列王記 第U

1001 アハブにはサマリヤに七十人の子どもがあった。エフーは手紙を書いてサマリヤに送り、イズレエルのつかさたちや長老たち、および、アハブの子の養育係たちにこう伝えた。
1002 「この手紙が届いたら、あなたがたのところに、あなたがたの主君の子どもたちがおり、戦車も馬も城壁のある町も武器もあなたがたのところにあるのだから、すぐ、
1003 あなたがたの主君の子どもの中から最もすぐれた正しい人物を選んで、その父の王座に着かせ、あなたがたの主君の家のために戦え。」
1004 彼らは非常に恐れて言った。「ふたりの王たちでさえ、彼に当たることができなかったのに、どうしてこのわれわれが当たることができよう。」
1005 そこで、宮内長官、町のつかさ、長老たち、および、養育係たちは、エフーに人を送って言った。「私どもはあなたのしもべです。あなたが私どもにお命じになることは何でもいたしますが、だれをも王に立てるつもりはありません。あなたのお気に召すようにしてください。」
1006 そこで、エフーは再び彼らに手紙を書いてこう言った。「もしあなたがたが私に味方し、私の命令に従うのなら、あなたがたの主君の子どもたちの首を取り、あすの今ごろ、イズレエルの私のもとに持って来い。」そのころ、王の子どもたち七十人は、彼らを養育していた町のおもだった人たちのもとにいた。
1007 その手紙が彼らに届くと、彼らは王の子どもたちを捕らえ、その七十人を切り殺し、その首を幾つかのかごに入れ、それをイズレエルのエフーのもとに送り届けた。
1008 使者が来て、「彼らは王の子どもたちの首を持ってまいりました」とエフーに報告した。すると、彼は、「それを二つに分けて積み重ね、朝まで門の入口に置いておけ」と命じた。
1009 朝になると、エフーは出て行って立ち、すべての民に言った。「あなたがたには罪はない。聞け。私が主君に対して謀反を起こして、彼を殺したのだ。しかしこれらの者を皆殺しにしたのはだれか。
1010 だから知れ。【主】がアハブの家について告げられた【主】のことばは一つも地に落ちないことを。【主】は、そのしもべエリヤによってお告げになったことをなされたのだ。」
1011 そして、エフーは、アハブの家に属する者でイズレエルに残っていた者全部、身分の高い者、親しい者、その祭司たちを、みな打ち殺し、ひとりも生き残る者がないまでにした。
1012 それから、エフーは立ってサマリヤへ行った。彼は途中、羊飼いのベテ・エケデという所にいた。
1013 その間に、エフーはユダの王アハズヤの身内の者たちに出会った。彼が「あなたがたはだれか」と聞くと、彼らは、「私たちはアハズヤの身内の者です。王の子どもたちと、王母の子どもたちの安否を気づかって下って来たのです」と答えた。
1014 エフーは「彼らを生けどりにせよ」と言った。それで人々は彼らを生けどりにした。そして、ベテ・エケデの水ためのところで、彼ら四十二人を殺し、ひとりも残さなかった。
1015 彼がそこを去って行くと、彼を迎えに来たレカブの子ヨナダブに出会った。エフーは彼にあいさつして言った。「私の心があなたの心に結ばれているように、あなたの心もそうですか。」ヨナダブは、「そうです」と答えた。「それなら、こちらに手をよこしなさい。」ヨナダブが手を差し出すと、エフーは彼を戦車の上に引き上げて、
1016 「私といっしょに来て、私の【主】に対する熱心さを見なさい」と言った。ふたりは、彼の戦車に乗って、
1017 サマリヤに行った。エフーはアハブに属する者で、サマリヤに残っていた者を皆殺しにし、その一族を根絶やしにした。【主】がエリヤにお告げになったことばのとおりであった。
1018 エフーは民全部を集めて、彼らに言った。「アハブは少ししかバアルに仕えなかったが、エフーは大いに仕えるつもりだ。
1019 だから今、バアルの預言者や、その信者、および、その祭司たちをみな、私のところに呼び寄せよ。ひとりでも欠けてはならない。私は大いなるいけにえをバアルにささげるつもりである。列席しない者は、だれでも生かしてはおかない。」これは、エフーがバアルの信者たちを滅ぼすために、悪巧みを計ったのである。
1020 エフーが、「バアルのためにきよめの集会を催しなさい」と命じると、彼らはこれを布告した。
1021 エフーが全イスラエルに人を遣わしたので、バアルの信者たちはみなやって来た。残っていて、来なかった者はひとりもいなかった。彼らがバアルの宮に入ると、バアルの宮は端から端までいっぱいになった。
1022 エフーが衣装係に、「バアルの信者全部に祭服を出してやりなさい」と命じたので、彼らのために祭服を取り出した。
1023 エフーとレカブの子ヨナダブは、バアルの宮に入り、バアルの信者たちに言った。「よく捜して見て、ここに、あなたがたといっしょに、【主】のしもべたちがひとりもいないようにし、ただ、バアルの信者たちだけがいるようにしなさい。」
1024 こうして、彼らはいけにえと、全焼のいけにえをささげる準備をした。エフーは八十人の者を宮の外に配置して言った。「私があなたがたの手に渡す者をひとりでものがす者があれば、そのいのちを、のがれた者のいのちに代える。」
1025 全焼のいけにえをささげ終わったとき、エフーは近衛兵と侍従たちに言った。「入って行って、彼らを打ち取れ。ひとりも外に出すな。」そこで、近衛兵と侍従たちは剣の刃で彼らを打ち、これを外に投げ捨て、バアルの宮の奥の間にまで踏み込んだ。
1026 そしてバアルの宮の石の柱を運び出して、これを焼き、
1027 バアルの石の柱をこわし、バアルの宮もこわし、これを公衆便所とした。それは今日まで残っている。
1028 このようにして、エフーはバアルをイスラエルから根絶やしにした。
1029 ただし、エフーは、イスラエルに罪を犯させたネバテの子ヤロブアムの罪、すなわち、ベテルとダンにあった金の子牛に仕えることをやめようとはしなかった。
1030 【主】はエフーに仰せられた。「あなたはわたしの見る目にかなったことをよくやり遂げ、アハブの家に対して、わたしが心に定めたことをことごとく行ったので、あなたの子孫は四代目まで、イスラエルの王座に着こう。」
1031 しかし、エフーは、心を尽くしてイスラエルの神、【主】の律法に歩もうと心がけず、イスラエルに罪を犯させたヤロブアムの罪から離れなかった。
1032 そのころ、【主】はイスラエルを少しずつ削り始めておられた。ハザエルがイスラエルの全領土を打ち破ったのである。
1033 すなわち、ヨルダン川の東側、ガド人、ルベン人、マナセ人のギルアデ全土、つまり、アルノン川のほとりにあるアロエルからギルアデ、バシャンの地方を打ち破った。
1034 エフーのその他の業績、彼の行ったすべての事、および彼のすべての功績、それはイスラエルの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
1035 エフーは彼の先祖たちとともに眠り、人々は彼をサマリヤに葬った。彼の子エホアハズが代わって王となった。
1036 エフーがサマリヤでイスラエルの王であった期間は二十八年であった。
1101 アハズヤの母アタルヤは、自分の子が死んだと知ると、ただちに王の一族をことごとく滅ぼした。
1102 しかし、ヨラム王の娘で、アハズヤの姉妹のエホシェバが、殺される王の子たちの中から、アハズヤの子ヨアシュを盗み出し、彼とそのうばとを寝具をしまう小部屋に入れて、彼をアタルヤから隠した。それで、彼は殺されなかった。
1103 こうして、彼はうばとともに、【主】の宮に六年間、身を隠していた。その間、アタルヤがこの国の王であった。
1104 その 七年目に、エホヤダは使いを遣わして、カリ人、近衛兵の百人隊の長たちを【主】の宮の自分のもとに連れて来させ、彼らと契約を結び、【主】の宮で彼らに誓いを立てさせ、彼らに王の子を見せた。
1105 それから、彼は命じて言った。「あなたがたのなすべきことはこうです。あなたがたのうちの三分の一は、安息日に勤務して王宮の護衛の任務につく者となる。
1106 三分の一はスルの門におり、他の三分の一は近衛兵舎の裏の門にいる。あなたがたは交互に王宮の護衛の任務につく。
1107 あなたがたのうち二組は、みな、安息日に勤務しない者であるが、【主】の宮で王の護衛の任務につかなければならない。
1108 おのおの武器を手にし、王の回りを取り囲みなさい。その列を侵す者は殺されなければならない。あなたがたは、王が出るときにも、入るときにも、いつも王とともにいなさい。」
1109 百人隊の長たちは、すべて祭司エホヤダが命じたとおりに行った。おのおの自分の部下、すなわち安息日に勤務する者、安息日に勤務しない者を率いて、祭司エホヤダのところに来た。
1110 祭司は百人隊の長たちに、【主】の宮にあったダビデ王の槍と丸い小盾を与えた。
1111 近衛兵たちは、ひとりひとり武器を手にして、神殿の右側から神殿の左側まで、祭壇と神殿に向かって王の回りに立った。
1112 こうしてエホヤダは、王の子を連れ出し、彼に王冠をかぶらせ、さとしの書を渡した。彼らは彼を王と宣言した。そして、彼に油をそそぎ、手をたたいて、「王さま。ばんざい」と叫んだ。
1113 アタルヤは近衛兵と民の声を聞いて、【主】の宮の民のところに行った。
1114 見ると、なんと、王が定めのとおりに、柱のそばに立っていた。王のかたわらに、隊長たちやラッパ手たちがいた。一般の人々がみな喜んでラッパを吹き鳴らしていた。アタルヤは自分の衣服を引き裂き、「謀反だ。謀反だ」と叫んだ。
1115 すると、祭司エホヤダは、部隊をゆだねられた百人隊の長たちに命じて言った。「この女を列の間から連れ出せ。この女に従って来る者は剣で殺せ。」祭司が「この女は【主】の宮で殺されてはならない」と言ったからである。
1116 彼らは彼女を取り押さえた。彼女が馬の出入口を通って、王宮に着くと、彼女はそこで殺された。
1117 エホヤダは、【主】と王と民との間で、【主】の民となるという契約を結び、王と民との間でも契約を結んだ。
1118 一般の人々はみなバアルの宮に行って、それを取りこわし、その祭壇とその像を徹底的に打ち砕き、バアルの祭司マタンを祭壇の前で殺した。祭司エホヤダは、【主】の宮の管理を定めた。
1119 彼は百人隊の長たち、カリ人、近衛兵たちとすべての一般の人々を率いた。彼らは王を【主】の宮から連れ下り、近衛兵の門を通って、王宮に入った。彼は王を王座に着けた。
1120 一般の人々はみな喜び、この町は平穏であった。彼らはアタルヤを王宮で剣にかけて殺したからである。
1121 ヨアシュは七歳で王となった。
1201 ヨアシュはエフーの 七年に王となり、エルサレムで四十年間、王であった。彼の母の名はツィブヤといい、ベエル・シェバの出であった。
1202 ヨアシュは、祭司エホヤダが彼を教えた間はいつも、【主】の目にかなうことを行った。
1203 ただし、高き所は取り除かなかった。民はなおも、その高き所でいけにえをささげたり、香をたいたりしていた。
1204 ヨアシュは祭司たちに言った。「【主】の宮にささげられる聖別されたすべての金、すなわち、各人に割り当てを課せられた金や、自発的に【主】の宮にささげられるすべての金は、
1205 祭司たちが、めいめい自分の担当する者から受け取り、宮のどこかが破損していれば、その破損の修理にそれを当てなければならない。」
1206 しかし、ヨアシュ王の 二十三年になっても、祭司たちは宮の破損を修理しなかった。
1207 それでヨアシュ王は、祭司エホヤダと、祭司たちを呼んで彼らに言った。「なぜ、宮の破損を修理しないのか。もう、あなたがたは、自分の担当する者たちから金を受け取ってはならない。宮の破損に、それを当てなければならないから。」
1208 祭司たちは、民から金を受け取らないことと、宮の破損の修理の責任を持たないこととに同意した。
1209 祭司エホヤダは、一つの箱を取り、そのふたに穴をあけ、それを祭壇のわき、【主】の宮の入口の右側に置いた。入口を守る祭司たちは、【主】の宮に納められる金をみな、そこに置いた。
1210 箱の中に金が多くなるのを見て、王の書記と大祭司は、上って来て、それを袋に入れ、【主】の宮に納められている金を計算した。
1211 こうして、勘定された金は、【主】の宮で工事をしている監督者たちの手に渡された。彼らはそれを【主】の宮で働く木工や建築師たち、
1212 石工や石切り工たちに支払い、また、【主】の宮の破損修理のための木材や切り石を買うために支払った。つまり、宮の修理のための出費全部のために支払った。
1213 ただし、【主】の宮に納められる金で、【主】の宮のために銀の皿、心切りばさみ、鉢、ラッパなど、すべての金の器、銀の器を作ることはなかった。
1214 ただ、これを工事する者に渡し、これを【主】の宮の修理に当てた。
1215 また、工事する者に支払うように金を渡した人々と、残高を勘定することもしなかった。彼らが忠実に働いていたからである。
1216 0 罪過のためのいけにえの金と、罪のためのいけにえの金とは、【主】の宮に納められず、祭司たちのものとなった。
1217 そのとき、アラムの王ハザエルが上って来てガテを攻め、これを取った。それから、ハザエルはエルサレムを目ざして攻め上った。
1218 それでユダの王ヨアシュは、自分の先祖であるユダの王ヨシャパテ、ヨラム、アハズヤが聖別してささげたすべての物、および自分自身が聖別してささげた物、【主】の宮と王宮との宝物倉にあるすべての金を取って、アラムの王ハザエルに送ったので、ハザエルはエルサレムから去って行った。
1219 ヨアシュのその他の業績、彼の行ったすべての事、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
1220 ヨアシュの家来たちは立ち上がって謀反を起こし、シラに下って行くヨアシュをミロの家で打ち殺した。
1221 彼の家来シムアテの子ヨザバデとショメルの子エホザバデが彼を打った。それで彼は死んだ。人々は彼をダビデの町に先祖たちといっしょに葬った。彼の子アマツヤが代わって王となった。

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