ヨブ記

3101 私は自分の目と契約を結んだ。どうしておとめに目を留めよう。
3102 神が上から分けてくださる分け前は何か。全能者が高い所から下さる相続財産は何か。
3103 不正をする者にはわざわいが、不法を行う者には災難が来るのではないか。
3104 神は私の道を見られないのだろうか。私の歩みをことごとく数えられないのだろうか。
3105 もし私がうそとともに歩み、この足が欺きに急いだのなら、
3106 正しいはかりで私を量るがよい。そうすれば神に私の潔白がわかるだろう。
3107 もし、私の歩みが道からそれ、私の心が自分の目に従って歩み、私の手によごれがついていたなら、
3108 私が種を蒔いて他の人が食べるがよい。私の作物は根こぎにされるがよい。
3109 もしも、私の心が女に惑わされ、隣人の門で待ち伏せしたことがあったなら、
3110 私の妻が他人のために粉をひいてもよい。また、他人が彼女と寝てもよい。
3111 これは恥ずべき行い、裁判にかけて罰せられる罪だ。
3112 実に、それは滅びの淵まで焼き尽くす火だ。私の収穫をことごとく根こぎにする。
3113 私のしもべや、はしためが、私と争ったとき、もし、私が彼らの言い分をないがしろにしたことがあるなら、
3114 神が立たれるとき、私はどうすればよいか。また、神がお調べになるとき、何と答えたらよいか。
3115 私を胎内で造られた方は、彼らをも造られたのではないか。私たちを母の胎内に形造られた方は、ただひとりではないか。
3116 もし、私が寄るべのない者の望みを退け、やもめの目を衰え果てさせ、
3117 私ひとりだけで食物を食べて、みなしごにそれを食べさせなかったのなら、
3118 ──私の若いときから、彼は私を父のようにして育ち、私は、母の胎にいたときから、彼女を導いた──
3119 もし、私が、着る物がなくて死にかかっている者や、身をおおう物を持っていない貧しい者を見たとき、
3120 彼の腰が私にあいさつをせず、私の子羊の毛でそれが暖められなかったのなら、
3121 あるいは、私を助ける者が門のところにいるのを見ながら、みなしごに向かって私の手を振り上げたことがあるなら、
3122 私の肩の骨が肩から落ち、私の腕がつけ根から折れてもよい。
3123 神からのわざわいは私をおびえさせ、その威厳のゆえに、私は何もすることができないからだ。
3124 もし、私が金をおのれの頼みとし、黄金に向かって、私の拠り頼むもの、と言ったことがあるなら、
3125 あるいは、私の富が多いので喜び、私の手が多くの物を得たので、喜んだことがあるなら、
3126 あるいは、輝く日の光を見、照りながら動く月を見て、
3127 私の心がひそかに惑わされ、手をもって口づけを投げかけたことがあるなら、
3128 これもまた裁判にかけて罰せられる罪だ。私が上なる神を否んだためだ。
3129 あるいは、私を憎む者の衰えているのを私が見て喜び、彼にわざわいが下ったとき、喜び勇んだことがあろうか。
3130 私は自分の口に罪を犯させなかった。のろって彼のいのちを求めようともしなかった。
3131 いったい、私の天幕の人々で、「だれか、彼の肉に飽き足りなかった者はいないか」と言わなかったことがあろうか。
3132 異国人は外で夜を過ごさず、私は戸口を通りに向けてあけている。
3133 あるいは、私がアダムのように、自分のそむきの罪をおおい隠し、自分の咎を胸の中に秘めたことがあろうか。
3134 私が群集の騒ぎにおびえ、一族のさげすみを恐れて黙り、門を出なかったことがあろうか。
3135 だれか私に聞いてくれる者はないものか。見よ。私を確認してくださる方、全能者が私に答えてくださる。私を訴える者が書いた告訴状があれば、
3136 私はそれを肩に負い、冠のように、それをこの身に結びつけ、
3137 私の歩みの数をこの方に告げ、君主のようにして近づきたい。
3138 もし、私の土地が私に向かって叫び、そのうねが共に泣くことがあるなら、
3139 あるいは、私が金を払わないでその産物を食べ、その持ち主のいのちを失わせたことがあるなら、
3140 小麦の代わりにいばらが生え、大麦の代わりに雑草がはびこるように。ヨブのことばは終わった。
3201 この三人の者はヨブに答えるのをやめた。それはヨブが自分は正しいと思っていたからである。
3202 すると、ラム族のブズ人、バラクエルの子エリフが怒りを燃やした。彼がヨブに向かって怒りを燃やしたのは、ヨブが神よりもむしろ自分自身を義としたからである。
3203 彼はまた、その三人の友に向かっても怒りを燃やした。彼らがヨブを罪ある者としながら、言い返すことができなかったからである。
3204 エリフはヨブに語りかけようと待っていた。彼らが自分よりも年長だったからである。
3205 しかし、エリフは三人の者の口に答えがないのを見て、怒りを燃やした。
3206 ブズ人、バラクエルの子エリフは答えて言った。私は若く、あなたがたは年寄りだ。だから、わきに控えて、遠慮し、あなたがたに私の意見を述べなかった。
3207 私は思った。「日を重ねた者が語り、年の多い者が知恵を教える」と。
3208 しかし、人の中には確かに霊がある。全能者の息が人に悟りを与える。
3209 年長者が知恵深いわけではない。老人が道理をわきまえるわけでもない。
3210 だから、私は言う。「私の言うことを聞いてくれ。私も、また私の意見を述べよう。」
3211 今まで私はあなたがたの言うことに期待し、あなたがたの言い分を調べ上げるまで、あなたがたの意見に耳を傾けていた。
3212 私はあなたがたに注意を払っていたのに、ヨブに罪を認めさせる者はなく、あなたがたのうちで彼のことばに答える者もいない。
3213 だが、おそらくあなたがたは言おう。「私たちは知恵を見いだした。人ではなく、神が彼を吹き払った」と。
3214 彼はまだ私に向かってことばを並べたててはいない。私はあなたがたのような言い方では彼に答えまい。
3215 彼らはあきれて、もう答えない。彼らの言うことばもなくなった。
3216 彼らが語らず、そのままじっと答えないからといって、私は待っていなければならないだろうか。
3217 私は私で自分の言い分を言い返し、私の意見を述べてみよう。
3218 私にはことばがあふれており、一つの霊が私を圧迫している。私の腹を。
3219 今、私の腹は抜け口のないぶどう酒のようだ。新しいぶどう酒の皮袋のように、今にも張り裂けようとしている。
3220 私は語って、気分を晴らしたい。くちびるを開いて答えたい。
3221 私はだれをもひいきしない。どんな人にもへつらわない。
3222 へつらうことを知らないから。そうでなければ、私を造った方は今すぐ、私を奪い去ろう。
3301 そこでヨブよ。どうか、私の言い分を聞いてほしい。私のすべてのことばに耳を傾けてほしい。
3302 さあ、私は口を開き、私の舌はこの口の中で語ろう。
3303 私の言うことは真心からだ。私のくちびるは、きよく知識を語る。
3304 神の霊が私を造り、全能者の息が私にいのちを与える。
3305 あなたにできれば、私に返事をし、ことばを並べたて、私の前に立ってみよ。
3306 実に、神にとって、私はあなたと同様だ。私もまた粘土で形造られた。
3307 見よ。私のおどしも、あなたをおびえさせない。私が強く圧しても、あなたには重くない。
3308 確かにあなたは、この耳に言った。私はあなたの話す声を聞いた。
3309 「私はきよく、そむきの罪を犯さなかった。私は純潔で、よこしまなことがない。
3310 それなのに、神は私を攻める口実を見つけ、私を敵のようにみなされる。
3311 神は私の足にかせをはめ、私の歩みをことごとく見張る。」
3312 聞け。私はあなたに答える。このことであなたは正しくない。神は人よりも偉大だからである。
3313 なぜ、あなたは神と言い争うのか。自分のことばに神がいちいち答えてくださらないといって。
3314 神はある方法で語られ、また、ほかの方法で語られるが、人はそれに気づかない。
3315 夜の幻と、夢の中で、または深い眠りが人々を襲うとき、あるいは寝床の上でまどろむとき、
3316 そのとき、神はその人たちの耳を開き、このような恐ろしいかたちで彼らをおびえさせ、
3317 人にその悪いわざを取り除かせ、人間から高ぶりを離れさせる。
3318 神は人のたましいが、よみの穴に、入らないようにし、そのいのちが槍で滅びないようにされる。
3319 あるいは、人を床の上で痛みによって責め、その骨の多くをしびれさせる。
3320 彼のいのちは食物をいとい、そのたましいはうまい物をいとう。
3321 その肉は衰え果てて見えなくなり、見えなかった骨があらわになる。
3322 そのたましいはよみの穴に近づき、そのいのちは殺す者たちに近づく。
3323 もし彼のそばに、ひとりの御使い、すなわち千人にひとりの代言者がおり、それが人に代わってその正しさを告げてくれるなら、
3324 神は彼をあわれんで仰せられる。「彼を救って、よみの穴に下って行かないようにせよ。わたしは身代金を得た。」
3325 彼の肉は幼子のように、まるまる太り、彼は青年のころに返る。
3326 彼が神に祈ると、彼は受け入れられる。彼は喜びをもって御顔を見、神はその人に彼の義を報いてくださる。
3327 彼は人々を見つめて言う。「私は罪を犯し、正しい事を曲げた。しかし、神は私のようではなかった。
3328 神は私のたましいを贖ってよみの穴に下らせず、私のいのちは光を見る」と。
3329 見よ。神はこれらすべてのことを、二度も三度も人に行われ、
3330 人のたましいをよみの穴から引き戻し、いのちの光で照らされる。
3331 耳を貸せ。ヨブ。私に聞け。黙れ。私が語ろう。
3332 もし、言い分があるならば、私に言い返せ。言ってみよ。あなたの正しいことを示してほしいからだ。
3333 そうでなければ私に聞け。黙れ。あなたに知恵を教えよう。

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