ヨブ記

2201 テマン人エリファズが答えて言った。
2202 人は神の役に立つことができようか。賢い人さえ、ただ自分自身の役に立つだけだ。
2203 あなたが正しくても、それが全能者に何の喜びであろうか。あなたの道が潔白であっても、それが何の益になろう。
2204 あなたとともに、さばきの座に、入って行かれ、あなたを責められるのは、あなたが神を恐れているためか。
2205 いや、それはあなたの悪が大きくて、あなたの不義が果てしないからではないか。
2206 あなたは理由もないのにあなたの兄弟から質を取り、裸の者から着物をはぎ取り、
2207 疲れている者に水も飲ませず、飢えている者に食物を拒んだからだ。
2208 土地を持っている有力者のように、そこに住む有名人のように、
2209 あなたはやもめを素手で去らせ、みなしごの腕を折った。
2210 それでわながあなたを取り巻き、恐れが、にわかにあなたを脅かす。
2211 あるいは、やみがあって、あなたは見ることもできず、みなぎる水があなたをおおう。
2212 神は天の高きにおられるではないか。見よ、星の頂を。それはなんと高いことか。
2213 あなたは言う。「神に何がわかろうか。黒雲を通してさばくことができようか。
2214 濃い雲が神をおおっているので、神は見ることができない。神は天の回りを歩き回るだけだ」と。
2215 あなたは悪人が歩いたあの昔からの道を守っていこうとするのか。
2216 彼らは時がまだ来ないうちに取り去られ、彼らの土台は流れに押し流された。
2217 彼らは神に向かって言った。「私たちから離れよ。全能者が私たちに何ができようか」と。
2218 しかし、神は彼らの家を良い物で満たされた。だが、悪者のはかりごとは私と何の関係もない。
2219 正しい者は見て喜び、罪のない者は彼らをあざけって言う。
2220 「まことに、私たちに立ち向かった者は滅ぼされ、彼らの残した物は火が焼き尽くした。」
2221 さあ、あなたは神と和らぎ、平和を得よ。そうすればあなたに幸いが来よう。
2222 神の御口からおしえを受け、そのみことばを心にとどめよ。
2223 あなたがもし全能者に立ち返るなら、あなたは再び立ち直る。あなたは自分の天幕から不正を遠ざけ、
2224 宝をちりの上に置き、オフィルの金を川の小石の間に置け。
2225 そうすれば全能者はあなたの黄金となり、尊い銀があなたのものとなる。
2226 そのとき、あなたは全能者をあなたの喜びとし、神に向かってあなたの顔を上げる。
2227 あなたが神に祈れば、神はあなたに聞き、あなたは自分の誓願を果たせよう。
2228 あなたが事を決めると、それは成り、あなたの道の上には光が輝く。
2229 あなたが低くされると、あなたは高められたと言おう。神はへりくだる者を救われるからだ。
2230 神は罪ある者さえ救う。その人はあなたの手のきよいことによって救われる。
2301 ヨブは答えて言った。
2302 きょうもまた、私はそむく心でうめき、私の手は自分の嘆きのために重い。
2303 ああ、できれば、どこで神に会えるかを知り、その御座にまで行きたい。
2304 私は御前に訴えを並べたて、ことばの限り討論したい。
2305 私は神が答えることばを知り、私に言われることが何であるかを悟りたい。
2306 神は力強く私と争われるだろうか。いや、むしろ私に心を留めてくださろう。
2307 そこでは正しい人が神と論じ合おう。そうすれば私は、とこしえにさばきを免れる。
2308 ああ、私が前へ進んでも、神はおられず、うしろに行っても、神を認めることができない。
2309 左に向かって行っても、私は神を見ず、右に向きを変えても、私は会うことができない。
2310 しかし、神は、私の行く道を知っておられる。神は私を調べられる。私は金のように、出て来る。
2311 私の足は神の歩みにつき従い、神の道を守って、それなかった。
2312 私は神のくちびるの命令から離れず、私の定めよりも、御口のことばをたくわえた。
2313 しかし、みこころは一つである。だれがそれを翻すことができようか。神はこころの欲するところを行われる。
2314 神は、私について定めたことを、成し遂げられるからだ。このような多くの定めが神のうちにある。
2315 だから、私は神の前でおびえ、これを思って、神を恐れているのだ。
2316 神は私の心を弱くし、全能者は私をおびえさせた。
2317 私はやみによって消されず、彼が、暗黒を私の前からなくされたからだ。
2401 なぜ、全能者によって時が隠されていないのに、神を知る者たちがその日を見ないのか。
2402 ある者は地境を動かし、群れを奪い取ってこれを飼い、
2403 みなしごのろばを連れ去り、やもめの牛を質に取り、
2404 貧しい者を道から押しのける。その地の哀れな人々は、共に身を隠す。
2405 見よ。荒野の野ろばを。彼らは、出て行き、荒れた地で獲物を求めて捜し回り、自分の子らのためにえさを求める。
2406 飼葉を畑で刈り取り、悪者のぶどう畑をかすめる。
2407 彼らは着る物もなく、裸で夜を明かし、寒さの中でも身をおおう物がない。
2408 山のあらしでずぶぬれになり、避け所もなく、岩を抱く。
2409 彼らはみなしごを乳房からもぎ取り、貧しい者の持ち物を質に取る。
2410 彼らは着る物もなく、裸で歩き、飢えながら麦束をになう。
2411 その植え込みの間で油をしぼり、酒ぶねを踏みながら、なお渇く。
2412 人の住む町からうめき声が起こり、傷ついた者のたましいは助けを求めて叫ぶ。しかし、神はその愚痴に心を留められない。
2413 これらの者は光に反逆する者で、光の道を認めず、また、その通り道にとどまらない。
2414 人殺しは、夜明けに起き上がり、哀れな者や貧しい者を殺し、夜には盗人のようになる。
2415 姦通する者の目は夕暮れを待ちもうけ、「私に気づく目はない」と言い、その顔におおう物を当てる。
2416 彼は暗くなってから、家々に侵入する。昼間は閉じこもって光を知らない。
2417 すべて彼にとっては暗黒が朝である。彼は暗黒の恐怖と親しいからだ。
2418 彼は水の面をすばやく過ぎ去り、彼の割り当ての地は国の中でのろわれる。彼はぶどう畑の道のほうに向かわない。
2419 ひでりと暑さは雪の水を奪い、よみは罪を犯した者を奪う。
2420 母の胎は彼を忘れ、うじは彼を好んで食べ、彼はもう思い出されない。不正な者は木のように折られてしまう。
2421 彼は子を産まない不妊の女を食いものにし、やもめによくしてやらない。
2422 しかし、神は力をもって暴虐な者たちを生きのびるようにされる。彼はいのちがあるとは信じられないときにも立ち上がる。
2423 神が彼に安全を与える。それで、彼は休むことができる。神の目は彼らの道の上に注がれる。
2424 彼らはしばらくの間、高められるが、消えうせる。彼らは低くされ、ほかのすべての者と同じように刈り集められる。麦の穂先のように枯れてしまう。
2425 今そうでないからといって、だれが私をまやかし者だと言えよう。だれが私のことばをたわごとにしようとするのか。

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