1301 見よ。私の目はこれをことごとく見た。私の耳はこれを聞いて悟った。
1302 あなたがたの知っていることは私も知っている。私はあなたがたに劣っていない。
1303 だが、私は全能者に語りかけ、神と論じ合ってみたい。
1304 しかし、あなたがたは偽りをでっちあげる者、あなたがたはみな、能なしの医者だ。
1305 ああ、あなたがたが全く黙っていたら、それがあなたがたの知恵であったろうに。
1306 さあ、私の論ずるところを聞き、私のくちびるの訴えに耳を貸せ。
1307 あなたがたは神の代わりに、なんと、不正を言うのか。神の代わりに、欺きを語るのか。
1308 神の顔を、あなたがたは立てるつもりなのか。神の代わりに言い争うのか。
1309 神があなたがたを調べても、大丈夫か。あなたがたは、人が人を欺くように、神を欺こうとするのか。
1310 もし、あなたがたが隠れて自分の顔を立てようとするなら、神は必ずあなたがたを責める。
1311 神の威厳はあなたがたを震え上がらせないだろうか。その恐れがあなたがたを襲わないだろうか。
1312 あなたがたの格言は灰のことわざだ。あなたがたの盾は粘土の盾だ。
1313 黙れ。私にかかわり合うな。この私が話そう。何が私にふりかかってもかまわない。
1314 それゆえ、私は自分の肉を自分の歯にのせ、私のいのちを私の手に置こう。
1315 見よ。神が私を殺しても、私は神を待ち望み、なおも、私の道を神の前に主張しよう。
1316 神もまた、私の救いとなってくださる。神を敬わない者は、神の前に出ることができないからだ。
1317 あなたがたは私の言い分をよく聞け。私の述べることをあなたがたの耳に入れよ。
1318 今、私は訴えを並べたてる。私が義とされることを私は知っている。
1319 私と論争する者はいったいだれだ。もしあれば、そのとき、私は黙って息絶えよう。
1320 ただ二つの事を私にしないでください。そうすれば、私は御顔を避けて隠れません。
1321 あなたの手を私の上から遠ざけてください。あなたの恐ろしさで私をおびえさせないでください。
1322 呼んでください。私は答えます。あるいは、私に言わせ、あなたが私に答えてください。
1323 私の不義と罪とはどれほどでしょうか。私のそむきの罪と咎とを私に知らせてください。
1324 なぜ、あなたは御顔を隠し、私をあなたの敵とみなされるのですか。
1325 あなたは吹き散らされた木の葉をおどし、かわいたわらを追われるのですか。
1326 実にあなたは私に対してひどい宣告を書きたて、私の若い時の咎を私に受け継がせようとされます。
1327 あなたは私の足にかせをはめ、私の歩く小道をことごとく見張り、私の足跡にしるしをつけられます。
1328 そのような者は、腐った物のように朽ち、しみが食い尽くす着物のようになります。
1401 女から生まれた人間は、日が短く、心がかき乱されることでいっぱいです。
1402 花のように咲き出ては切り取られ、影のように飛び去ってとどまりません。
1403 あなたはこのような者にさえ、あなたの目を開き、私をご自身とともに、さばきの座に連れて行かれるのですか。
1404 だれが、きよい物を汚れた物から出せましょう。だれひとり、できません。
1405 もし、彼の日数が限られ、その月の数もあなたが決めておられ、越えることのできない限界を、あなたが定めておられるなら、
1406 彼から目をそらして、かまわないでください。そうすれば、彼は日雇い人のように自分の日を楽しむでしょう。
1407 木には望みがある。たとい切られても、また芽を出し、その若枝は絶えることがない。
1408 たとい、その根が地中で老い、その根株が土の中で枯れても、
1409 水分に出会うと芽をふき、苗木のように枝を出す。
1410 しかし、人間は死ぬと、倒れたきりだ。人は、息絶えると、どこにいるか。
1411 水は海から消え去り、川は干上がり、かれる。
1412 人は伏して起き上がらず、天がなくなるまで目ざめず、また、その眠りから起きない。
1413 ああ、あなたが私をよみに隠し、あなたの怒りが過ぎ去るまで私を潜ませ、私のために時を定め、私を覚えてくださればよいのに。
1414 人が死ぬと、生き返るでしょうか。私の苦役の日の限り、私の代わりの者が来るまで待ちましょう。
1415 あなたが呼んでくだされば、私は答えます。あなたはご自分の手で造られたものを慕っておられるでしょう。
1416 今、あなたは私の歩みを数えておられますが、私の罪に目を留めず、
1417 私のそむきの罪を袋の中に封じ込め、私の咎をおおってください。
1418 しかし、山は倒れてくずれ去り、岩もその所から移される。
1419 水は石をうがち、大水は地の泥を押し流す。そのようにあなたは人の望みを絶ち滅ぼされます。
1420 あなたは、いつまでも人を打ち負かすので、人は過ぎ去って行きます。あなたは彼の顔を変えて、彼を追いやられます。
1421 自分の子らが尊ばれても、彼にはそれがわからず、彼らが卑しめられても、彼には見分けがつきません。
1422 ただ、彼は自分の肉の痛みを覚え、そのたましいは自分のために嘆くだけです。
1501 テマン人エリファズが答えて言った。
1502 知恵のある者はむなしい知識をもって答えるだろうか。東風によってその腹を満たすだろうか。
1503 彼は無益なことばを使って論じ、役に立たない論法で論じるだろうか。
1504 ところが、あなたは信仰を捨て、神に祈ることをやめている。
1505 それは、あなたの罪があなたの口に教え、あなたが悪賢い人の舌を選び取るからだ。
1506 あなたの口があなたを罪に定める。私ではない。あなたのくちびるがあなたに不利な証言をする。
1507 あなたは最初に生まれた人か。あなたは丘より先に生み出されたのか。
1508 あなたは神の会議にあずかり、あなたは知恵をひとり占めにしているのか。
1509 あなたが知っていることを、私たちは知らないのだろうか。あなたが悟るものは、私たちのうちに、ないのだろうか。
1510 私たちの中には白髪の者も、老いた者もいる。あなたの父よりもはるかに年上なのだ。
1511 神の慰めと、あなたに優しく話しかけられたことばとは、あなたにとっては取るに足りないものだろうか。
1512 なぜ、あなたは理性を失ったのか。なぜ、あなたの目はぎらつくのか。
1513 あなたが神に向かっていらだち、口からあのようなことばを吐くとは。
1514 人がどうして、きよくありえようか。女から生まれた者が、どうして、正しくありえようか。
1515 見よ。神はご自身の聖なる者たちをも信頼しない。天も神の目にはきよくない。
1516 まして忌みきらうべき汚れた者、不正を水のように飲む人間は、なおさらだ。
1517 私はあなたに告げよう。私に聞け。私の見たところを述べよう。
1518 それは知恵のある者たちが告げたもの、彼らの先祖が隠さなかったものだ。
1519 彼らにだけ、この地は与えられ、他国人はその中を通り過ぎなかった。
1520 悪者はその一生の間、もだえ苦しむ。横暴な者にも、ある年数がたくわえられている。
1521 その耳には恐ろしい音が聞こえ、平和なときにも荒らす者が彼を襲う。
1522 彼はやみから帰って来ることを信ぜず、彼は剣につけねらわれている。
1523 彼は食物を求めて、「どこだ」と言いながら、さまよい、やみの日がすぐそこに用意されているのを知っている。
1524 苦難と苦悩とが彼をおびえさせ、戦いの備えをした王のように彼に打ち勝つ。
1525 それは彼が神に手向かい、全能者に対して高慢にふるまい、
1526 厚い盾の取っ手を取っておこがましくも神に向かって馳せかかるからだ。
1527 また、彼は顔をあぶらでおおい、腰の回りは脂肪でふくれさせ、
1528 荒らされた町、人の住まない家に、石くれの山となる所に、住んだからだ。
1529 彼は富むこともなく、その財産も長くもたず、その影を地上に投げかけない。
1530 彼はやみからのがれることができず、炎がその若枝を枯らし、神の御口の息によって彼は追い払われる。
1531 迷わされて、むなしいことに信頼するな。その報いはむなしい。
1532 彼の時が来ないうちに、それは成し遂げられ、その葉は茂らない。
1533 彼は、ぶどうの木のように、その未熟の実は振り落とされ、オリーブの木のように、その花は落とされる。
1534 実に、神を敬わない者の仲間には実りがない。わいろを使う者の天幕は火で焼き尽くされる。
1535 彼らは害毒をはらみ、悪意を生み、その腹は欺きの備えをしている。