ヨブ記

1601 ヨブは答えて言った。
1602 そのようなことを、私は何度も聞いた。あなたがたはみな、煩わしい慰め手だ。
1603 むなしいことばに終わりがあろうか。あなたは何に興奮して答えるのか。
1604 私もまた、あなたがたのように語ることができる。もし、あなたがたが私の立場にあったなら、私はことばを連ねてあなたがたを攻撃し、あなたがたに向かって、頭を振ったことだろう。
1605 私は口先だけであなたがたを強くし、私のくちびるでの慰めをやめなかったことだろう。
1606 たとい、私が語っても、私の痛みは押さえられない。たとい、私が忍んでも、どれだけ私からそれが去るだろう。
1607 まことに神は今、私を疲れさせた。あなたは私の仲間の者をことごとく荒らされました。
1608 あなたは私を、つかみました。私のやせ衰えた姿が、証人となり、私に向かって立ち、面と向かって答えをします。
1609 神は怒って私を引き裂き、私を攻めたて、私に向かって歯ぎしりした。私の敵は私に向かって目をぎらつかせる。
1610 彼らは私に向かって口を大きくあけ、そしって私の頬を打ち、相集まって私を攻める。
1611 神は私を小僧っ子に渡し、悪者の手に投げ込まれる。
1612 私は安らかな身であったが、神は私を打ち砕き、私の首をつかまえて粉々にし、私を立ててご自分の的とされた。
1613 その射手たちは私を巡り囲み、神は私の内臓を容赦なく射抜き、私の胆汁を地に流した。
1614 神は私を打ち破って、破れに破れを加え、勇士のように私に向かって馳せかかる。
1615 私は荒布をはだに縫いつけ、私の角をちりの中に突き刺した。
1616 私の顔は泣いて赤くなり、私のまぶたには死の陰がある。
1617 しかし、私の手には暴虐がなく、私の祈りはきよい。
1618 地よ。私の血をおおうな。私の叫びに休み場所を与えるな。
1619 今でも天には、私の証人がおられます。私を保証してくださる方は高い所におられます。
1620 私の友は私をあざけります。しかし、私の目は神に向かって涙を流します。
1621 その方が、人のために神にとりなしをしてくださいますように。人の子がその友のために。
1622 数年もたてば、私は帰らぬ旅路につくからです。
1701 私の霊は乱れ、私の日は尽き、私のものは墓場だけ。
1702 しかも、あざける者らが、私とともにおり、私の目は彼らの敵意の中で夜を過ごす。
1703 どうか、私を保証する者をあなたのそばに置いてください。ほかにだれか誓ってくれる者がありましょうか。
1704 あなたが彼らの心を閉じて悟ることがないようにされたからです。それゆえ、あなたは彼らを高められないでしょう。
1705 分け前を得るために友の告げ口をする者、その子らの目は衰え果てる。
1706 神は私を民の物笑いとされた。私は顔につばきをかけられる者となった。
1707 私の目は悲しみのためにかすみ、私のからだは影のようだ。
1708 正しい者はこのことに驚き、罪のない者は神を敬わない者に向かって憤る。
1709 義人は自分の道を保ち、手のきよい人は力を増し加える。
1710 だが、あなたがたはみな、帰って来るがよい。私はあなたがたの中にひとりの知恵のある者も見いだすまい。
1711 私の日は過ぎ去り、私の企て、私の心に抱いたことも破れ去った。
1712 「夜は昼に変えられ、やみから光が近づく」と言うが、
1713 もし私が、よみを私の住みかとして望み、やみに私の寝床をのべ、
1714 その穴に向かって、「おまえは私の父だ」と言い、うじに向かって、「私の母、私の姉妹」と言うのなら、
1715 私の望みはいったいどこにあるのか。だれが、私の望みを見つけよう。
1716 よみの深みに下っても、あるいは、共にちりの上に降りて行っても。
1801 そこでシュアハ人ビルダデが答えて言った。
1802 いつ、あなたがたはその話にけりをつけるのか。まず悟れ。それから私たちは語り合おう。
1803 なぜ、私たちは獣のようにみなされるのか。なぜ、あなたがたの目には汚れて見えるのか。
1804 怒って自分自身を引き裂く者よ。あなたのために地が見捨てられようか。岩がその所から移されようか。
1805 悪者どもの光は消え、その火の炎も輝かない。
1806 彼の天幕のうちでは、光は暗くなり、彼を照らすともしびも消える。
1807 彼の力強い歩みはせばめられ、おのれのはかりごとが彼を投げ倒す。
1808 彼は自分の足で網にかかる。落とし穴の上を歩むからだ。
1809 わなは彼のかかとを捕らえ、しかけ網は彼をつかまえる。
1810 地には彼のための輪繩が、その通り道には彼のためのわなが隠されている。
1811 恐怖が回りから彼を脅かし、彼の足を追い立てる。
1812 彼の精力は飢え、わざわいが彼をつまずかせようとしている。
1813 彼の皮膚を食らおうとしている。死の初子が彼のからだを食らおうとしている。
1814 彼はその拠り頼む天幕から引き抜かれ、恐怖の王のもとへ追いやられる。
1815 彼の天幕には、彼のものではない者が住み、硫黄が彼の住まいの上にまき散らされる。
1816 下ではその根が枯れ、上ではその枝がしなびる。
1817 彼についての記憶は地から消えうせ、彼の名はちまたから消える。
1818 彼は光からやみに追いやられ、世から追い出される。
1819 彼には自分の民の中に親類縁者がなくなり、その住みかにはひとりの生存者もなくなる。
1820 西に住む者は彼の日について驚き、東に住む者は恐怖に取りつかれる。
1821 不正をする者の住みかは、まことに、このようであり、これが神を知らない者の住まいである。

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