実は、彼らは偽って誓っているのだ。
0503 【主】よ。あなたの目は、真実に向けられていないのでしょうか。あなたが彼らを打たれたのに、彼らは痛みもしませんでした。彼らを絶ち滅ぼそうとされたのに、彼らは懲らしめを受けようともしませんでした。彼らは顔を岩よりも堅くし、悔い改めようともしませんでした。
0504 そこで、私は思いました。「彼らは、実に卑しい愚か者だ。【主】の道も、神のさばきも知りもしない。
0505 だから、身分の高い者たちのところへ行って、彼らと語ろう。彼らなら、【主】の道も、神のさばきも知っているから。」ところが、彼らもみな、くびきを砕き、なわめを断ち切っていました。
0506 それゆえ、森の獅子が彼らを殺し、荒れた地の狼が彼らを荒らす。ひょうが彼らの町々をうかがう。町から出る者をみな、引き裂こう。彼らが多くの罪を犯し、その背信がはなはだしかったからだ。
0507 これでは、どうして、わたしがあなたを赦せよう。あなたの子らはわたしを捨て、神でないものによって誓っていた。わたしが彼らを満ち足らせたときも、彼らは姦通をし、遊女の家で身を傷つけた。
0508 彼らは、肥え太ってさかりのついた馬のように、おのおの隣の妻を慕っていななく。
0509 これらに対して、わたしが罰しないだろうか。──【主】の御告げ──このような国に、わたしが復讐しないだろうか。
0510 ぶどう畑の石垣に上って滅ぼせ。しかし、ことごとく滅ぼしてはならない。そのつるを除け。それらは【主】のものではないからだ。
0511 イスラエルの家とユダの家とは、大いにわたしを裏切ったからだ。──【主】の御告げ──
0512 彼らは【主】を否んでこう言った。「主が何だ。わざわいは私たちを襲わない。剣もききんも、私たちは、見はしない。
0513 預言者たちは風になり、みことばは彼らのうちにない。彼らはこのようになる。」
0514 それゆえ、万軍の神、【主】は、こう仰せられる。「あなたがたが、このようなことを言ったので、見よ、わたしは、あなたの口にあるわたしのことばを火とし、この民をたきぎとする。火は彼らを焼き尽くす。
0515 イスラエルの家よ。見よ。わたしはあなたがたを攻めに、遠くの地から一つの国民を連れて来る。──【主】の御告げ──それは古くからある国、昔からある国、そのことばをあなたは知らず、何を話しているのか聞き取れない国。
0516 その矢筒は開いた墓のようだ。彼らはみなつわもの。
0517 彼らはあなたの刈り入れたものとあなたのパンを食らい、あなたの息子、娘を食らい、あなたの羊の群れと牛の群れを食らい、あなたのぶどうと、いちじくを食らい、あなたの拠り頼む城壁のある町々を、剣で打ち破る。
0518 しかし、その日にも、──【主】の御告げ──わたしはあなたがたを、ことごとくは滅ぼさない。」
0519 「あなたがたが、『何のために、私たちの神、【主】は、これらすべての事を私たちにしたのか』と尋ねるときは、あなたは彼らにこう言え。『あなたがたが、わたしを捨て、あなたがたの国内で、外国の神々に仕えたように、あなたがたの国ではない地で、他国人に仕えるようになる。』
0520 ヤコブの家にこう告げ、ユダに言い聞かせよ。
0521 さあ、これを聞け。愚かで思慮のない民よ。彼らは、目があっても見えず、耳があっても聞こえない。
0522 あなたがたは、わたしを恐れないのか。──【主】の御告げ──それとも、わたしの前でおののかないのか。わたしは砂を、海の境とした。越えられない永遠の境界として。波が逆巻いても勝てず、鳴りとどろいても越えられない。
0523 ところが、この民には、かたくなで、逆らう心があり、彼らは、そむいて去って行った。
0524 彼らは心の中でも、こう言わなかった。『さあ、私たちの神、【主】を恐れよう。主は大雨を、先の雨と後の雨を、季節にしたがって与え、刈り入れのために定められた数週を私たちのために守ってくださる』と。
0525 あなたがたの咎が、これを追い払い、あなたがたの罪が、この良い物を拒んだのだ。
0526 それは、わたしの民のうちに、悪者たちがいるからだ。彼らは、待ち伏せして鳥を取る者のように、わなをしかけて人々を捕らえる。
0527 鳥でいっぱいの鳥かごのように、彼らの家は欺きでいっぱいだ。だから、彼らは偉い者となって富む。
0528 彼らは、肥えて、つややかになり、悪事に進み、さばきについては、みなしごのためにさばいて幸いを見させず、貧しい者たちの権利を弁護しない。
0529 これらに対して、わたしが罰しないだろうか。──【主】の御告げ──このような国に、わたしが復讐しないだろうか。
0530 恐怖と、戦慄が、この国のうちにある。
0531 預言者は偽りの預言をし、祭司は自分かってに治め、わたしの民はそれを愛している。その末には、あなたがたは、どうするつもりだ。」
0601 ベニヤミンの子らよ。エルサレムの中からのがれよ。テコアで角笛を吹き、ベテ・ハケレムでのろしを上げよ。わざわいと大いなる破滅が、北から見おろしているからだ。
0602 私は、シオンの娘を、麗しい牧場になぞらえる。
0603 羊飼いは自分の群れを連れて、そこに行き、その回りに天幕を張り、その群れはおのおの、自分の草を食べる。
0604 「シオンに向かって聖戦をふれよ。立て。われわれは真昼に上ろう。」「ああ、残念だ。日が傾いた。夕べの影も伸びる。」
0605 「立て。われわれは夜の間に上って、その宮殿を滅ぼそう。」
0606 まことに万軍の【主】はこう仰せられる。「木を切って、エルサレムに対して塁を築け。これは罰せられる町。その中には、しいたげだけがある。
0607 井戸が水をわき出させるように、エルサレムは自分の悪をわき出させた。暴虐と暴行が、その中で聞こえる。わたしの前には、いつも病と打ち傷がある。
0608 エルサレムよ。戒めを受けよ。さもないと、わたしの心はおまえから離れ、おまえを住む人もない荒れ果てた地とする。」
0609 万軍の【主】はこう仰せられる。「ぶどうの残りを摘むように、イスラエルの残りの者をすっかり摘み取れ。ぶどうを収穫する者のように、あなたの手をもう一度、その枝に伸ばせ。」
0610 私はだれに語りかけ、だれをさとして、聞かせようか。見よ。彼らの耳は閉じたままで、聞くこともできない。見よ。【主】のことばは、彼らにとって、そしりとなる。彼らはそれを喜ばない。
0611 私の身には【主】の憤りが満ち、これに耐えるのに、私は疲れ果てた。「それを、道ばたにいる子どもの上にも、若い男の集まりの上にも、ぶちまけよ。夫も妻も、ともどもに、年寄りも齢の満ちた者も共に捕らえられ、
0612 彼らの家は、畑や妻もろともに、他人のものとなる。それは、わたしがこの国の住民に手を伸ばすからだ。──【主】の御告げ──
0613 なぜなら、身分の低い者から高い者まで、みな利得をむさぼり、預言者から祭司に至るまで、みな偽りを行っているからだ。
0614 彼らは、わたしの民の傷を手軽にいやし、平安がないのに、『平安だ、平安だ』と言っている。
0615 彼らは忌みきらうべきことをして、恥を見ただろうか。彼らは少しも恥じず、恥じることも知らない。だから、彼らは、倒れる者の中に倒れ、わたしが彼らを罰する時に、よろめき倒れる」と【主】は仰せられる。
0616 【主】はこう仰せられる。「四つ辻に立って見渡し、昔からの通り道、幸いの道はどこにあるかを尋ね、それを歩んで、あなたがたのいこいを見いだせ。しかし、彼らは『そこを歩まない』と言った。
0617 また、わたしは、あなたがたの上に見張り人を立て、『角笛の音に注意せよ』と言わせたのに、彼らは『注意しない』と言った。
0618 それゆえ、諸国の民よ。聞け。会衆よ。知れ。彼らに何が起こるかを。
0619 この国よ。聞け。見よ。わたしはこの民にわざわいをもたらす。これは彼らのたくらみの実。彼らが、わたしのことばに注意せず、わたしの律法を退けたからだ。
0620 いったい、何のため、シェバから乳香や、遠い国からかおりの良い菖蒲がわたしのところに来るのか。あなたがたの全焼のいけにえは受け入れられず、あなたがたのいけにえはわたしを喜ばせない。」
0621 それゆえ、【主】はこう仰せられる。「見よ。わたしはこの民につまずきを与える。父も子も共にこれにつまずき、隣人も友人も滅びる。」
0622 【主】はこう仰せられる。「見よ。一つの民が北の地から来る。大きな国が地の果てから奮い立つ。
0623 彼らは弓と投げ槍を堅く握り、残忍で、あわれみがない。その声は海のようにとどろく。シオンの娘よ。彼らは馬にまたがり、ひとりのように陣備えをして、あなたを攻める。」
0624 私たちは、そのうわさを聞いて、気力を失い、産婦のような苦しみと苦痛が私たちを捕らえた。
0625 畑に出るな。道を歩くな。敵の剣がそこにあり、恐れが回りにあるからだ。
0626 私の民の娘よ。荒布を身にまとい、灰の中をころび回れ。ひとり子のために苦しみ嘆いて、喪に服せ。たちまち、荒らす者が私たちに襲いかかるからだ。
0627 「わたしはあなたを、わたしの民の中で、ためす者とし、試みる者とした。彼らの行いを知り、これをためせ。」
0628 彼らはみな、かたくなな反逆者、中傷して歩き回り、青銅や鉄のようだ。彼らはみな、堕落した者たちだ。
0629 ふいごで激しく吹いて、鉛を火で溶かす。鉛は溶けた。溶けたが、むだだった。悪いものは除かれなかった。
0630 彼らは廃物の銀と呼ばれている。【主】が彼らを退けたからだ。

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