0101 初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。
0102 この方は、初めに神とともにおられた。
0103 すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできたものは一つもない。
0104 この方にいのちがあった。このいのちは人の光であった。
0105 光はやみの中に輝いている。やみはこれに打ち勝たなかった。
0106 神から遣わされたヨハネという人が現れた。
0107 この人はあかしのために来た。光についてあかしするためであり、すべての人が彼によって信じるためである。
0108 彼は光ではなかった。ただ光についてあかしするために来たのである。
0109 すべての人を照らすそのまことの光が世に来ようとしていた。
0110 この方はもとから世におられ、世はこの方によって造られたのに、世はこの方を知らなかった。
0111 この方はご自分のくにに来られたのに、ご自分の民は受け入れなかった。
0112 しかし、この方を受け入れた人々、すなわち、その名を信じた人々には、神の子どもとされる特権をお与えになった。
0113 この人々は、血によってではなく、肉の欲求や人の意欲によってでもなく、ただ、神によって生まれたのである。
0114 ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちておられた。
0115 ヨハネはこの方について証言し、叫んで言った。「『私のあとから来る方は、私にまさる方である。私より先におられたからである』と私が言ったのは、この方のことです。」
0116 私たちはみな、この方の満ち満ちた豊かさの中から、恵みの上にさらに恵みを受けたのである。
0117 というのは、律法はモーセによって与えられ、恵みとまことはイエス・キリストによって実現したからである。
0118 いまだかつて神を見た者はいない。父のふところにおられるひとり子の神が、神を説き明かされたのである。
0119 ヨハネの証言は、こうである。ユダヤ人たちが祭司とレビ人をエルサレムからヨハネのもとに遣わして、「あなたはどなたですか」と尋ねさせた。
0120 彼は告白して否まず、「私はキリストではありません」と言明した。
0121 また、彼らは聞いた。「では、いったい何ですか。あなたはエリヤですか。」彼は言った。「そうではありません。」「あなたはあの預言者ですか。」彼は答えた。「違います。」
0122 そこで、彼らは言った。「あなたはだれですか。私たちを遣わした人々に返事をしたいのですが、あなたは自分を何だと言われるのですか。」
0123 彼は言った。「私は、預言者イザヤが言ったように『主の道をまっすぐにせよ』と荒野で叫んでいる者の声です。」
0124 彼らは、パリサイ人の中から遣わされたのであった。
0125 彼らはまた尋ねて言った。「キリストでもなく、エリヤでもなく、またあの預言者でもないなら、なぜ、あなたはバプテスマを授けているのですか。」
0126 ヨハネは答えて言った。「私は水でバプテスマを授けているが、あなたがたの中に、あなたがたの知らない方が立っておられます。
0127 その方は私のあとから来られる方で、私はその方のくつのひもを解く値うちもありません。」
0128 この事があったのは、ヨルダンの向こう岸のベタニヤであって、ヨハネはそこでバプテスマを授けていた。
0129 その翌日、ヨハネは自分のほうにイエスが来られるのを見て言った。「見よ、世の罪を取り除く神の小羊。
0130 私が『私のあとから来る人がある。その方は私にまさる方である。私より先におられたからだ』と言ったのは、この方のことです。
0131 私もこの方を知りませんでした。しかし、この方がイスラエルに明らかにされるために、私は来て、水でバプテスマを授けているのです。」
0132 またヨハネは証言して言った。「御霊が鳩のように天から下って、この方の上にとどまられるのを私は見ました。
0133 私もこの方を知りませんでした。しかし、水でバプテスマを授けさせるために私を遣わされた方が、私に言われました。『御霊がある方の上に下って、その上にとどまられるのがあなたに見えたなら、その方こそ、聖霊によってバプテスマを授ける方である。』
0134 私はそれを見たのです。それで、この方が神の子であると証言しているのです。」
0135 その翌日、またヨハネは、ふたりの弟子とともに立っていたが、
0136 イエスが歩いて行かれるのを見て、「見よ、神の小羊」と言った。
0137 ふたりの弟子は、彼がそう言うのを聞いて、イエスについて行った。
0138 イエスは振り向いて、彼らがついて来るのを見て、言われた。「あなたがたは何を求めているのですか。」彼らは言った。「ラビ(訳して言えば、先生)。今どこにお泊まりですか。」
0139 イエスは彼らに言われた。「来なさい。そうすればわかります。」そこで、彼らはついて行って、イエスの泊まっておられる所を知った。そして、その日彼らはイエスといっしょにいた。時は 十時ごろであった。
0140 ヨハネから聞いて、イエスについて行ったふたりのうちのひとりは、シモン・ペテロの兄弟アンデレであった。
0141 彼はまず自分の兄弟シモンを見つけて、「私たちはメシヤ(訳して言えば、キリスト)に会った」と言った。
0142 彼はシモンをイエスのもとに連れて来た。イエスはシモンに目を留めて言われた。「あなたはヨハネの子シモンです。あなたをケパ(訳すとペテロ)と呼ぶことにします。」
0143 その翌日、イエスはガリラヤに行こうとされた。そして、ピリポを見つけて「わたしに従って来なさい」と言われた。
0144 ピリポは、ベツサイダの人で、アンデレやペテロと同じ町の出身であった。
0145 彼はナタナエルを見つけて言った。「私たちは、モーセが律法の中に書き、預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエスです。」
0146 ナタナエルは彼に言った。「ナザレから何の良いものが出るだろう。」ピリポは言った。「来て、そして、見なさい。」
0147 イエスはナタナエルが自分のほうに来るのを見て、彼について言われた。「これこそ、ほんとうのイスラエル人だ。彼のうちには偽りがない。」
0148 ナタナエルはイエスに言った。「どうして私をご存じなのですか。」イエスは言われた。「わたしは、ピリポがあなたを呼ぶ前に、あなたがいちじくの木の下にいるのを見たのです。」
0149 ナタナエルは答えた。「先生。あなたは神の子です。あなたはイスラエルの王です。」
0150 イエスは答えて言われた。「あなたがいちじくの木の下にいるのを見た、とわたしが言ったので、あなたは信じるのですか。あなたは、それよりもさらに大きなことを見ることになります。」
0151 そして言われた。「まことに、まことに、あなたがたに告げます。天が開けて、神の御使いたちが人の子の上を上り下りするのを、あなたがたはいまに見ます。」
0201 それから三日目に、ガリラヤのカナで婚礼があって、そこにイエスの母がいた。
0202 イエスも、また弟子たちも、その婚礼に招かれた。
0203 ぶどう酒がなくなったとき、母がイエスに向かって「ぶどう酒がありません」と言った。
0204 すると、イエスは母に言われた。「あなたはわたしと何の関係があるのでしょう。女の方。わたしの時はまだ来ていません。」
0205 母は手伝いの人たちに言った。「あの方が言われることを、何でもしてあげてください。」
0206 さて、そこには、ユダヤ人のきよめのしきたりによって、それぞれ八十リットルから百二十リットル入りの石の水がめが六つ置いてあった。
0207 イエスは彼らに言われた。「水がめに水を満たしなさい。」彼らは水がめを縁までいっぱいにした。
0208 イエスは彼らに言われた。「さあ、今くみなさい。そして宴会の世話役のところに持って行きなさい。」彼らは持って行った。
0209 宴会の世話役はぶどう酒になったその水を味わってみた。それがどこから来たのか、知らなかったので、──しかし、水をくんだ手伝いの者たちは知っていた──彼は、花婿を呼んで、
0210 言った。「だれでも初めに良いぶどう酒を出し、人々が十分飲んだころになると、悪いのを出すものだが、あなたは良いぶどう酒をよくも今まで取っておきました。」
0211 イエスはこのことを最初のしるしとしてガリラヤのカナで行い、ご自分の栄光を現された。それで、弟子たちはイエスを信じた。
0212 その後、イエスは母や兄弟たちや弟子たちといっしょに、カペナウムに下って行き、長い日数ではなかったが、そこに滞在された。
0213 ユダヤ人の過越の祭りが近づき、イエスはエルサレムに上られた。
0214 そして、宮の中に、牛や羊や鳩を売る者たちと両替人たちがすわっているのをご覧になり、
0215 細なわでむちを作って、羊も牛もみな、宮から追い出し、両替人の金を散らし、その台を倒し、
0216 また、鳩を売る者に言われた。「それをここから持って行け。わたしの父の家を商売の家としてはならない。」
0217 弟子たちは、「あなたの家を思う熱心がわたしを食い尽くす」と書いてあるのを思い起こした。
0218 そこで、ユダヤ人たちが答えて言った。「あなたがこのようなことをするからには、どんなしるしを私たちに見せてくれるのですか。」
0219 イエスは彼らに答えて言われた。「この神殿をこわしてみなさい。わたしは、三日でそれを建てよう。」
0220 そこで、ユダヤ人たちは言った。「この神殿は建てるのに四十六年かかりました。あなたはそれを、三日で建てるのですか。」
0221 しかし、イエスはご自分のからだの神殿のことを言われたのである。
0222 それで、イエスが死人の中からよみがえられたとき、弟子たちは、イエスがこのように言われたことを思い起こして、聖書とイエスが言われたことばとを信じた。
0223 イエスが、過越の祭りの祝いの間、エルサレムにおられたとき、多くの人々が、イエスの行われたしるしを見て、御名を信じた。
0224 しかし、イエスは、ご自身を彼らにお任せにならなかった。なぜなら、イエスはすべての人を知っておられたからであり、
0225 また、イエスはご自身で、人のうちにあるものを知っておられたので、人についてだれの証言も必要とされなかったからである。
0301 さて、パリサイ人の中にニコデモという人がいた。ユダヤ人の指導者であった。
0302 この人が、夜、イエスのもとに来て言った。「先生。私たちは、あなたが神のもとから来られた教師であることを知っています。神がともにおられるのでなければ、あなたがなさるこのようなしるしは、だれも行うことができません。」
0303 イエスは答えて言われた。「まことに、まことに、あなたに告げます。人は、新しく生まれなければ、神の国を見ることはできません。」
0304 ニコデモは言った。「人は、老年になっていて、どのようにして生まれることができるのですか。もう一度、母の胎に入って生まれることができましょうか。」
0305 イエスは答えられた。「まことに、まことに、あなたに告げます。人は、水と御霊によって生まれなければ、神の国に入ることができません。
0306 肉によって生まれた者は肉です。御霊によって生まれた者は霊です。
0307 あなたがたは新しく生まれなければならない、とわたしが言ったことを不思議に思ってはなりません。
0308 風はその思いのままに吹き、あなたはその音を聞くが、それがどこから来てどこへ行くかを知らない。御霊によって生まれる者もみな、そのとおりです。」
0309 ニコデモは答えて言った。「どうして、そのようなことがありうるのでしょう。」
0310 イエスは答えて言われた。「あなたはイスラエルの教師でありながら、こういうことがわからないのですか。
0311 まことに、まことに、あなたに告げます。わたしたちは、知っていることを話し、見たことをあかししているのに、あなたがたは、わたしたちのあかしを受け入れません。
0312 あなたがたは、わたしが地上のことを話したとき、信じないくらいなら、天上のことを話したとて、どうして信じるでしょう。
0313 だれも天に上った者はいません。しかし天から下った者はいます。すなわち人の子です。
0314 モーセが荒野で蛇を上げたように、人の子もまた上げられなければなりません。
0315 それは、信じる者がみな、人の子にあって永遠のいのちを持つためです。」
0316 神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである。
0317 神が御子を世に遣わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって世が救われるためである。
0318 御子を信じる者はさばかれない。信じない者は神のひとり子の御名を信じなかったので、すでにさばかれている。
0319 そのさばきというのは、こうである。光が世に来ているのに、人々は光よりもやみを愛した。その行いが悪かったからである。
0320 悪いことをする者は光を憎み、その行いが明るみに出されることを恐れて、光のほうに来ない。
0321 しかし、真理を行う者は、光のほうに来る。その行いが神にあってなされたことが明らかにされるためである。
0322 その後、イエスは弟子たちと、ユダヤの地に行き、彼らとともにそこに滞在して、バプテスマを授けておられた。
0323 一方ヨハネもサリムに近いアイノンでバプテスマを授けていた。そこには水が多かったからである。人々は次々にやって来て、バプテスマを受けていた。
0324 ──ヨハネは、まだ投獄されていなかったからである──
0325 それで、ヨハネの弟子たちが、あるユダヤ人ときよめについて論議した。
0326 彼らはヨハネのところに来て言った。「先生。見てください。ヨルダンの向こう岸であなたといっしょにいて、あなたが証言なさったあの方が、バプテスマを授けておられます。そして、みなあの方のほうへ行きます。」
0327 ヨハネは答えて言った。「人は、天から与えられるのでなければ、何も受けることはできません。
0328 あなたがたこそ、『私はキリストではなく、その前に遣わされた者である』と私が言ったことの証人です。
0329 花嫁を迎える者は花婿です。そこにいて、花婿のことばに耳を傾けているその友人は、花婿の声を聞いて大いに喜びます。それで、私もその喜びで満たされているのです。
0330 あの方は盛んになり私は衰えなければなりません。」
0331 上から来る方は、すべてのものの上におられ、地から出る者は地に属し、地のことばを話す。天から来る方は、すべてのものの上におられる。
0332 この方は見たこと、また聞いたことをあかしされるが、だれもそのあかしを受け入れない。
0333 そのあかしを受け入れた者は、神は真実であるということに確認の印を押したのである。
0334 神がお遣わしになった方は、神のことばを話される。神が御霊を無限に与えられるからである。
0335 父は御子を愛しておられ、万物を御子の手にお渡しになった。
0336 御子を信じる者は永遠のいのちを持つが、御子に聞き従わない者は、いのちを見ることがなく、神の怒りがその上にとどまる。