2201 さて、過越の祭りといわれる、種なしパンの祝いが近づいていた。
2202 祭司長、律法学者たちは、イエスを殺すための良い方法を捜していた。というのは、彼らは民衆を恐れていたからである。
2203 さて、十二弟子のひとりで、イスカリオテと呼ばれるユダに、サタンが入った。
2204 ユダは出かけて行って、祭司長たちや宮の守衛長たちと、どのようにしてイエスを彼らに引き渡そうかと相談した。
2205 彼らは喜んで、ユダに金をやる約束をした。
2206 ユダは承知した。そして群衆のいないときにイエスを彼らに引き渡そうと機会をねらっていた。
2207 さて、過越の小羊のほふられる、種なしパンの日が来た。
2208 イエスは、こう言ってペテロとヨハネを遣わされた。「わたしたちの過越の食事ができるように、準備をしに行きなさい。」
2209 彼らはイエスに言った。「どこに準備しましょうか。」
2210 イエスは言われた。「町に入ると、水がめを運んでいる男に会うから、その人が入る家にまでついて行きなさい。
2211 そして、その家の主人に、『弟子たちといっしょに過越の食事をする客間はどこか、と先生があなたに言っておられる』と言いなさい。
2212 すると主人は、席が整っている二階の大広間を見せてくれます。そこで準備をしなさい。」
2213 彼らが出かけて見ると、イエスの言われたとおりであった。それで、彼らは過越の食事の用意をした。
2214 さて時間になって、イエスは食卓に着かれ、使徒たちもイエスといっしょに席に着いた。
2215 イエスは言われた。「わたしは、苦しみを受ける前に、あなたがたといっしょに、この過越の食事をすることをどんなに望んでいたことか。
2216 あなたがたに言いますが、過越が神の国において成就するまでは、わたしはもはや二度と過越の食事をすることはありません。」
2217 そしてイエスは、杯を取り、感謝をささげて後、言われた。「これを取って、互いに分けて飲みなさい。
2218 あなたがたに言いますが、今から、神の国が来る時までは、わたしはもはや、ぶどうの実で造った物を飲むことはありません。」
2219 それから、パンを取り、感謝をささげてから、裂いて、弟子たちに与えて言われた。「これは、あなたがたのために与える、わたしのからだです。わたしを覚えてこれを行いなさい。」
2220 食事の後、杯も同じようにして言われた。「この杯は、あなたがたのために流されるわたしの血による新しい契約です。
2221 しかし、見なさい。わたしを裏切る者の手が、わたしとともに食卓にあります。
2222 人の子は、定められたとおりに去って行きます。しかし、人の子を裏切るような人間はわざわいです。」
2223 そこで弟子たちは、そんなことをしようとしている者は、いったいこの中のだれなのかと、互いに議論をし始めた。
2224 また、彼らの間には、この中でだれが一番偉いだろうかという論議も起こった。
2225 すると、イエスは彼らに言われた。「異邦人の王たちは人々を支配し、また人々の上に権威を持つ者は守護者と呼ばれています。
2226 だが、あなたがたは、それではいけません。あなたがたの間で一番偉い人は一番年の若い者のようになりなさい。また、治める人は仕える人のようでありなさい。
2227 食卓に着く人と給仕する者と、どちらが偉いでしょう。むろん、食卓に着く人でしょう。しかしわたしは、あなたがたのうちにあって給仕する者のようにしています。
2228 けれども、あなたがたこそ、わたしのさまざまの試練の時にも、わたしについて来てくれた人たちです。
2229 わたしの父がわたしに王権を与えてくださったように、わたしもあなたがたに王権を与えます。
2230 それであなたがたは、わたしの国でわたしの食卓に着いて食事をし、王座に着いて、イスラエルの十二の部族をさばくのです。
2231 シモン、シモン。見なさい。サタンが、あなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って聞き届けられました。
2232 しかし、わたしは、あなたの信仰がなくならないように、あなたのために祈りました。だからあなたは、立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」
2233 シモンはイエスに言った。「主よ。ごいっしょになら、牢であろうと、死であろうと、覚悟はできております。」
2234 しかし、イエスは言われた。「ペテロ。あなたに言いますが、きょう鶏が鳴くまでに、あなたは三度、わたしを知らないと言います。」
2235 それから、弟子たちに言われた。「わたしがあなたがたを、財布も旅行袋もくつも持たせずに旅に出したとき、何か足りない物がありましたか。」彼らは言った。「いいえ。何もありませんでした。」
2236 そこで言われた。「しかし、今は、財布のある者は財布を持ち、同じく袋を持ち、剣のない者は着物を売って剣を買いなさい。
2237 あなたがたに言いますが、『彼は罪人たちの中に数えられた』と書いてあるこのことが、わたしに必ず実現するのです。わたしにかかわることは実現します。」
2238 彼らは言った。「主よ。このとおり、ここに剣が二振りあります。」イエスは彼らに、「それで十分」と言われた。
2239 それからイエスは出て、いつものようにオリーブ山に行かれ、弟子たちも従った。
2240 いつもの場所に着いたとき、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさい」と言われた。
2241 そしてご自分は、弟子たちから石を投げて届くほどの所に離れて、ひざまずいて、こう祈られた。
2242 「父よ。みこころならば、この杯をわたしから取りのけてください。しかし、わたしの願いではなく、みこころのとおりにしてください。」
2243 すると、御使いが天からイエスに現れて、イエスを力づけた。
2244 イエスは、苦しみもだえて、いよいよ切に祈られた。汗が血のしずくのように地に落ちた。
2245 イエスは祈り終わって立ち上がり、弟子たちのところに来て見ると、彼らは悲しみの果てに、眠り込んでしまっていた。
2246 それで、彼らに言われた。「なぜ、眠っているのか。起きて、誘惑に陥らないように祈っていなさい。」
2247 イエスがまだ話をしておられるとき、群衆がやって来た。十二弟子のひとりで、ユダという者が、先頭に立っていた。ユダはイエスに口づけしようとして、みもとに近づいた。
2248 だが、イエスは彼に、「ユダ。口づけで、人の子を裏切ろうとするのか」と言われた。
2249 イエスの回りにいた者たちは、事の成り行きを見て、「主よ。剣で撃ちましょうか」と言った。
2250 そしてそのうちのある者が、大祭司のしもべに撃ってかかり、その右の耳を切り落とした。
2251 するとイエスは、「やめなさい。それまで」と言われた。そして、耳にさわって彼をいやされた。
2252 そして押しかけて来た祭司長、宮の守衛長、長老たちに言われた。「まるで強盗にでも向かうように、剣や棒を持ってやって来たのですか。
2253 あなたがたは、わたしが毎日宮でいっしょにいる間は、わたしに手出しもしなかった。しかし、今はあなたがたの時です。暗やみの力です。」
2254 彼らはイエスを捕らえ、引いて行って、大祭司の家に連れて来た。ペテロは、遠く離れてついて行った。
2255 彼らは中庭の真ん中に火をたいて、みなすわり込んだので、ペテロも中に混じって腰をおろした。
2256 すると、女中が、火あかりの中にペテロのすわっているのを見つけ、まじまじと見て言った。「この人も、イエスといっしょにいました。」
2257 ところが、ペテロはそれを打ち消して、「いいえ、私はあの人を知りません」と言った。
2258 しばらくして、ほかの男が彼を見て、「あなたも、彼らの仲間だ」と言った。しかしペテロは、「いや、違います」と言った。
2259 それから一時間ほどたつと、また別の男が、「確かにこの人も彼といっしょだった。この人もガリラヤ人だから」と言い張った。
2260 しかしペテロは、「あなたの言うことは私にはわかりません」と言った。それといっしょに、彼がまだ言い終えないうちに、鶏が鳴いた。
2261 主が振り向いてペテロを見つめられた。ペテロは、「きょう、鶏が鳴くまでに、あなたは、三度わたしを知らないと言う」と言われた主のおことばを思い出した。
2262 彼は、外に出て、激しく泣いた。
2263 さて、イエスの監視人どもは、イエスをからかい、むちでたたいた。
2264 そして目隠しをして。「言い当ててみろ。今たたいたのはだれか」と聞いたりした。
2265 また、そのほかさまざまな悪口をイエスに浴びせた。
2266 夜が明けると、民の長老会、それに祭司長、律法学者たちが、集まった。彼らはイエスを議会に連れ出し、
2267 こう言った。「あなたがキリストなら、そうだと言いなさい。」しかしイエスは言われた。「わたしが言っても、あなたがたは決して信じないでしょうし、
2268 わたしが尋ねても、あなたがたは決して答えないでしょう。
2269 しかし今から後、人の子は、神の大能の右の座に着きます。」
2270 彼らはみなで言った。「ではあなたは神の子ですか。」すると、イエスは彼らに「あなたがたの言うとおり、わたしはそれです」と言われた。
2271 すると彼らは「これでもまだ証人が必要でしょうか。私たち自身が彼の口から直接それを聞いたのだから」と言った。
2301 そこで、彼らは全員が立ち上がり、イエスをピラトのもとに連れて行った。
2302 そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」
2303 するとピラトはイエスに、「あなたは、ユダヤ人の王ですか」と尋ねた。イエスは答えて。「そのとおりです」と言われた。
2304 ピラトは祭司長たちや群衆に。「この人には何の罪も見つからない」と言った。
2305 しかし彼らはあくまで言い張って、「この人は、ガリラヤからここまで、ユダヤ全土で教えながら、この民を扇動しているのです」と言った。
2306 それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ねて、
2307 ヘロデの支配下にあるとわかると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもそのころエルサレムにいたからである。
2308 ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。ずっと前からイエスのことを聞いていたので、イエスに会いたいと思っていたし、イエスの行う何かの奇蹟を見たいと考えていたからである。
2309 それで、いろいろと質問したが、イエスは彼に何もお答えにならなかった。
2310 祭司長たちと律法学者たちは立って、イエスを激しく訴えていた。
2311 ヘロデは、自分の兵士たちといっしょにイエスを侮辱したり嘲弄したりしたあげく、はでな衣を着せて、ピラトに送り返した。
2312 この日、ヘロデとピラトは仲よくなった。それまでは互いに敵対していたのである。
2313 ピラトは祭司長たちと指導者たちと民衆とを呼び集め、
2314 こう言った。「あなたがたは、この人を、民衆を惑わす者として、私のところに連れて来たけれども、私があなたがたの前で取り調べたところ、あなたがたが訴えているような罪は別に何も見つかりません。
2315 ヘロデとても同じです。彼は私たちにこの人を送り返しました。見なさい。この人は、死罪に当たることは、何一つしていません。
2316 だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」
2318 しかし彼らは、声をそろえて叫んだ。「この人を除け。バラバを釈放しろ。」
2319 バラバとは、都に起こった暴動と人殺しのかどで、牢に入っていた者である。
2320 ピラトは、イエスを釈放しようと思って、彼らに、もう一度呼びかけた。
2321 しかし、彼らは叫び続けて、「十字架だ。十字架につけろ」と言った。
2322 しかしピラトは三度目に彼らにこう言った。「あの人がどんな悪いことをしたというのか。あの人には、死に当たる罪は、何も見つかりません。だから私は、懲らしめたうえで、釈放します。」
2323 ところが、彼らはあくまで主張し続け、十字架につけるよう大声で要求した。そしてついにその声が勝った。
2324 ピラトは、彼らの要求どおりにすることを宣告した。
2325 すなわち、暴動と人殺しのかどで牢に入っていた男を願いどおりに釈放し、イエスを彼らに引き渡して好きなようにさせた。
2326 彼らは、イエスを引いて行く途中、いなかから出て来たシモンというクレネ人をつかまえ、この人に十字架を負わせてイエスのうしろから運ばせた。
2327 大ぜいの民衆やイエスのことを嘆き悲しむ女たちの群れが、イエスのあとについて行った。
2328 しかしイエスは、女たちのほうに向いて、こう言われた。「エルサレムの娘たち。わたしのことで泣いてはいけない。むしろ自分自身と、自分の子どもたちのことのために泣きなさい。
2329 なぜなら人々が、『不妊の女、子を産んだことのない胎、飲ませたことのない乳房は、幸いだ』と言う日が来るのですから。
2330 そのとき、人々は山に向かって、『われわれの上に倒れかかってくれ』と言い、丘に向かって、『われわれをおおってくれ』と言い始めます。
2331 彼らが生木にこのようなことをするのなら、枯れ木には、いったい、何が起こるでしょう。」
2332 ほかにもふたりの犯罪人が、イエスとともに死刑にされるために、引かれて行った。
2333 「どくろ」と呼ばれている所に来ると、そこで彼らは、イエスと犯罪人とを十字架につけた。犯罪人のひとりは右に、ひとりは左に。
2334 そのとき、イエスはこう言われた。「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです。」彼らは、くじを引いて、イエスの着物を分けた。
2335 民衆はそばに立ってながめていた。指導者たちもあざ笑って言った。「あれは他人を救った。もし、神のキリストで、選ばれた者なら、自分を救ってみろ。」
2336 兵士たちもイエスをあざけり、そばに寄って来て、酸いぶどう酒を差し出し、
2337 「ユダヤ人の王なら、自分を救え」と言った。
2338 「これはユダヤ人の王」と書いた札もイエスの頭上に掲げてあった。
2339 十字架にかけられていた犯罪人のひとりはイエスに悪口を言い、「あなたはキリストではないか。自分と私たちを救え」と言った。
2340 ところが、もうひとりのほうが答えて、彼をたしなめて言った。「おまえは神をも恐れないのか。おまえも同じ刑罰を受けているではないか。
2341 われわれは、自分のしたことの報いを受けているのだからあたりまえだ。だがこの方は、悪いことは何もしなかったのだ。」
2342 そして言った。「イエスさま。あなたの御国の位にお着きになるときには、私を思い出してください。」
2343 イエスは、彼に言われた。「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいます。」
2344 そのときすでに十二時ごろになっていたが、全地が暗くなって、三時まで続いた。
2345 太陽は光を失っていた。また、神殿の幕は真っ二つに裂けた。
2346 イエスは大声で叫んで、言われた。「父よ。わが霊を御手にゆだねます。」こう言って、息を引き取られた。
2347 この出来事を見た百人隊長は、神をほめたたえ、「ほんとうに、この人は正しい方であった」と言った。
2348 また、この光景を見に集まっていた群衆もみな、こういういろいろの出来事を見たので、胸をたたいて悲しみながら帰った。
2349 しかし、イエスの知人たちと、ガリラヤからイエスについて来ていた女たちとはみな、遠く離れて立ち、これらのことを見ていた。
2350 さてここに、ヨセフという、議員のひとりで、りっぱな、正しい人がいた。
2351 この人は議員たちの計画や行動には同意しなかった。彼は、アリマタヤというユダヤ人の町の人で、神の国を待ち望んでいた。
2352 この人が、ピラトのところに行って、イエスのからだの下げ渡しを願った。
2353 それから、イエスを取り降ろして、亜麻布で包み、そして、まだだれをも葬ったことのない、岩に掘られた墓にイエスを納めた。
2354 この日は準備の日で、もう安息日が始まろうとしていた。
2355 ガリラヤからイエスといっしょに出て来た女たちは、ヨセフについて行って、墓と、イエスのからだの納められる様子を見届けた。
2356 そして、戻って来て、香料と香油を用意した。安息日には、戒めに従って、休んだが、
2401 週の初めの日の明け方早く、女たちは、準備しておいた香料を持って墓に着いた。
2402 見ると、石が墓からわきにころがしてあった。
2403 入って見ると、主イエスのからだはなかった。
2404 そのため女たちが途方にくれていると、見よ、まばゆいばかりの衣を着たふたりの人が、女たちの近くに来た。
2405 恐ろしくなって、地面に顔を伏せていると、その人たちはこう言った。「あなたがたは、なぜ生きている方を死人の中で捜すのですか。
2406 ここにはおられません。よみがえられたのです。まだガリラヤにおられたころ、お話しになったことを思い出しなさい。
2407 人の子は必ず罪人らの手に引き渡され、十字架につけられ、三日目によみがえらなければならない、と言われたでしょう。」
2408 女たちはイエスのみことばを思い出した。
2409 そして、墓から戻って、十一弟子とそのほかの人たち全部に、一部始終を報告した。
2410 この女たちは、マグダラのマリヤとヨハンナとヤコブの母マリヤとであった。彼女たちといっしょにいたほかの女たちも、このことを使徒たちに話した。
2411 ところが使徒たちにはこの話はたわごとと思われたので、彼らは女たちを信用しなかった。
2412 〔しかしペテロは、立ち上がると走って墓へ行き、かがんでのぞき込んだところ、亜麻布だけがあった。それで、この出来事に驚いて家に帰った。〕
2413 ちょうどこの日、ふたりの弟子が、エルサレムから十一キロメートル余り離れたエマオという村に行く途中であった。
2414 そして、ふたりでこのいっさいの出来事について話し合っていた。
2415 話し合ったり、論じ合ったりしているうちに、イエスご自身が近づいて、彼らとともに道を歩いておられた。
2416 しかしふたりの目はさえぎられていて、イエスだとはわからなかった。
2417 イエスは彼らに言われた。「歩きながらふたりで話し合っているその話は、何のことですか。」すると、ふたりは暗い顔つきになって、立ち止まった。
2418 クレオパというほうが答えて言った。「エルサレムにいながら、近ごろそこで起こった事を、あなただけが知らなかったのですか。」
2419 イエスが、「どんな事ですか」と聞かれると、ふたりは答えた。「ナザレ人イエスのことです。この方は、神とすべての民の前で、行いにもことばにも力のある預言者でした。
2420 それなのに、私たちの祭司長や指導者たちは、この方を引き渡して、死刑に定め、十字架につけたのです。
2421 しかし私たちは、この方こそイスラエルを贖ってくださるはずだ、と望みをかけていました。事実、そればかりでなく、その事があってから三日目になりますが、
2422 また仲間の女たちが私たちを驚かせました。その女たちは朝早く墓に行ってみましたが、
2423 イエスのからだが見当たらないので、戻って来ました。そして御使いたちの幻を見たが、御使いたちがイエスは生きておられると告げた、と言うのです。
2424 それで、仲間の何人かが墓に行ってみたのですが、はたして女たちの言ったとおりで、イエスさまは見当たらなかった、というのです。」
2425 するとイエスは言われた。「ああ、愚かな人たち。預言者たちの言ったすべてを信じない、心の鈍い人たち。
2426 キリストは、必ず、そのような苦しみを受けて、それから、彼の栄光に入るはずではなかったのですか。」
2427 それから、イエスは、モーセおよびすべての預言者から始めて、聖書全体の中で、ご自分について書いてある事がらを彼らに説き明かされた。
2428 彼らは目的の村に近づいたが、イエスはまだ先へ行きそうなご様子であった。
2429 それで、彼らが、「いっしょにお泊まりください。そろそろ夕刻になりますし、日もおおかた傾きましたから」と言って無理に願ったので、イエスは彼らといっしょに泊まるために中に入られた。
2430 彼らとともに食卓に着かれると、イエスはパンを取って祝福し、裂いて彼らに渡された。
2431 それで、彼らの目が開かれ、イエスだとわかった。するとイエスは、彼らには見えなくなった。
2432 そこでふたりは話し合った。「道々お話しになっている間も、聖書を説明してくださった間も、私たちの心はうちに燃えていたではないか。」
2433 すぐさまふたりは立って、エルサレムに戻ってみると、十一使徒とその仲間が集まって、
2434 「ほんとうに主はよみがえって、シモンにお姿を現された」と言っていた。
2435 彼らも、道であったいろいろなことや、パンを裂かれたときにイエスだとわかった次第を話した。
2436 これらのことを話している間に、イエスご自身が彼らの真ん中に立たれた。
2437 彼らは驚き恐れて、霊を見ているのだと思った。
2438 すると、イエスは言われた。「なぜ取り乱しているのですか。どうして心に疑いを起こすのですか。
2439 わたしの手やわたしの足を見なさい。まさしくわたしです。わたしにさわって、よく見なさい。霊ならこんな肉や骨はありません。わたしは持っています。」
2441 それでも、彼らは、うれしさのあまりまだ信じられず、不思議がっているので、イエスは、「ここに何か食べ物がありますか」と言われた。
2442 それで、焼いた魚を一切れ差し上げると、
2443 イエスは、彼らの前で、それを取って召し上がった。
2444 さて、そこでイエスは言われた。「わたしがまだあなたがたといっしょにいたころ、あなたがたに話したことばはこうです。わたしについてモーセの律法と預言者と詩篇とに書いてあることは、必ず全部成就するということでした。」
2445 そこで、イエスは、聖書を悟らせるために彼らの心を開いて、
2446 こう言われた。「次のように書いてあります。キリストは苦しみを受け、三日目に死人の中からよみがえり、
2447 その名によって、罪の赦しを得させる悔い改めが、エルサレムから始まってあらゆる国の人々に宣べ伝えられる。
2448 あなたがたは、これらのことの証人です。
2449 さあ、わたしは、わたしの父の約束してくださったものをあなたがたに送ります。あなたがたは、いと高き所から力を着せられるまでは、都にとどまっていなさい。」
2450 それから、イエスは、彼らをベタニヤまで連れて行き、手を上げて祝福された。
2451 そして祝福しながら、彼らから離れて行かれた。52 彼らは、非常な喜びを抱いてエルサレムに帰り、
2453 いつも宮にいて神をほめたたえていた。