0401 サウルの子イシュ・ボシェテは、アブネルがヘブロンで死んだことを聞いて、気力を失った。イスラエル人もみな、うろたえた。
0402 サウルの子イシュ・ボシェテのもとに、ふたりの略奪隊の隊長がいた。ひとりの名はバアナ、もうひとりの名はレカブといって、ふたりともベニヤミン族のベエロテ人リモンの子であった。というのは、ベエロテもベニヤミンに属するとみなされていたからである。
0403 ベエロテ人はギタイムに逃げて、寄留者となった。今日もそうである。
0404 さて、サウルの子ヨナタンに、足の不自由な子がひとりいた。その子は、サウルとヨナタンの悲報がイズレエルからもたらされたとき五歳であった。うばがこの子を抱いて逃げるとき、あまり急いで逃げたので、この子を落とし、そのために足のなえた者になった。この子の名はメフィボシェテといった。
0405 ベエロテ人リモンの子のレカブとバアナが、日盛りに、イシュ・ボシェテの家にやって来たが、ちょうどその時、イシュ・ボシェテは昼寝をしていた。
0406 彼らは、小麦を取りに家の中まで入り込み、そこで、彼の下腹を突いて殺した。レカブとその兄弟バアナはのがれた。
0407 彼らが家に入ったとき、イシュ・ボシェテは寝室の寝床で寝ていたので、彼らは彼を突き殺して首をはね、その首を持って、一晩中、アラバへの道を歩いた。
0408 彼らはイシュ・ボシェテの首をヘブロンのダビデのもとに持って来て、王に言った。「ご覧ください。これは、あなたのいのちをねらっていたあなたの敵、サウルの子イシュ・ボシェテの首です。【主】は、きょう、わが主、王のために、サウルとその子孫に復讐されたのです。」
0409 すると、ダビデは、ベエロテ人リモンの子レカブとその兄弟バアナに答えて言った。「私のいのちをあらゆる苦難から救い出してくださった【主】は生きておられる。
0410 かつて私に、『ご覧ください。サウルは死にました』と告げて、自分自身では、良い知らせをもたらしたつもりでいた者を、私は捕らえて、ツィケラグで殺した。それが、その良い知らせの報いであった。
0411 まして、この悪者どもが、ひとりの正しい人を、その家の中の、しかも寝床の上で殺したときはなおのこと、今、私は彼の血の責任をおまえたちに問い、この地からおまえたちを除き去らないでおられようか。」
0412 ダビデが命じたので、若者たちは彼らを殺し、手、足を切り離した。そして、ヘブロンの池のほとりで木につるした。しかし、イシュ・ボシェテの首は、ヘブロンにあるアブネルの墓に持って行き、そこに葬った。
0501 イスラエルの全部族は、ヘブロンのダビデのもとに来てこう言った。「ご覧のとおり、私たちはあなたの骨肉です。
0502 これまで、サウルが私たちの王であった時でさえ、イスラエルを動かしていたのは、あなたでした。しかも、【主】はあなたに言われました。『あなたがわたしの民イスラエルを牧し、あなたがイスラエルの君主となる。』」
0503 イスラエルの全長老がヘブロンの王のもとに来たとき、ダビデ王は、ヘブロンで【主】の前に、彼らと契約を結び、彼らはダビデに油をそそいでイスラエルの王とした。
0504 ダビデは三十歳で王となり、四十年間、王であった。
0505 ヘブロンで七年六か月、ユダを治め、エルサレムで三十三年、全イスラエルとユダを治めた。
0506 王とその部下がエルサレムに来て、その地の住民エブス人のところに行ったとき、彼らはダビデに言った。「あなたはここに来ることはできない。目の見えない者、足のなえた者でさえ、あなたを追い出せる。」彼らは、ダビデがここに来ることができない、と考えていたからであった。
0507 しかし、ダビデはシオンの要害を攻め取った。これが、ダビデの町である。
0508 その日ダビデは、「だれでもエブス人を打とうとする者は、水汲みの地下道を抜けて、ダビデが憎む、目の見えない者、足のなえた者を打て」と言った。このため、「目の見えない者、足のなえた者は宮に入ってはならない」と言われている。
0509 こうしてダビデはこの要害を住まいとして、これをダビデの町と呼んだ。ダビデはミロから内側にかけて、回りに城壁を建てた。
0510 ダビデはますます大いなる者となり、万軍の神、【主】が彼とともにおられた。
0511 ツロの王ヒラムは、ダビデのもとに使者を送り、杉材、大工、石工を送った。彼らはダビデのために王宮を建てた。
0512 ダビデは、【主】が彼をイスラエルの王として堅く立て、ご自分の民イスラエルのために、彼の王国を盛んにされたのを知った。
0513 ダビデはヘブロンから来て後、エルサレムで、さらにそばめたちと妻たちをめとった。ダビデにはさらに、息子、娘たちが生まれた。
0514 エルサレムで彼に生まれた子の名は次のとおり。シャムア、ショバブ、ナタン、ソロモン、
0515 イブハル、エリシュア、ネフェグ、ヤフィア、
0516 エリシャマ、エルヤダ、エリフェレテであった。
0517 ペリシテ人は、ダビデが油をそそがれてイスラエルの王となったことを聞いた。そこでペリシテ人はみな、ダビデをねらって上って来た。ダビデはそれと聞き、要害に下って行った。
0518 ペリシテ人は来て、レファイムの谷間に展開した。
0519 そこで、ダビデは【主】に伺って言った。「ペリシテ人を攻めに上るべきでしょうか。彼らを私の手に渡してくださるでしょうか。」すると【主】はダビデに仰せられた。「上れ。わたしは必ず、ペリシテ人をあなたの手に渡すから。」
0520 それで、ダビデはバアル・ペラツィムに行き、そこで彼らを打った。そして言った。「【主】は、水が破れ出るように、私の前で私の敵を破られた。」それゆえ彼は、その場所の名をバアル・ペラツィムと呼んだ。
0521 彼らが自分たちの偶像を置き去りにして行ったので、ダビデとその部下はそれらを運んで捨てた。
0522 ところがペリシテ人は、なおもまた上って来て、レファイムの谷間に展開した。
0523 そこで、ダビデが【主】に伺ったところ、【主】は仰せられた。「上って行くな。彼らのうしろに回って行き、バルサム樹の林の前から彼らに向かえ。
0524 バルサム樹の林の上から行進の音が聞こえたら、そのとき、あなたは攻め上れ。そのとき、【主】はすでに、ペリシテ人の陣営を打つために、あなたより先に出ているから。」
0525 ダビデは、【主】が彼に命じたとおりにし、ゲバからゲゼルに至るまでのペリシテ人を打った。
0601 ダビデは再びイスラエルの精鋭三万をことごとく集めた。
0602 ダビデはユダのバアラから神の箱を運び上ろうとして、自分につくすべての民とともに出かけた。神の箱は、ケルビムの上に座しておられる万軍の【主】の名で呼ばれている。
0603 彼らは、神の箱を、新しい車に載せて、丘の上にあるアビナダブの家から運び出した。アビナダブの子、ウザとアフヨが新しい車を御していた。
0604 丘の上にあるアビナダブの家からそれを神の箱とともに運び出したとき、アフヨは箱の前を歩いていた。
0605 ダビデとイスラエルの全家は歌を歌い、立琴、琴、タンバリン、カスタネット、シンバルを鳴らして、【主】の前で、力の限り喜び踊った。
0606 こうして彼らがナコンの打ち場まで来たとき、ウザは神の箱に手を伸ばして、それを押さえた。牛がそれをひっくり返しそうになったからである。
0607 すると、【主】の怒りがウザに向かって燃え上がり、神は、その不敬の罪のために、彼をその場で打たれたので、彼は神の箱のかたわらのその場で死んだ。
0608 ダビデの心は激した。ウザによる割りこみに【主】が怒りを発せられたからである。それで、その場所はペレツ・ウザと呼ばれた。今日もそうである。
0609 その日ダビデは【主】を恐れて言った。「【主】の箱を、私のところにお迎えすることはできない。」
0610 ダビデは【主】の箱を彼のところ、ダビデの町に移したくなかったので、ガテ人オベデ・エドムの家にそれを回した。
0611 こうして、【主】の箱はガテ人オベデ・エドムの家に三か月とどまった。【主】はオベデ・エドムと彼の全家を祝福された。
0612 【主】が神の箱のことで、オベデ・エドムの家と彼に属するすべてのものを祝福された、ということがダビデ王に知らされた。そこでダビデは行って、喜びをもって神の箱をオベデ・エドムの家からダビデの町へ運び上った。
0613 【主】の箱をかつぐ者たちが六歩進んだとき、ダビデは肥えた牛をいけにえとしてささげた。
0614 ダビデは、【主】の前で、力の限り踊った。ダビデは亜麻布のエポデをまとっていた。
0615 ダビデとイスラエルの全家は、歓声をあげ、角笛を鳴らして、【主】の箱を運び上った。
0616 【主】の箱はダビデの町に入った。サウルの娘ミカルは窓から見おろし、ダビデ王が【主】の前ではねたり踊ったりしているのを見て、心の中で彼をさげすんだ。
0617 こうして彼らは、【主】の箱を運び込み、ダビデがそのために張った天幕の真ん中の場所に安置した。それから、ダビデは【主】の前に、全焼のいけにえと和解のいけにえをささげた。
0618 ダビデは、全焼のいけにえと和解のいけにえをささげ終えてから、万軍の【主】の御名によって民を祝福した。
0619 そして民全部、イスラエルの群集全部に、男にも女にも、それぞれ、輪型のパン一個、なつめやしの菓子一個、干しぶどうの菓子一個を分け与えた。こうして民はみな、それぞれ自分の家に帰った。
0620 ダビデが自分の家族を祝福するために戻ると、サウルの娘ミカルがダビデを迎えに出て来て言った。「イスラエルの王は、きょう、ほんとうに威厳がございましたね。ごろつきが恥ずかしげもなく裸になるように、きょう、あなたは自分の家来のはしための目の前で裸におなりになって。」
0621 ダビデはミカルに言った。「あなたの父よりも、その全家よりも、むしろ私を選んで【主】の民イスラエルの君主に任じられた【主】の前なのだ。私はその【主】の前で喜び踊るのだ。
0622 私はこれより、もっと卑しめられよう。私の目に卑しく見えても、あなたの言うそのはしためたちに、敬われたいのだ。」
0623 サウルの娘ミカルには死ぬまで子どもがなかった。