1001 サムエルは油のつぼを取ってサウルの頭にそそぎ、彼に口づけして言った。「【主】が、ご自身のものである民の君主として、あなたに油をそそがれたではありませんか。
1002 あなたが、きょう、私のもとを離れて行くとき、ベニヤミンの領内のツェルツァフにあるラケルの墓のそばで、ふたりの人に会いましょう。そのふたりはあなたに、『あなたが捜して歩いておられるあの雌ろばは見つかりました。ところで、あなたの父上は、雌ろばのことなどあきらめて、息子のために、どうしたらよかろうと言って、あなたがたのことを心配しておられます』と言うでしょう。
1003 あなたがそこからなお進んで、タボルの樫の木のところまで来ると、そこでベテルの神のもとに上って行く三人の人に会います。ひとりは子やぎ三頭を持ち、ひとりは丸型のパン三つを持ち、ひとりはぶどう酒の皮袋一つを持っています。
1004 彼らはあなたに安否を尋ね、あなたにパンを二つくれます。あなたは彼らの手から受け取りなさい。
1005 その後、ペリシテ人の守備隊のいる神のギブアに着きます。あなたがその町に入るとき、琴、タンバリン、笛、立琴を鳴らす者を先頭に、高き所から降りて来る預言者の一団に出会います。彼らは預言をしていますが、
1006 【主】の霊があなたの上に激しく下ると、あなたも彼らといっしょに預言して、あなたは新しい人に変えられます。
1007 このしるしがあなたに起こったら、手当たりしだいに何でもしなさい。神があなたとともにおられるからです。
1008 あなたは私より先にギルガルに下りなさい。私も全焼のいけにえと和解のいけにえとをささげるために、あなたのところへ下って行きます。あなたは私が着くまで七日間、そこで待たなければなりません。私がなすべきことを教えます。」
1009 サウルがサムエルをあとにして去って行ったとき、神はサウルの心を変えて新しくされた。こうして、これらすべてのしるしは、その日に起こった。
1010 彼らがそこ、ギブアに着くと、なんと、預言者の一団が彼に出会い、神の霊が彼の上に激しく下った。それで彼も彼らの間で預言を始めた。
1011 以前からサウルを知っている者みなが、彼が預言者たちといっしょに預言しているのを見た。民は互いに言った。「キシュの息子は、いったいどうしたことか。サウルもまた、預言者のひとりなのか。」
1012 そこにいたひとりも、これに応じて、「彼らの父はだれだろう」と言った。こういうわけで、「サウルもまた、預言者のひとりなのか」ということが、ことわざになった。
1013 サウルは預言することを終えて、高き所に行った。
1014 サウルのおじは、彼とその若い者に言った。「どこへ行っていたのか。」するとサウルは答えた。「雌ろばを捜しにです。見つからないのでサムエルのところに行って来ました。」
1015 サウルのおじは言った。「サムエルはあなたがたに何と言ったか、私に話してくれ。」
1016 サウルはおじに言った。「雌ろばは見つかっていると、はっきり私たちに知らせてくれました。」サウルは、サムエルが語った王位のことについては、おじに話さなかった。
1017 サムエルはミツパで、民を【主】のもとに呼び集め、
1018 イスラエル人に言った。「イスラエルの神、【主】はこう仰せられる。『わたしはイスラエルをエジプトから連れ上り、あなたがたを、エジプトの手と、あなたがたをしいたげていたすべての王国の手から、救い出した。』
1019 ところで、あなたがたはきょう、すべてのわざわいと苦しみからあなたがたを救ってくださる、あなたがたの神を退けて、『いや、私たちの上に王を立ててください』と言った。今、あなたがたは、部族ごとに、分団ごとに、【主】の前に出なさい。」
1020 こうしてサムエルは、イスラエルの全部族を近づけた。するとベニヤミンの部族がくじで取り分けられた。
1021 それでベニヤミンの部族を、その氏族ごとに近づけたところ、マテリの氏族が取り分けられ、そしてキシュの子サウルが取り分けられた。そこで人々はサウルを捜したが、見つからなかった。
1022 それで人々がまた、【主】に、「あの人はもう、ここに来ているのですか」と尋ねた。【主】は、「見よ。彼は荷物の間に隠れている」と言われた。
1023 人々は走って行って、そこから彼を連れて来た。サウルが民の中に立つと、民のだれよりも、肩から上だけ高かった。
1024 サムエルは民のすべてに言った。「見よ。【主】がお選びになったこの人を。民のうちだれも、この人に並ぶ者はいない。」民はみな、喜び叫んで、「王さま。ばんざい」と言った。
1025 サムエルは民に王の責任を告げ、それを文書にしるして【主】の前に納めた。こうしてサムエルは民をみな、それぞれ自分の家へ帰した。
1026 サウルもまた、ギブアの自分の家へ帰った。神に心を動かされた勇者は、彼について行った。
1027 しかし、よこしまな者たちは、「この者がどうしてわれわれを救えよう」と言って軽蔑し、彼に贈り物を持って来なかった。しかしサウルは黙っていた。
1101 その後、アモン人ナハシュが上って来て、ヤベシュ・ギルアデに対して陣を敷いた。ヤベシュの人々はみな、ナハシュに言った。「私たちと契約を結んでください。そうすれば、私たちはあなたに仕えましょう。」
1102 そこでアモン人ナハシュは彼らに言った。「次の条件で契約を結ぼう。おまえたちみなの者の右の目をえぐり取ることだ。それをもって全イスラエルにそしりを負わせよう。」
1103 ヤベシュの長老たちは彼に言った。「七日の猶予を与えてください。イスラエルの国中に使者を送りたいのです。もし、私たちを救う者がいなければ、あなたに降伏します。」
1104 使者たちはサウルのギブアに来て、このことをそこの民の耳に入れた。民はみな、声をあげて泣いた。
1105 そこへ、サウルが牛を追って畑から帰って来た。サウルは言った。「民が泣いているが、どうしたのですか。」そこで、みなが、ヤベシュの人々のことを彼に話した。
1106 サウルがこれらのことを聞いたとき、神の霊がサウルの上に激しく下った。それで彼の怒りは激しく燃え上がった。
1107 彼は一くびきの牛を取り、これを切り分け、それを使者に託してイスラエルの国中に送り、「サウルとサムエルとに従って出て来ない者の牛は、このようにされる」と言わせた。民は【主】を恐れて、いっせいに出て来た。
1108 サウルがベゼクで彼らを数えたとき、イスラエルの人々は三十万人、ユダの人々は三万人であった。
1109 彼らは、やって来た使者たちに言った。「ヤベシュ・ギルアデの人にこう言わなければならない。あすの真昼ごろ、あなたがたに救いがある。」使者たちは帰って来て、ヤベシュの人々に告げたので、彼らは喜んだ。
1110 ヤベシュの人々は言った。「私たちは、あす、あなたがたに降伏します。あなたがたのよいと思うように私たちにしてください。」
1111 翌日、サウルは民を三組に分け、夜明けの見張りの時、陣営に突入し、昼までアモン人を打った。残された者もいたが、散って行って、ふたりの者が共に残ることはなかった。
1112 そのとき、民はサムエルに言った。「サウルがわれわれを治めるのか、などと言ったのはだれでしたか。その者たちを引き渡してください。彼らを殺します。」
1113 しかしサウルは言った。「きょうは人を殺してはならない。きょう、【主】がイスラエルを救ってくださったのだから。」
1114 それからサムエルは民に言った。「さあ、われわれはギルガルへ行って、そこで王権を創設する宣言をしよう。」
1115 民はみなギルガルへ行き、ギルガルで、【主】の前に、サウルを王とした。彼らはそこで【主】の前に和解のいけにえをささげ、サウルとイスラエルのすべての者が、そこで大いに喜んだ。
1201 サムエルはすべてのイスラエル人に言った。「見よ。あなたがたが私に言ったことを、私はことごとく聞き入れ、あなたがたの上にひとりの王を立てた。
1202 今、見なさい。王はあなたがたの先に立って歩んでいる。この私は年をとり、髪も白くなった。それに私の息子たちは、あなたがたとともにいるようになった。私は若い時から今日まで、あなたがたの先に立って歩んだ。
1203 さあ、今、【主】の前、油そそがれた者の前で、私を訴えなさい。私はだれかの牛を取っただろうか。だれかのろばを取っただろうか。だれかを苦しめ、だれかを迫害しただろうか。だれかの手からわいろを取って自分の目をくらましただろうか。もしそうなら、私はあなたがたにお返しする。」
1204 彼らは言った。「あなたは私たちを苦しめたことも、迫害したことも、人の手から何かを取ったこともありません。」
1205 そこでサムエルは彼らに言った。「あなたがたが私の手に何も見いださなかったことについては、きょう、あなたがたの間で【主】が証人であり、主に油そそがれた者が証人である。」すると彼らは言った。「その方が証人です。」
1206 サムエルは民に言った。「モーセとアロンを立てて、あなたがたの先祖をエジプトの地から上らせたのは【主】である。
1207 さあ、立ちなさい。私は、【主】があなたがたと、あなたがたの先祖とに行われたすべての正義のみわざを、【主】の前であなたがたに説き明かそう。
1208 ヤコブがエジプトに行ったとき、あなたがたの先祖は【主】に叫んだ。【主】はモーセとアロンを遣わされ、この人々はあなたがたの先祖をエジプトから連れ出し、この地に住まわせた。
1209 ところが、彼らは彼らの神、【主】を忘れたので、主は彼らをハツォルの将軍シセラの手、ペリシテ人の手、モアブの王の手に売り渡された。それで彼らが戦いをいどまれたのである。
1210 彼らが、『私たちは【主】を捨て、バアルやアシュタロテなどに仕えて罪を犯しました。私たちを敵の手から救い出してください。私たちはあなたに仕えます』と言って、【主】に叫び求めたとき、
1211 【主】はエルバアルとベダンとエフタとサムエルを遣わし、あなたがたを周囲の敵の手から救い出してくださった。それであなたがたは安らかに暮らしてきた。
1212 あなたがたは、アモン人の王ナハシュがあなたがたに向かって来るのを見たとき、あなたがたの神、【主】があなたがたの王であるのに、『いや、王が私たちを治めなければならない』と私に言った。
1213 今、見なさい。あなたがたが選び、あなたがたが求めた王を。見なさい。【主】はあなたがたの上に王を置かれた。
1214 もし、あなたがたが【主】を恐れ、主に仕え、主の御声に聞き従い、【主】の命令に逆らわず、また、あなたがたも、あなたがたを治める王も、あなたがたの神、【主】のあとに従うなら、それで良い。
1215 もし、あなたがたが【主】の御声に聞き従わず、【主】の命令に逆らうなら、【主】の手があなたがたの先祖たちに下ったように、あなたがたの上にも下る。
1216 今一度立って、【主】があなたがたの目の前で行われるこの大きなみわざを見なさい。
1217 今は小麦の刈り入れ時ではないか。だが私が【主】に呼び求めると、主は雷と雨とを下される。あなたがたは王を求めて、【主】のみこころを大いにそこなったことを悟り、心に留めなさい。」
1218 それからサムエルは【主】に呼び求めた。すると、【主】はその日、雷と雨とを下された。民はみな、【主】とサムエルを非常に恐れた。
1219 民はみな、サムエルに言った。「あなたのしもべどものために、あなたの神、【主】に祈り、私たちが死なないようにしてください。私たちのあらゆる罪の上に、王を求めるという悪を加えたからです。」
1220 サムエルは民に言った。「恐れてはならない。あなたがたは、このすべての悪を行った。しかし【主】に従い、わきにそれず、心を尽くして【主】に仕えなさい。
1221 役にも立たず、救い出すこともできないむなしいものに従って、わきへそれてはならない。それはむなしいものだ。
1222 まことに【主】は、ご自分の偉大な御名のために、ご自分の民を捨て去らない。【主】はあえて、あなたがたをご自分の民とされるからだ。
1223 私もまた、あなたがたのために祈るのをやめて【主】に罪を犯すことなど、とてもできない。私はあなたがたに、よい正しい道を教えよう。
1224 ただ、【主】を恐れ、心を尽くし、誠意をもって主に仕えなさい。主がどれほど偉大なことをあなたがたになさったかを見分けなさい。
1225 あなたがたが悪を重ねるなら、あなたがたも、あなたがたの王も滅ぼし尽くされる。」