列王記 第U

1901 ヒゼキヤ王は、これを聞いて、自分の衣を裂き、荒布を身にまとって、【主】の宮に入った。
1902 彼は、宮内長官エルヤキム、書記シェブナ、年長の祭司たちに、荒布をまとわせて、アモツの子、預言者イザヤのところに遣わした。
1903 彼らはイザヤに言った。「ヒゼキヤはこう言っておられます。『きょうは、苦難と、懲らしめと、侮辱の日です。子どもが生まれようとするのに、それを産み出す力がないのです。
1904 おそらく、あなたの神、【主】は、ラブ・シャケのすべてのことばを聞かれたことでしょう。彼の主君、アッシリヤの王が、生ける神をそしるために彼を遣わしたのです。あなたの神、【主】は、その聞かれたことばを責められますが、あなたはまだいる残りの者のため、祈りをささげてください。』」
1905 ヒゼキヤ王の家来たちがイザヤのもとに来たとき、
1906 イザヤは彼らに言った。「あなたがたの主君にこう言いなさい。【主】はこう仰せられる。『あなたが聞いたあのことば、アッシリヤの王の若い者たちがわたしを冒涜したあのことばを恐れるな。
1907 今、わたしは彼のうちに一つの霊を入れる。彼は、あるうわさを聞いて、自分の国に引き揚げる。わたしは、その国で彼を剣で倒す。』」
1908 ラブ・シャケは退いて、リブナを攻めていたアッシリヤの王と落ち合った。王がラキシュから移動したことを聞いたからである。
1909 王は、クシュの王ティルハカについて、「今、彼はあなたと戦うために出て来ている」ということを聞いたとき、再び使者たちをヒゼキヤに送って言った。
1910 「ユダの王ヒゼキヤにこう伝えよ。『おまえの信頼するおまえの神にごまかされるな。おまえは、エルサレムはアッシリヤの王の手に渡されないと言っている。
1911 おまえは、アッシリヤの王たちがすべての国々にしたこと、それらを絶滅させたことを聞いている。それでも、おまえは救い出されるというのか。
1912 私の先祖たちはゴザン、ハラン、レツェフ、および、テラサルにいたエデンの人々を滅ぼしたが、その国々の神々は彼らを救い出したのか。
1913 ハマテの王、アルパデの王、セファルワイムの町の王、また、ヘナやイワの王は、どこにいるか。』」
1914 ヒゼキヤは、使者の手からその手紙を受け取り、それを読み、【主】の宮に上って行って、それを【主】の前に広げた。
1915 ヒゼキヤは【主】の前で祈って言った。「ケルビムの上に座しておられるイスラエルの神、【主】よ。ただ、あなただけが、地のすべての王国の神です。あなたが天と地を造られました。
1916 【主】よ。御耳を傾けて聞いてください。【主】よ。御目を開いてご覧ください。生ける神をそしるために言ってよこしたセナケリブのことばを聞いてください。
1917 【主】よ。アッシリヤの王たちが、国々と、その国土とを廃墟としたのは事実です。
1918 彼らはその神々を火に投げ込みました。それらは神ではなく、人の手の細工、木や石にすぎなかったので、滅ぼすことができたのです。
1919 私たちの神、【主】よ。どうか今、私たちを彼の手から救ってください。そうすれば、地のすべての王国は、【主】よ、あなただけが神であることを知りましょう。」
1920 アモツの子イザヤはヒゼキヤのところに人をやって言わせた。「イスラエルの神、【主】は、こう仰せられます。『あなたがアッシリヤの王セナケリブについて、わたしに祈ったことを、わたしは聞いた。』
1921 【主】が彼について語られたことばは次のとおりである。処女であるシオンの娘はあなたをさげすみ、あなたをあざける。エルサレムの娘はあなたのうしろで、頭を振る。
1922 あなたはだれをそしり、ののしったのか。だれに向かって声をあげ、高慢な目を上げたのか。イスラエルの聖なる方に対してだ。
1923 あなたは使者たちを使って、主をそしって言った。『多くの戦車を率いて、私は山々の頂に、レバノンの奥深く上って行った。そのそびえる杉の木と美しいもみの木を切り倒し、私はその果ての宿り場、木の茂った園にまで入って行った。
1924 私は井戸を掘って、他国の水を飲み、足の裏でエジプトのすべての川を干上がらせた』と。
1925 あなたは聞かなかったのか。昔から、それをわたしがなし、大昔から、それをわたしが計画し、今、それを果たしたことを。それであなたは城壁のある町々を荒らして廃墟の石くれの山としたのだ。
1926 その住民は力うせ、おののいて、恥を見、野の草や青菜、育つ前に干からびる屋根の草のようになった。
1927 あなたがすわるのも、出て行くのも、入るのも、わたしは知っている。あなたがわたしに向かっていきりたつのも。
1928 あなたがわたしに向かっていきりたち、あなたの高ぶりが、わたしの耳に届いたので、あなたの鼻には鉤輪を、あなたの口にはくつわをはめ、あなたを、もと来た道に引き戻そう。
1929 あなたへのしるしは次のとおりである。ことしは、落ち穂から生えたものを食べ、二年目も、またそれから生えたものを食べ、三年目は、種を蒔いて刈り入れ、ぶどう畑を作ってその実を食べる。
1930 ユダの家ののがれて残った者は下に根を張り、上に実を結ぶ。
1931 エルサレムから、残りの者が出て来、シオンの山から、のがれた者が出て来るからである。万軍の【主】の熱心がこれをする。
1932 それゆえ、アッシリヤの王について、【主】はこう仰せられる。彼はこの町に侵入しない。また、ここに矢を放たず、これに盾をもって迫らず、塁を築いてこれを攻めることもない。
1933 彼はもと来た道から引き返し、この町には入らない。──【主】の御告げだ──
1934 わたしはこの町を守って、これを救おう。わたしのために、わたしのしもべダビデのために。」
1935 その夜、【主】の使いが出て行って、アッシリヤの陣営で、十八万五千人を打ち殺した。人々が翌朝早く起きて見ると、なんと、彼らはみな、死体となっていた。
1936 アッシリヤの王セナケリブは立ち去り、帰ってニネベに住んだ。
1937 彼がその神ニスロクの宮で拝んでいたとき、その子のアデラメレクとサルエツェルは、剣で彼を打ち殺し、アララテの地へのがれた。それで彼の子エサル・ハドンが代わって王となった。
2001 そのころ、ヒゼキヤは病気になって死にかかっていた。そこへ、アモツの子、預言者イザヤが来て、彼に言った。「【主】はこう仰せられます。『あなたの家を整理せよ。あなたは死ぬ。直らない。』」
2002 そこでヒゼキヤは顔を壁に向けて、【主】に祈って、言った。
2003 「ああ、【主】よ。どうか思い出してください。私が、まことを尽くし、全き心をもって、あなたの御前に歩み、あなたがよいと見られることを行ってきたことを。」こうして、ヒゼキヤは大声で泣いた。
2004 イザヤがまだ中庭を出ないうちに、次のような【主】のことばが彼にあった。
2005 「引き返して、わたしの民の君主ヒゼキヤに告げよ。あなたの父ダビデの神、【主】は、こう仰せられる。『わたしはあなたの祈りを聞いた。あなたの涙も見た。見よ。わたしはあなたをいやす。三日目には、あなたは【主】の宮に上る。
2006 わたしは、あなたの寿命にもう十五年を加えよう。わたしはアッシリヤの王の手から、あなたとこの町を救い出し、わたしのために、また、わたしのしもべダビデのためにこの町を守る。』」
2007 イザヤが、「干しいちじくをひとかたまり、持って来なさい」と命じたので、人々はそれを持って来て、腫物に当てた。すると、彼は直った。
2008 ヒゼキヤはイザヤに言った。「【主】が私をいやしてくださり、私が三日目に【主】の宮に上れるしるしは何ですか。」
2009 イザヤは言った。「これがあなたへの【主】からのしるしです。【主】は約束されたことを成就されます。影が十度進むか、十度戻るかです。」
2010 ヒゼキヤは答えた。「影が十度伸びるのは容易なことです。むしろ、影が十度あとに戻るようにしてください。」
2011 預言者イザヤが【主】に祈ると、主はアハズの日時計におりた日時計の影を十度あとに戻された。
2012 そのころ、バルアダンの子、バビロンの王メロダク・バルアダンは、使者を遣わし、手紙と贈り物をヒゼキヤに届けた。ヒゼキヤが病気だったことを聞いていたからである。
2013 ヒゼキヤは、彼らのことを聞いて、すべての宝庫、銀、金、香料、高価な油、武器庫、彼の宝物倉にあるすべての物を彼らに見せた。ヒゼキヤがその家の中、および国中で、彼らに見せなかった物は一つもなかった。
2014 そこで預言者イザヤが、ヒゼキヤ王のところに来て、彼に尋ねた。「あの人々は何を言いましたか。どこから来たのですか。」ヒゼキヤは答えた。「遠い国、バビロンから来たのです。」
2015 イザヤはまた言った。「彼らは、あなたの家で何を見たのですか。」ヒゼキヤは答えた。「私の家の中のすべての物を見ました。私の宝物倉の中で彼らに見せなかった物は一つもありません。」
2016 すると、イザヤはヒゼキヤに言った。「【主】のことばを聞きなさい。
2017 見よ。あなたの家にある物、あなたの先祖たちが今日まで、たくわえてきた物がすべて、バビロンへ運び去られる日が来ている。何一つ残されまい、と【主】は仰せられます。
2018 また、あなたの生む、あなた自身の息子たちのうち、捕らえられてバビロンの王の宮殿で宦官となる者があろう。」
2019 ヒゼキヤはイザヤに言った。「あなたが告げてくれた【主】のことばはありがたい。」彼は、自分が生きている間は、平和で安全ではなかろうか、と思ったからである。
2020 ヒゼキヤのその他の業績、彼のすべての功績、彼が貯水池と水道を造り、町に水を引いたこと、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
2021 こうして、ヒゼキヤは彼の先祖たちとともに眠り、その子マナセが代わって王となった。
2101 マナセは十二歳で王となり、エルサレムで五十五年間、王であった。彼の母の名はヘフツィ・バハといった。
2102 彼は、【主】がイスラエル人の前から追い払われた異邦の民の忌みきらうべきならわしをまねて、【主】の目の前に悪を行った。
2103 彼は、父ヒゼキヤが打ちこわした高き所を築き直し、バアルのために祭壇を立て、イスラエルの王アハブがしたようにアシェラ像を造り、天の万象を拝み、これに仕えた。
2104 彼は、【主】がかつて、「エルサレムにわたしの名を置く」と言われた【主】の宮に、祭壇を築いたのである。
2105 こうして、彼は、【主】の宮の二つの庭に、天の万象のために祭壇を築いた。
2106 また、自分の子どもに火の中をくぐらせ、卜占をし、まじないをし、霊媒や口寄せをして、【主】の目の前に悪を行い、主の怒りを引き起こした。
2107 さらに彼は、自分が造ったアシェラの彫像を宮に安置した。【主】はかつてこの宮について、ダビデとその子ソロモンに言われた。「わたしは、この宮に、そしてわたしがイスラエルの全部族の中から選んだエルサレムに、わたしの名をとこしえに置く。
2108 もし彼らが、わたしの命じたすべてのこと、わたしのしもべモーセが彼らに命じたすべての律法を、守り行いさえするなら、わたしはもう二度と、彼らの先祖に与えた地から、イスラエルの足を迷い出させない。」
2109 しかし、彼らはこれに聞き従わず、マナセは彼らを迷わせて、【主】がイスラエル人の前で根絶やしにされた異邦人よりも、さらに悪いことを行わせた。
2110 【主】は、そのしもべ預言者たちによって、次のように告げられた。
2111 「ユダの王マナセは、これらの忌みきらうべきことを、彼以前にいたエモリ人が行ったすべてのことよりもさらに悪いことを行い、その偶像でユダにまで罪を犯させた。
2112 それゆえ、イスラエルの神、【主】は、こう仰せられる。見よ。わたしはエルサレムとユダにわざわいをもたらす。だれでもそれを聞く者は、二つの耳が鳴るであろう。
2113 わたしは、サマリヤに使った測りなわと、アハブの家に使ったおもりとをエルサレムの上に伸ばし、人が皿をぬぐい、それをぬぐって伏せるように、わたしはエルサレムをぬぐい去ろう。
2114 わたしは、わたしのものである民の残りの者を捨て去り、彼らを敵の手に渡す。彼らはそのすべての敵のえじきとなり、奪い取られる。
2115 それは、彼らの先祖がエジプトを出た日から今日まで、わたしの目の前に悪を行い、わたしの怒りを引き起こしたからである。」
2116 マナセは、ユダに罪を犯させ、【主】の目の前に悪を行わせて、罪を犯したばかりでなく、罪のない者の血まで多量に流し、それがエルサレムの隅々に満ちるほどであった。
2117 マナセのその他の業績、彼の行ったすべての事、および彼の犯した罪、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
2118 マナセは彼の先祖たちとともに眠り、その家の園、ウザの園に葬られた。彼の子アモンが代わって王となった。
2119 アモンは二十二歳で王となり、エルサレムで二年間、王であった。彼の母の名はメシュレメテといい、ヨテバの出のハルツの娘であった。
2120 彼は、その父マナセが行ったように、【主】の目の前に悪を行った。
2121 彼は、父の歩んだすべての道に歩み、父が仕えた偶像に仕え、それらを拝み、
2122 彼の父祖の神、【主】を捨てて、【主】の道に歩もうとはしなかった。
2123 アモンの家来たちは彼に謀反を起こし、その宮殿の中でこの王を殺した。
2124 しかし、民衆はアモン王に謀反を起こした者をみな打ち殺した。民衆はアモンの子ヨシヤを代わりに王とした。
2125 アモンの行ったその他の業績、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
2126 人々は彼をウザの園にある彼の墓に葬った。彼の子ヨシヤが代わって王となった。

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