ヨブ記

1001 私は自分のいのちをいとう。私は自分の不平をぶちまけ、私のたましいの苦しみを語ろう。
1002 私は神に言おう。「私を罪ある者となさらないように。なぜ私と争われるかを、知らせてください。
1003 あなたが人をしいたげ、御手のわざをさげすみ、悪者のはかりごとに光を添えることは良いことでしょうか。
1004 あなたは肉の目を持っておられるのですか。あるいは、人間が見るように、あなたも見られるのですか。
1005 あなたの日々は人間の日々と同じですか。あるいは、あなたの年は人の年と同じですか。
1006 それで、あなたは私の咎を捜し、私の罪を探られるのですか。
1007 あなたは、私に罪のないことを知っておられ、だれもあなたの手から救い出せる者はいないのに。
1008 あなたの御手は私を形造り、造られました。それなのにあなたは私を滅ぼそうとされます。
1009 思い出してください。あなたは私を粘土で造られました。あなたは、私をちりに帰そうとされるのですか。
1010 あなたは私を乳のように注ぎ出し、チーズのように固め、
1011 皮と肉とを私に着せ、骨と筋とで私を編まれたではありませんか。
1012 あなたはいのちと恵みとを私に与え、私を顧みて私の霊を守られました。
1013 しかし、あなたはこれらのことを御心に秘めておられました。私はこのことがあなたのうちにあるのを知っています。
1014 もし、私が罪を犯すと、あなたは私を待ちもうけておられ、私の咎を見のがされません。
1015 もし、私が罪ある者とされるのなら、ああ、悲しいことです。私は、正しくても、私の頭をもたげることはできません。自分の恥に飽き飽きし、私の悩みを見ていますから。
1016 私の頭が上がると、あなたはたける獅子のように、私を駆り立て、再び私に驚くべき力をふるわれるでしょう。
1017 あなたは私の前にあなたの新しい証人たちを立て、私に向かってあなたの怒りを増し、私をいよいよ苦しめられるでしょう。
1018 なぜ、あなたは私を母の胎から出されたのですか。私が息絶えていたら、だれにも見られなかったでしょうに。
1019 私が生まれて来なかったかのように、母の胎から墓に運び去られていたらよかったものを。
1020 私の生きる日はいくばくもないのですか。それではやめてください。私にかまわないでください。私はわずかでも明るくなりたいのです。
1021 私が、再び帰らぬところ、やみと死の陰の地に行く前に。
1022 そこは暗やみのように真っ暗な地、死の陰があり、秩序がなく、光も暗やみのようです。」
1101 ナアマ人ツォファルが答えて言った。
1102 ことば数が多ければ、言い返しがないであろうか。舌の人が義とされるのだろうか。
1103 あなたのおしゃべりは人を黙らせる。あなたはあざけるが、だれもあなたを恥じさせる者がない。
1104 あなたは言う。「私の主張は純粋だ。あなたの目にも、きよい」と。
1105 ああ、神がもし語りかけ、あなたに向かってくちびるを開いてくださったなら、
1106 神は知恵の奥義をあなたに告げ、すぐれた知性を倍にしてくださるものを。知れ。神はあなたのために、あなたの罪を忘れてくださることを。
1107 あなたは神の深さを見抜くことができようか。全能者の極限を見つけることができようか。
1108 それは天よりも高い。あなたに何ができよう。それはよみよりも深い。あなたが何を知りえよう。
1109 それを計れば、地よりも長く、海よりも広い。
1110 もし、神が通り過ぎ、あるいは閉じ込め、あるいは呼び集めるなら、だれがそれを引き止めえようか。
1111 神は不信実な者どもを知っておられる。神はその悪意を見て、これに気がつかないであろうか。
1112 無知な人間も賢くなり、野ろばの子も、人として生まれる。
1113 もし、あなたが心を定め、あなたの手を神に向かって差し伸べるなら、
1114 ──あなたの手に悪があれば、それを捨て、あなたの天幕に不正を住まわせるな──
1115 そうすれば、あなたは必ず、汚れのないあなたの顔を上げることができ、堅く立って恐れることがない。
1116 こうしてあなたは労苦を忘れ、流れ去った水のように、これを思い出そう。
1117 あなたの一生は真昼よりも輝き、暗くても、それは朝のようになる。
1118 望みがあるので、あなたは安らぎ、あなたは守られて、安らかに休む。
1119 あなたが横たわっても、だれもあなたを脅かさない。多くの者があなたの好意を求める。
1120 しかし悪者どもの目は衰え果て、彼らは逃げ場を失う。彼らの望みは、あえぐ息に等しい。
1201 そこでヨブが答えて言った。
1202 確かにあなたがたは人だ。あなたがたが死ぬと、知恵も共に死ぬ。
1203 私にも、あなたがたと同様に、悟りがある。私はあなたがたに劣らない。だれかこれくらいのことを知らない者があろうか。
1204 私は、神を呼び、神が答えてくださった者であるのに、私は自分の友の物笑いとなっている。潔白で正しい者が物笑いとなっている。
1205 安らかだと思っている者は衰えている者をさげすみ、足のよろめく者を押し倒す。
1206 荒らす者の天幕は栄え、神を怒らせる者は安らかである。神がご自分の手でそうさせる者は。
1207 しかし、獣に尋ねてみよ。それがあなたに教えるだろう。空の鳥に尋ねてみよ。それがあなたに告げるだろう。
1208 あるいは地に話しかけよ。それがあなたに教えるだろう。海の魚もあなたに語るだろう。
1209 これらすべてのもののうち、【主】の御手がこれをなさったことを、知らないものがあろうか。
1210 すべての生き物のいのちと、すべての人間の息とは、その御手のうちにある。
1211 口が食物の味を知るように、耳はことばを聞き分けないだろうか。
1212 老いた者に知恵があり、年のたけた者に英知があるのか。
1213 知恵と力とは神とともにあり、思慮と英知も神のものだ。
1214 見よ。神が打ちこわすと、それは二度と建て直せない。人を閉じ込めると、それはあけられない。
1215 見よ。神が水を引き止めると、それはかれ、水を送ると、地をくつがえす。
1216 力とすぐれた知性とは神とともにあり、あやまって罪を犯す者も、迷わす者も、神のものだ。
1217 神は議官たちをはだしで連れて行き、さばきつかさたちを愚かにし、
1218 王たちの帯を解き、その腰に腰布を巻きつけ、
1219 祭司たちをはだしで連れて行き、勢力ある者を滅ぼす。
1220 神は信頼されている者の弁舌を取り除き、長老たちの分別を取り去り、
1221 君主たちをさげすみ、力ある者たちの腰帯を解き、
1222 やみの中から秘密をあらわし、暗黒を光に引き出す。
1223 神は国々を富ませ、また、これを滅ぼし、国々を広げ、また、これを連れ去り、
1224 この国の民のかしらたちの悟りを取り除き、彼らを道のない荒地にさまよわせる。
1225 彼らは光のない所、やみに手さぐりする。神は彼らを酔いどれのように、よろけさせる。

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