列王記 第T

0101 ダビデ王は年を重ねて老人になっていた。それで夜着をいくら着せても暖まらなかった。
0102 そこで、彼の家来たちは彼に言った。「王さまのためにひとりの若い処女を捜して来て、王さまにはべらせ、王さまの世話をさせ、あなたのふところに寝させ、王さまを暖めるようにいたしましょう。」
0103 こうして、彼らは、イスラエルの国中に美しい娘を捜し求め、シュネム人の女アビシャグを見つけて、王のもとに連れて来た。
0104 この娘は非常に美しかった。彼女は王の世話をするようになり、彼に仕えたが、王は彼女を知ろうとしなかった。
0105 一方、ハギテの子アドニヤは、「私が王になろう」と言って、野心をいだき、戦車、騎兵、それに、自分の前を走る者五十人を手に入れた。
0106 ──彼の父は存命中、「あなたはどうしてこんなことをしたのか」と言って、彼のことで心を痛めたことがなかった。そのうえ、彼は非常な美男子で、アブシャロムの次に生まれた子であった──
0107 彼はツェルヤの子ヨアブと祭司エブヤタルに相談をしたので、彼らはアドニヤを支持するようになった。
0108 しかし、祭司ツァドクとエホヤダの子ベナヤと預言者ナタン、それにシムイとレイ、および、ダビデの勇士たちは、アドニヤにくみしなかった。
0109 アドニヤは、エン・ロゲルの近くにあるゾヘレテの石のそばで、羊、牛、肥えた家畜をいけにえとしてささげ、王の子らである自分の兄弟たちすべてと、王の家来であるユダのすべての人々とを招いた。
0110 しかし、預言者ナタンや、ベナヤ、それに勇士たちや、彼の兄弟ソロモンは招かなかった。
0111 それで、ナタンはソロモンの母バテ・シェバにこう言った。「私たちの君ダビデが知らないうちに、ハギテの子アドニヤが王となったということを聞きませんでしたか。
0112 さあ、今、私があなたに助言をいたしますから、あなたのいのちとあなたの子ソロモンのいのちを助けなさい。
0113 さあ、ダビデ王のもとに行って、『王さま。あなたは、このはしために、必ず、あなたの子ソロモンが私の跡を継いで王となる。彼が私の王座に着く、と言って誓われたではありませんか。それなのに、なぜ、アドニヤが王となったのですか』と言いなさい。
0114 あなたがまだそこで王と話しているうちに、私もあなたのあとから入って行って、あなたのことばの確かなことを保証しましょう。」
0115 そこで、バテ・シェバは寝室の王のもとに行った。──王は非常に年老いて、シュネム人の女アビシャグが王に仕えていた──
0116 バテ・シェバがひざまずいて、王におじぎをすると、王は、「何の用か」と言った。
0117 彼女は答えた。「わが君。あなたは、あなたの神、【主】にかけて『必ず、あなたの子ソロモンが私の跡を継いで王となる。彼が私の王座に着く』と、このはしためにお誓いになりました。
0118 それなのに、今、アドニヤが王となっています。王さま。あなたはそれをご存じないのです。
0119 彼は、牛や肥えた家畜や羊をたくさん、いけにえとしてささげ、王のお子さま全部と、祭司エブヤタルと、将軍ヨアブを招いたのに、あなたのしもべソロモンは招きませんでした。
0120 王さま。王さまの跡を継いで、だれが王さまの王座に着くかを告げていただきたいと、今や、すべてのイスラエルの目はあなたの上に注がれています。
0121 そうでないと、王さまがご先祖たちとともに眠りにつかれるとき、私と私の子ソロモンは罪を犯した者とみなされるでしょう。」
0122 彼女がまだ王と話しているうちに、預言者ナタンが入って来た。
0123 家来たちは、「預言者ナタンがまいりました」と言って王に告げた。彼は王の前に出て、地にひれ伏して、王に礼をした。
0124 ナタンは言った。「王さま。あなたは『アドニヤが私の跡を継いで王となる。彼が私の王座に着く』と仰せられましたか。
0125 実は、きょう、彼は下って行って、牛と肥えた家畜と羊とをたくさん、いけにえとしてささげ、王のお子さま全部と、将軍たちと、祭司エブヤタルとを招きました。そして、彼らは、彼の前で飲み食いし、『アドニヤ王。ばんざい』と叫びました。
0126 しかし、あなたのしもべのこの私や祭司ツァドクやエホヤダの子ベナヤや、それに、あなたのしもべソロモンは招きませんでした。
0127 このことは、王さまから出たことなのですか。あなたは、だれが王の跡を継いで、王さまの王座に着くかを、このしもべに告げておられませんのに。」
0128 ダビデ王は答えて言った。「バテ・シェバをここに呼びなさい。」彼女が王の前に来て、王の前に立つと、
0129 王は誓って言った。「私のいのちをあらゆる苦難から救い出してくださった【主】は生きておられる。
0130 私がイスラエルの神、【主】にかけて、『必ず、あなたの子ソロモンが私の跡を継いで王となる。彼が私に代わって王座に着く』と言ってあなたに誓ったとおり、きょう、必ずそのとおりにしよう。」
0131 バテ・シェバは地にひれ伏して、王に礼をし、そして言った。「わが君、ダビデ王さま。いつまでも生きておられますように。」
0132 それからダビデ王は言った。「祭司ツァドクと預言者ナタン、それに、エホヤダの子ベナヤをここに呼びなさい。」彼らが王の前に来ると、
0133 王は彼らに言った。「あなたがたの主君の家来たちを連れ、私の子ソロモンを私の雌騾馬に乗せ、彼を連れてギホンへ下って行きなさい。
0134 祭司ツァドクと預言者ナタンは、そこで彼に油をそそいでイスラエルの王としなさい。そうして、角笛を吹き鳴らし、『ソロモン王。ばんざい』と叫びなさい。
0135 それから、彼に従って上って来なさい。彼は来て、私の王座に着き、彼が私に代わって王となる。私は彼をイスラエルとユダの君主に任命した。」
0136 エホヤダの子ベナヤが王に答えて言った。「アーメン。王さまの神、【主】も、そう言われますように。
0137 【主】が、王さまとともにおられたように、ソロモンとともにおられ、彼の王座を、わが君、ダビデ王の王座よりもすぐれたものとされますように。」
0138 そこで、祭司ツァドクと預言者ナタンとエホヤダの子ベナヤ、それに、ケレテ人とペレテ人とが下って行き、彼らはソロモンをダビデ王の雌騾馬に乗せ、彼を連れてギホンへ行った。
0139 祭司ツァドクは天幕の中から油の角を取って来て、油をソロモンにそそいだ。そうして彼らが角笛を吹き鳴らすと、民はこぞって、「ソロモン王。ばんざい」と叫んだ。
0140 民はみな、彼のあとに従って上って来た。民が笛を吹き鳴らしながら、大いに喜んで歌ったので、地がその声で裂けた。
0141 アドニヤと、彼に招待された者たちはみな、食事を終えたとき、これを聞いた。ヨアブは角笛の音を聞いて言った。「なぜ、都で騒々しい声が起こっているのだろう。」
0142 彼がまだそう言っているうちに、祭司エブヤタルの子ヨナタンがやって来た。アドニヤは言った。「入りなさい。あなたは勇敢な人だから、良い知らせを持って来たのだろう。」
0143 ヨナタンはアドニヤに答えて言った。「いいえ、私たちの君、ダビデ王はソロモンを王としました。
0144 ダビデ王は、祭司ツァドクと預言者ナタンとエホヤダの子ベナヤ、それに、ケレテ人とペレテ人とをソロモンにつけて送り出しました。彼らはソロモンを王の雌騾馬に乗せ、
0145 祭司ツァドクと預言者ナタンがギホンで彼に油をそそいで王としました。こうして彼らが大喜びで、そこから上って来たので、都が騒々しくなったのです。あなたがたの聞いたあの物音はそれです。
0146 しかも、ソロモンはすでに王の座に着きました。
0147 そのうえ、王の家来たちが来て、『神が、ソロモンの名をあなたの名よりも輝かせ、その王座をあなたの王座よりもすぐれたものとされますように』と言って、私たちの君、ダビデ王に祝福のことばを述べました。すると王は寝台の上で礼拝をしました。
0148 また、王はこう言われました。『きょう、私の王座に着く者を与えてくださって、私がこの目で見るようにしてくださったイスラエルの神、【主】はほむべきかな。』」
0149 すると、アドニヤの客たちはみな、身震いして立ち上がり、おのおの帰途についた。
0150 アドニヤもソロモンを恐れて立ち上がり、行って、祭壇の角をつかんだ。
0151 そのとき、ソロモンに次のように言って告げる者がいた。「アドニヤはソロモン王を恐れ、祭壇の角をしっかり握って、『ソロモン王がまず、このしもべを剣で殺さないと私に誓ってくださるように』と言っています。」
0152 すると、ソロモンは言った。「彼がりっぱな人物であれば、彼の髪の毛一本でも地に落ちることはない。しかし、彼のうちに悪があれば、彼は死ななければならない。」
0153 それから、ソロモン王は人をやってアドニヤを祭壇から降ろさせた。彼がソロモン王の前に来て礼をすると、ソロモンは彼に言った。「家へ帰りなさい。」
0201 ダビデの死ぬ日が近づいたとき、彼は息子のソロモンに次のように言いつけた。
0202 「私は世のすべての人の行く道を行こうとしている。強く、男らしくありなさい。
0203 あなたの神、【主】の戒めを守り、モーセの律法に書かれているとおりに、主のおきてと、命令と、定めと、さとしとを守って主の道を歩まなければならない。あなたが何をしても、どこへ行っても、栄えるためである。
0204 そうすれば、【主】は私について語られた約束を果たしてくださろう。すなわち『もし、あなたの息子たちが彼らの道を守り、心を尽くし、精神を尽くして、誠実をもってわたしの前を歩むなら、あなたには、イスラエルの王座から人が断たれない。』
0205 また、あなたはツェルヤの子ヨアブが私にしたこと、すなわち、彼がイスラエルのふたりの将軍、ネルの子アブネルとエテルの子アマサとにしたことを知っている。彼は彼らを虐殺し、平和な時に、戦いの血を流し、自分の腰の帯と足のくつに戦いの血をつけたのだ。
0206 だから、あなたは自分の知恵に従って行動しなさい。彼のしらが頭を安らかによみに下らせてはならない。
0207 しかし、ギルアデ人バルジライの子らには恵みを施してやり、彼らをあなたの食事の席に連ならせなさい。私があなたの兄弟アブシャロムの前から逃げたとき、彼らは私の近くに来てくれたからだ。
0208 また、あなたのそばには、バフリムの出のベニヤミン人ゲラの子シムイがいる。彼は、私がマハナイムに行ったとき、非常に激しく私をのろった。しかし、彼は私を迎えにヨルダン川に下って来たので、私は【主】にかけて、『あなたを剣で殺さない』と言って彼に誓った。
0209 だが、今は、彼を罪のない者としてはならない。あなたは知恵のある人だから、彼にどうすれば彼のしらが頭を血に染めてよみに下らせるかを知るようになろう。」
0210 こうして、ダビデは彼の先祖たちとともに眠り、ダビデの町に葬られた。
0211 ダビデがイスラエルの王であった期間は四十年であった。ヘブロンで七年治め、エルサレムで三十三年治めた。
0212 ソロモンは父ダビデの王座に着き、その王位は確立した。
0213 あるとき、ハギテの子アドニヤがソロモンの母バテ・シェバのところにやって来た。彼女は、「平和なことで来たのですか」と尋ねた。彼は、「平和なことです」と答えて、
0214 さらに言った。「あなたにお話ししたいことがあるのですが。」すると彼女は言った。「話してごらんなさい。」
0215 彼は言った。「ご存じのように、王位は私のものであるはずですし、すべてのイスラエルは私が王となるのを期待していました。それなのに、王位は転じて、私の弟のものとなりました。【主】によって彼のものとなったからです。
0216 今、あなたに一つのお願いがあります。断らないでください。」彼女は彼に言った。「話してごらんなさい。」
0217 彼は言った。「どうかソロモン王に頼んでください。あなたからなら断らないでしょうから。シュネム人の女アビシャグを私に与えて私の妻にしてください。」
0218 そこで、バテ・シェバは、「よろしい。私から王にあなたのことを話してあげましょう」と言った。
0219 バテ・シェバは、アドニヤのことを話すために、ソロモン王のところに行った。王は立ち上がって彼女を迎え、彼女におじぎをして、自分の王座に戻った。王の母のためにほかの王座を設けさせたので、彼女は彼の右にすわった。
0220 そこで、彼女は言った。「あなたに一つの小さなお願いがあります。断らないでください。」王は彼女に言った。「母上。その願い事を聞かせてください。お断りしないでしょうから。」
0221 彼女は言った。「シュネム人の女アビシャグをあなたの兄のアドニヤに妻として与えてやってください。」
0222 ソロモン王は母に答えて言った。「なぜ、あなたはアドニヤのためにシュネム人の女アビシャグを求めるのですか。彼は私の兄ですから、彼のために、王位を求めたほうがよいのではありませんか。彼のためにも祭司エブヤタルやツェルヤの子ヨアブのためにも。」
0223 ソロモン王は【主】にかけて誓って言った。「アドニヤがこういうことを言って自分のいのちを失わなかったら、神がこの私を幾重にも罰せられるように。
0224 私の父ダビデの王座に着かせて、私を堅く立て、お約束どおりに、王朝を建ててくださった【主】は生きておられる。アドニヤは、きょう、殺されなければなりません。」
0225 こうして、ソロモン王は、エホヤダの子ベナヤを遣わしてアドニヤを打ち取らせたので、彼は死んだ。
0226 それから、王は祭司エブヤタルに言った。「アナトテの自分の地所に帰りなさい。あなたは死に値する者であるが、きょうは、あなたを殺さない。あなたは私の父ダビデの前で神である主の箱をかつぎ、父といつも苦しみを共にしたからだ。」
0227 こうして、ソロモンはエブヤタルを【主】の祭司の職から罷免した。シロでエリの家族について語られた【主】のことばはこうして成就した。
0228 この知らせがヨアブのところに伝わると、──ヨアブはアドニヤについたが、アブシャロムにはつかなかった──ヨアブは【主】の天幕に逃げ、祭壇の角をつかんだ。
0229 ヨアブが【主】の天幕に逃げて、今、祭壇のかたわらにいる、とソロモン王に知らされたとき、ソロモンは、「行って、彼を打ち取れ」と命じて、エホヤダの子ベナヤを遣わした。
0230 そこで、ベナヤは【主】の天幕に入って、彼に言った。「王がこう言われる。『外に出よ。』」彼は、「いやだ。ここで死ぬ」と言った。ベナヤは王にこのことを報告して言った。「ヨアブはこう言って私に答えました。」
0231 王は彼に言った。「では、彼が言ったとおりにして、彼を打ち取って、葬りなさい。こうして、ヨアブが理由もなく流した血を、私と、私の父の家から取り除きなさい。
0232 【主】は、彼が流した血を彼の頭に注ぎ返されるであろう。彼は自分よりも正しく善良なふたりの者に撃ちかかり、剣で彼らを虐殺したからだ。彼は私の父ダビデが知らないうちに、ネルの子、イスラエルの将軍アブネルと、エテルの子、ユダの将軍アマサを虐殺した。
0233 ふたりの血は永遠にヨアブの頭と彼の子孫の頭とに注ぎ返されよう。しかし、ダビデとその子孫、およびその家と王座にはとこしえまで、【主】から平安が下されよう。」
0234 エホヤダの子ベナヤは上って行って、彼を打ち取った。彼は荒野にある自分の家に葬られた。
0235 王はエホヤダの子ベナヤを彼の代わりに軍団長とし、王は祭司ツァドクをエブヤタルの代わりとした。
0236 王は人をやって、シムイを呼び寄せ、彼に言った。「自分のためにエルサレムに家を建てて、そこに住むがよい。だが、そこからどこへも出てはならない。
0237 出て、キデロン川を渡ったら、あなたは必ず殺されることを覚悟しておきなさい。あなたの血はあなた自身の頭に帰するのだ。」
0238 シムイは王に言った。「よろしゅうございます。しもべは、王さまのおっしゃるとおりにいたします。」このようにして、シムイは長い間エルサレムに住んだ。
0239 それから、三年たったころ、シムイのふたりの奴隷が、ガテの王マアカの子アキシュのところへ逃げた。シムイに、「あなたの奴隷たちが今、ガテにいる」という知らせがあったので、
0240 シムイはすぐ、ろばに鞍をつけ、奴隷たちを捜しにガテのアキシュのところへ行った。シムイは行って、奴隷たちをガテから連れ戻して帰って来た。
0241 シムイがエルサレムからガテに行って帰って来たことは、ソロモンに告げられた。
0242 すると、王は人をやって、シムイを呼び出して言った。「私はあなたに、【主】にかけて誓わせ、『あなたが出て、どこかへ行ったなら、あなたは必ず殺されることをよく承知しておくように』と言って警告しておいたではないか。すると、あなたは私に、『よろしゅうございます。従います』と言った。
0243 それなのに、なぜ、【主】への誓いと、私があなたに命じた命令を守らなかったのか。」
0244 王はまた、シムイに言った。「あなたは自分の心に、あなたが私の父ダビデに対してなしたすべての悪を知っているはずだ。【主】はあなたの悪をあなたの頭に返されるが、
0245 ソロモン王は祝福され、ダビデの王座は【主】の前でとこしえまでも堅く立つであろう。」
0246 王はエホヤダの子ベナヤに命じた。彼は出て行って、シムイを打ち取った。こうして、王国はソロモンによって確立した。
0301 ソロモンはエジプトの王パロと互いに縁を結び、パロの娘をめとって、彼女をダビデの町に連れて来、自分の家と【主】の宮、および、エルサレムの回りの城壁を建て終わるまで、そこにおらせた。
0302 当時はまだ、【主】の名のための宮が建てられていなかったので、民はただ、高き所でいけにえをささげていた。
0303 ソロモンは【主】を愛し、父ダビデのおきてに歩んでいたが、ただし、彼は高き所でいけにえをささげ、香をたいていた。
0304 王はいけにえをささげるためにギブオンへ行った。そこは最も重要な高き所であったからである。ソロモンはそこの祭壇の上に一千頭の全焼のいけにえをささげた。
0305 その夜、ギブオンで【主】は夢のうちにソロモンに現れた。神は仰せられた。「あなたに何を与えようか。願え。」
0306 ソロモンは言った。「あなたは、あなたのしもべ、私の父ダビデに大いなる恵みを施されました。それは、彼が誠実と正義と真心とをもって、あなたの御前を歩んだからです。あなたは、この大いなる恵みを彼のために取っておき、きょう、その王座に着く子を彼にお与えになりました。
0307 わが神、【主】よ。今、あなたは私の父ダビデに代わって、このしもべを王とされました。しかし、私は小さい子どもで、出入りするすべを知りません。
0308 そのうえ、しもべは、あなたの選んだあなたの民の中におります。しかも、彼らはあまりにも多くて、数えることも調べることもできないほど、おびただしい民です。
0309 善悪を判断してあなたの民をさばくために聞き分ける心をしもべに与えてください。さもなければ、だれに、このおびただしいあなたの民をさばくことができるでしょうか。」
0310 この願い事は主の御心にかなった。ソロモンがこのことを願ったからである。
0311 神は彼に仰せられた。「あなたがこのことを求め、自分のために長寿を求めず、自分のために富を求めず、あなたの敵のいのちをも求めず、むしろ、自分のために正しい訴えを聞き分ける判断力を求めたので、
0312 今、わたしはあなたの言ったとおりにする。見よ。わたしはあなたに知恵の心と判断する心とを与える。あなたの先に、あなたのような者はなかった。また、あなたのあとに、あなたのような者も起こらない。
0313 そのうえ、あなたの願わなかったもの、富と誉れとをあなたに与える。あなたの生きているかぎり、王たちの中であなたに並ぶ者はひとりもないであろう。
0314 また、あなたの父ダビデが歩んだように、あなたもわたしのおきてと命令を守って、わたしの道を歩むなら、あなたの日を長くしよう。」
0315 ソロモンが目をさますと、なんと、それは夢であった。そこで、彼はエルサレムに行き、主の契約の箱の前に立って、全焼のいけにえをささげ、和解のいけにえをささげ、すべての家来たちを招いて祝宴を開いた。
0316 そのころ、ふたりの遊女が王のところに来て、その前に立った。
0317 ひとりの女が言った。「わが君。私とこの女とは同じ家に住んでおります。私はこの女といっしょに家にいるとき子どもを産みました。
0318 ところが、私が子どもを産んで三日たつと、この女も子どもを産みました。家には私たちのほか、だれもいっしょにいた者はなく、家にはただ私たちふたりだけでした。
0319 ところが、夜の間に、この女の産んだ子が死にました。この女が自分の子の上に伏したからです。
0320 この女は夜中に起きて、はしためが眠っている間に、私のそばから私の子を取って、自分のふところに抱いて寝かせ、自分の死んだ子を私のふところに寝かせたのです。
0321 朝、私が子どもに乳を飲ませようとして起きてみると、どうでしょう、子どもは死んでいるではありませんか。朝、その子をよく見てみると、まあ、その子は私が産んだ子ではないのです。」
0322 すると、もうひとりの女が言った。「いいえ、生きているのが私の子で、死んでいるのはあなたの子です。」先の女は言った。「いいえ、死んだのがあなたの子で、生きているのが私の子です。」こうして、女たちは王の前で言い合った。
0323 そこで王は言った。「ひとりは『生きているのが私の子で、死んでいるのはあなたの子だ』と言い、また、もうひとりは『いや、死んだのがあなたの子で、生きているのが私の子だ』と言う。」
0324 そして、王は、「剣をここに持って来なさい」と命じた。剣が王の前に持って来られると、
0325 王は言った。「生きている子どもを二つに断ち切り、半分をこちらに、半分をそちらに与えなさい。」
0326 すると、生きている子の母親は、自分の子を哀れに思って胸が熱くなり、王に申し立てて言った。「わが君。どうか、その生きている子をあの女にあげてください。決してその子を殺さないでください。」しかし、もうひとりの女は、「それを私のものにも、あなたのものにもしないで、断ち切ってください」と言った。
0327 そこで王は宣告を下して言った。「生きている子どもを初めの女に与えなさい。決してその子を殺してはならない。彼女がその子の母親なのだ。」
0328 イスラエル人はみな、王が下したさばきを聞いて、王を恐れた。神の知恵が彼のうちにあって、さばきをするのを見たからである。

次へ
戻る
INDEX