1901 そこでヨブは答えて言った。
1902 いつまで、あなたがたは私のたましいを悩まし、そんな論法で私を砕くのか。
1903 もう、十度もあなたがたは私に恥ずかしい思いをさせ、恥知らずにも私をいじめる。
1904 もし、私がほんとうにあやまって罪を犯したとしても、私のあやまって犯した罪が私のうちにとどまっているだろうか。
1905 あなたがたがほんとうに私に向かって高ぶり、私の受けたそしりのことで、私を責めるのなら、
1906 いま知れ。「神が私を迷わせ、神の網で私を取り囲まれた」ことを。
1907 見よ。私が、「これは暴虐だ」と叫んでも答えはなく、助けを求めて叫んでも、それは正されない。
1908 神が私の道をふさがれたので、私は過ぎ行くことができない。私の通り道にやみを置いておられる。
1909 神は私の栄光を私からはぎ取り、私の頭から冠を取り去られた。
1910 神が四方から私を打ち倒すので、私は去って行く。神は私の望みを木のように根こそぎにする。
1911 神は私に向かって怒りを燃やし、私をご自分の敵のようにみなされる。
1912 その軍勢は一つとなって進んで来、私に向かって彼らの道を築き上げ、私の天幕の回りに陣を敷く。
1913 神は私の兄弟たちを私から遠ざけた。私の知人は全く私から離れて行った。
1914 私の親族は来なくなり、私の親しい友は私を忘れた。
1915 私の家に寄宿している者も、私のはしためたちも、私を他国人のようにみなし、私は彼らの目には外国人のようになった。
1916 私が自分のしもべを呼んでも、彼は返事もしない。私は私の口で彼に請わなければならない。
1917 私の息は私の妻にいやがられ、私の身内の者らにきらわれる。
1918 小僧っ子までが私をさげすみ、私が起き上がると、私に言い逆らう。
1919 私の親しい仲間はみな、私を忌みきらい、私の愛した人々も私にそむいた。
1920 私の骨は皮と肉とにくっついてしまい、私はただ歯の皮だけでのがれた。
1921 あなたがた、私の友よ。私をあわれめ、私をあわれめ。神の御手が私を打ったからだ。
1922 なぜ、あなたがたは神のように、私を追いつめ、私の肉で満足しないのか。
1923 ああ、今、できれば、私のことばが書き留められればよいのに。ああ、書き物に刻まれればよいのに。
1924 鉄の筆と鉛とによって、いつまでも岩に刻みつけられたい。
1925 私は知っている。私を贖う方は生きておられ、後の日に、ちりの上に立たれることを。
1926 私の皮が、このようにはぎとられて後、私は、私の肉から神を見る。
1927 この方を私は自分自身で見る。私の目がこれを見る。ほかの者の目ではない。私の内なる思いは私のうちで絶え入るばかりだ。
1928 もし、あなたがたが、事の原因を私のうちに見つけて、「彼をどのようにして追いつめようか」と言うなら、
1929 あなたがたは剣を恐れよ。その剣は刑罰の憤りだから。これによって、あなたがたはさばきのあることを知るだろう。
2001 そこでナアマ人ツォファルは答えて言った。
2002 それで、いらだつ思いが私に答えを促し、そのため、私は心あせる。
2003 私の侮辱となる訓戒を聞いて、私の悟りの霊が私に答えさせる。
2004 あなたはこのことを知っているはずだ。昔から、地の上に人が置かれてから、
2005 悪者の喜びは短く、神を敬わない者の楽しみはつかのまだ。
2006 たとい彼の高ぶりが天まで上り、その頭が雲まで及んでも、
2007 彼は自分の糞のようにとこしえに滅びる。彼を見たことのある者たちは言う。彼はどこにいるのかと。
2008 彼は夢のように飛び去り、だれにも彼は見つけられない。彼は夜の幻のように追い払われ、
2009 彼を見慣れていた目は再び彼を見ず、彼のいた所はもはや彼を認めない。
2010 彼の子らは貧民たちにあわれみを請い、彼の手は自分の財産を取り戻さなければならない。
2011 彼の骨が若さに満ちても、それも彼とともにちりに横たわる。
2012 たとい悪が彼の口に甘く、彼がそれを舌の裏に隠しても、
2013 あるいは、彼がこれを惜しんで、捨てず、その口の中にとどめていても、
2014 彼の食べた物は、彼の腹の中で変わり、彼の中でコブラの毒となる。
2015 彼は富をのみこんでも、またこれを吐き出す。神がこれを彼の腹から追い払われる。
2016 彼はコブラの毒を吸い、まむしの舌が彼を殺す。
2017 彼は川を見ることがない。すなわち、蜜と凝乳の流れる川を見ることがない。
2018 彼は骨折って得たものを取り戻しても、それをのみこめない。商いで得た富によっても楽しめない。
2019 彼が寄るべのない者を踏みにじって見捨て、自分で建てなかった家をかすめたからだ。
2020 彼の腹は足ることを知らないので、欲しがっている物は何一つ、彼はのがさない。
2021 彼のむさぼりからのがれる物は一つもない。だから、彼の繁栄は続かない。
2022 満ち足りているときに、彼は貧乏になって苦しみ、苦しむ者の手がことごとく彼に押し寄せる。
2023 彼が腹を満たそうとすると、神はその燃える怒りを彼の上に送り、憤りを彼の上に降らす。
2024 彼は鉄の武器を免れても、青銅の弓が彼を射通す。
2025 彼がそれを引き抜くと、それは彼の背中から出る。きらめく矢じりが腹から出て、恐れが彼を襲う。
2026 すべてのやみが彼の宝として隠され、人が吹きおこしたのではない火が彼を焼き尽くし、彼の天幕に生き残っているものをもそこなってしまう。
2027 天は彼の罪をあらわし、地は彼に逆らって立つ。
2028 彼の家の作物はさらわれ、御怒りの日に消えうせる。
2029 これが悪者の、神からの分け前、神によって定められた彼の相続財産である。
2101 ヨブは答えて言った。
2102 あなたがたは、私の言い分をよく聞け。これをあなたがたの私への慰めとしてくれ。
2103 まず、私が語るのを許してくれ。私が語って後、あなたはあざけってもよい。
2104 私の不平は人に向かってであろうか。なぜ、私がいらだってはならないのか。
2105 私のほうを見て驚け。そして手を口に当てよ。
2106 私は思い出すとおびえ、おののきが私の肉につかみかかる。
2107 なぜ悪者どもが生きながらえ、年をとっても、なお力を増すのか。
2108 彼らのすえは彼らとともに堅く立ち、その子孫は彼らの前に堅く立つ。
2109 彼らの家は平和で恐れがなく、神の杖は彼らの上に下されない。
2110 その牛は、はらませて、失敗することがなく、その雌牛は、子を産んで、仕損じがない。
2111 彼らは自分の幼子たちを羊の群れのように自由にさせ、彼らの子どもたちはとびはねる。
2112 彼らはタンバリンと立琴に合わせて歌い、笛の音で楽しむ。
2113 彼らはしあわせのうちに寿命を全うし、すぐによみに下る。
2114 しかし、彼らは神に向かって言う。「私たちから離れよ。私たちは、あなたの道を知りたくない。
2115 全能者が何者なので、私たちは彼に仕えなければならないのか。私たちが彼に祈って、どんな利益があるのか」と。
2116 見よ。彼らの繁栄はその手の中にない。悪者のはかりごとは、私と何の関係もない。
2117 幾たび、悪者のともしびが消え、わざわいが彼らの上に下り、神が怒って彼らに滅びを分け与えることか。
2118 彼らは、風の前のわらのようではないか。つむじ風に吹き去られるもみがらのようではないか。
2119 神はそのような者の子らのために、彼のわざわいをたくわえておられるのか。彼自身が報いを受けて思い知らなければならない。
2120 彼の目が自分の滅びを見、彼が全能者の憤りをのまなければならない。
2121 彼の日の数が短く定められているのに、自分の後の家のことに何の望みがあろうか。
2122 彼は神に知識を教えようとするのか。高い所におられる方がさばきを下すのだ。
2123 ある者は元気盛りの時に、全く平穏のうちに死ぬだろう。
2124 彼のからだは脂肪で満ち、その骨の髄は潤っている。
2125 ある者は苦悩のうちに死に、何の幸いも味わうことがない。
2126 彼らは共にちりに伏し、うじが彼らをおおう。
2127 ああ、私はあなたがたの計画を知っている。私をそこなおうとするたくらみを。
2128 あなたがたは言う。「権門の家はどこにあるか。悪者の住んだ天幕はどこにあるか」と。
2129 あなたがたは道行く人に尋ねなかったか。彼らのあかしをよく調べないのか。
2130 「悪人はわざわいの日を免れ、激しい怒りの日から連れ出される」という。
2131 だれが彼に面と向かって彼の道を告げえようか。だれが彼のなしたことを彼に報いえようか。
2132 彼は墓に運ばれ、その塚の上には見張りが立つ。
2133 谷の土くれは彼に快く、すべての人が彼のあとについて行く。彼より先に行った者も数えきれない。
2134 どうしてあなたがたは、私を慰めようとするのか。むだなことだ。あなたがたの答えることは、ただ不信実だ。