ヨブ記

3401 エリフは続けて言った。
3402 知恵のある人々よ。私の言い分を聞け。知識のある人々よ。私に耳を傾けよ。
3403 口が食物の味を知るように、耳はことばを聞き分ける。
3404 さあ、私たちは一つの定めを選び取り、私たちの間で何が良いことであるかを見分けよう。
3405 ヨブはかつてこう言った。「私は正しい。神が私の正義を取り去った。
3406 私は自分の正義に反して、まやかしを言えようか。私はそむきの罪を犯していないが、私の矢傷は直らない。」
3407 ヨブのような人がほかにあろうか。彼はあざけりを水のようにのみ、
3408 不法を行う者どもとよく交わり、悪人たちとともに歩んだ。
3409 彼は言った。「神と親しんでも、それは人の役に立たない。」
3410 だから、あなたがた分別のある人々よ。私に聞け。神が悪を行うなど、全能者が不正をするなど、絶対にそういうことはない。
3411 神は、人の行いをその身に報い、人に、それぞれ自分の道を見つけるようにされる。
3412 神は決して悪を行わない。全能者は公義を曲げない。
3413 だれが、この地を神にゆだねたのか。だれが、全世界を神に任せたのか。
3414 もし、神がご自分だけに心を留め、その霊と息をご自分に集められたら、
3415 すべての肉なるものは共に息絶え、人はちりに帰る。
3416 あなたに悟りがあるなら、これを聞け。私の話す声に耳を傾けよ。
3417 いったい、公義を憎む者が治めることができようか。正しく力ある方を、あなたは罪に定めることができようか。
3418 人が王に向かって、「よこしまな者」と言い、高貴な人に向かって、「悪者」と言えるだろうか。
3419 この方は首長たちを、えこひいきせず、貧民よりも上流の人を重んじることはない。なぜなら、彼らはみな、神の御手のわざだから。
3420 彼らはまたたくまに、それも真夜中に死に、民は震えて過ぎ去る。強い者たちも人の手によらないで取り去られる。
3421 神の御目が人の道の上にあり、その歩みをすべて見ているからだ。
3422 不法を行う者どもが身を隠せるような、やみもなく、暗黒もない。
3423 人がさばきのときに神のみもとに出るのに、神は人について、そのほか何も定めておられないからだ。
3424 神は力ある者を取り調べることなく打ち滅ぼし、これに代えて他の者を立てられる。
3425 神は彼らのしたことを知っておられるので、夜、彼らをくつがえされる。こうして彼らは砕かれる。
3426 神は、人々の見ているところで、彼らを、悪者として打たれる。
3427 それは、彼らが神にそむいて従わず、神のすべての道に心を留めなかったからである。
3428 こうして彼らは寄るべのない者の叫びを神の耳に入れるようにし、神は悩める者の叫びを聞き入れられる。
3429 神が黙っておられるとき、だれが神をとがめえよう。神が御顔を隠されるとき、だれが神を認めえよう。一つの国民にも、ひとりの人にも同様だ。
3430 神を敬わない人間が治めないために、民をわなにかける者がいなくなるために。
3431 神に向かってだれが言ったのか。「私は懲らしめを受けました。私はもう罪を犯しません。
3432 私の見ないことをあなたが私に教えてください。私が不正をしたのでしたら、もういたしません」と。
3433 あなたが反対するからといって、神はあなたの願うとおりに報復なさるだろうか。私ではなく、あなたが選ぶがよい。あなたの知っていることを言うがよい。
3434 分別のある人々や、私に聞く、知恵のある人は私に言う。
3435 「ヨブは知識がなくて語る。彼のことばには思慮がない」と。
3436 どうか、ヨブが最後までためされるように。彼は不法者のように言い返しをするから。
3437 彼は、自分の罪にそむきの罪を加え、私たちの間で手を打ち鳴らし、神に対してことば数を多くする。
3501 エリフはさらに続けて言った。
3502 あなたはこのことを正義によると思うのか。「私の義は神からだ」とでも言うのか。
3503 あなたは言っている。「何があなたの役に立つのでしょうか。私が罪を犯さないと、どんな利益がありましょうか」と。
3504 私はあなたと、またあなたとともにいるあなたの友人たちに答えて言おう。
3505 天を仰ぎ見よ。あなたより、はるかに高い雲を見よ。
3506 あなたが罪を犯しても、神に対して何ができよう。あなたのそむきの罪が多くても、あなたは神に何をなしえようか。
3507 あなたが正しくても、あなたは神に何を与ええようか。神は、あなたの手から何を受けられるだろうか。
3508 あなたの悪は、ただ、あなたのような人間に、あなたの正しさは、ただ、人の子に、かかわりを持つだけだ。
3509 人々は、多くのしいたげのために泣き叫び、力ある者の腕のために助けを叫び求める。
3510 しかし、だれも問わない。「私の造り主である神はどこにおられるか。夜には、ほめ歌を与え、
3511 地の獣よりも、むしろ、私たちに教え、空の鳥よりも、むしろ、私たちに知恵を授けてくださる方は」と。
3512 そこでは、彼らが泣き叫んでも答えはない。悪人がおごり高ぶっているからだ。
3513 神は決してむなしい叫びを聞き入れず、全能者はこれに心を留めない。
3514 しかも、あなたは神を見ることができないと言っている。訴えは神の前にある。あなたは神を待て。
3515 しかし今、神は怒って罰しないだろうか。ひどい罪を知らないだろうか。
3516 ヨブはいたずらに口を大きく開き、知識もなく、自分の言い分を述べたてる。
3601 エリフはさらに続けて言った。
3602 しばらく待て。あなたに示そう。まだ、神のために言い分があるからだ。
3603 私は遠くから私の意見を持って来て、私の造り主に義を返そう。
3604 確かに私の言い分は偽りではない。完全な知識を持つ方があなたのそばにいるからだ。
3605 見よ。神は強い。だが、だれをもさげすまない。その理解の力は強い。
3606 神は悪者を生かしてはおかず、しいたげられている者には権利を与えられる。
3607 神は、正しい者から目を離さず、彼らを王たちとともに王座に着け、永遠に座に着かせて、高められる。
3608 もし、彼らが鎖で縛られ、悩みのなわに捕らえられると、
3609 そのとき、神は、彼らのしたことを彼らに告げ、彼らがおごり高ぶったそむきの罪を告げる。
3610 神は彼らの耳を開いて戒め、悪から立ち返るように命じる。
3611 もし彼らが聞き入れて仕えるなら、彼らはその日々をしあわせのうちに全うし、その年々を楽しく過ごす。
3612 しかし、もし聞き入れなければ、彼らは槍によって滅び、知識を持たないで息絶える。
3613 心で神を敬わない者は、怒りをたくわえ、神が彼らを縛るとき、彼らは助けを求めて叫ばない。
3614 彼らのたましいは若くして死に、そのいのちは腐れている。
3615 神は悩んでいる者をその悩みの中で助け出し、そのしいたげの中で彼らの耳を開かれる。
3616 まことに、神はあなたを苦しみの中から誘い出し、束縛のない広い所に導き、あなたの食卓には、あぶらぎった食物が備えられる。
3617 しかし、あなたには悪者の受けるさばきが満ちている。それでさばきと公義があなたをつかまえる。
3618 だから、あなたは憤って、懲らしめに誘い込まれないようにせよ。身代金が多いからといって、あなたはそれに惑わされないようにせよ。
3619 あなたの叫びが並べたてられても、力の限りが尽くされても、それが役に立つだろうか。
3620 国々の民が取り去られる夜をあえぎ求めてはならない。
3621 悪に向かわないように注意せよ。あなたは悩みよりも、これを選んだのだから。
3622 見よ。神は力にすぐれておられる。神のような教師が、だれかいようか。
3623 だれが、神にその道を指図したのか。だれが、「あなたは不正をした」と言ったのか。
3624 人々がほめ歌った神のみわざを覚えて賛美せよ。
3625 すべての人がこれを見、人が遠くからこれをながめる。
3626 見よ。神はいと高く、私たちには知ることができない。その年の数も測り知ることができない。
3627 神は水のしずくを引き上げ、それが神の霧となって雨をしたたらせる。
3628 雨雲がこれを降らせ、人の上に豊かに注ぐ。
3629 いったい、だれが雲の広がりと、その幕屋のとどろきとを悟りえよう。
3630 見よ。神はご自分の光をその上にまき散らし、また、海の底をおおう。
3631 神はこれらによって民をさばき、食物を豊かに与える。
3632 神はいなずまを両手に包み、これに命じて的を打たせる。
3633 その雷鳴は、神について告げ、家畜もまた、その起こることを告げる。

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