士師記

0701 それで、エルバアル、すなわちギデオンと、彼といっしょにいた民はみな、朝早くハロデの泉のそばに陣を敷いた。ミデヤン人の陣営は、彼の北に当たり、モレの山沿いの谷にあった。
0702 そのとき、【主】はギデオンに仰せられた。「あなたといっしょにいる民は多すぎるから、わたしはミデヤン人を彼らの手に渡さない。イスラエルが『自分の手で自分を救った』と言って、わたしに向かって誇るといけないから。
0703 今、民に聞こえるように告げ、『恐れ、おののく者はみな帰りなさい。ギルアデ山から離れなさい』と言え。」すると、民のうちから二万二千人が帰って行き、一万人が残った。
0704 すると、【主】はギデオンに仰せられた。「民はまだ多すぎる。彼らを連れて水のところに下って行け。わたしはそこで、あなたのために彼らをためそう。わたしがあなたに、『この者はあなたといっしょに行かなければならない』と言うなら、その者は、あなたといっしょに行かなければならない。またわたしがあなたに、『この者はあなたといっしょに行ってはならない』と言う者はだれも、行ってはならない。」
0705 そこでギデオンは民を連れて、水のところに下って行った。すると、【主】はギデオンに仰せられた。「犬がなめるように、舌で水をなめる者は残らず別にしておき、また、ひざをついて飲む者も残らずそうせよ。」
0706 そのとき、口に手を当てて水をなめた者の数は三百人であった。残りの民はみな、ひざをついて水を飲んだ。
0707 そこで【主】はギデオンに仰せられた。「手で水をなめた三百人で、わたしはあなたがたを救い、ミデヤン人をあなたの手に渡す。残りの民はみな、それぞれ自分の家に帰らせよ。」
0708 そこで彼らは民の糧食と角笛を手に取った。こうして、ギデオンはイスラエル人をみな、それぞれ自分の天幕に送り返し、三百人の者だけを引き止めた。ミデヤン人の陣営は、彼から見て下の谷にあった。
0709 その夜、【主】はギデオンに仰せられた。「立って、あの陣営に攻め下れ。それをあなたの手に渡したから。
0710 しかし、もし下って行くことを恐れるなら、あなたに仕える若い者プラといっしょに陣営に下って行き、
0711 彼らが何と言っているかを聞け。そのあとで、あなたは、勇気を出して、陣営に攻め下らなければならない。」そこで、ギデオンと若い者プラとは、陣営の中の編隊の端に下って行った。
0712 そこには、ミデヤン人や、アマレク人や、東の人々がみな、いなごのように大ぜい、谷に伏していた。そのらくだは、海辺の砂のように多くて数えきれなかった。
0713 ギデオンがそこに行ってみると、ひとりの者が仲間に夢の話をしていた。ひとりが言うには、「私は今、夢を見た。見ると、大麦のパンのかたまりが一つ、ミデヤン人の陣営にころがって来て、天幕の中にまで入り、それを打ったので、それは倒れた。ひっくり返って、天幕は倒れてしまった。」
0714 すると、その仲間は答えて言った。「それはイスラエル人ヨアシュの子ギデオンの剣にほかならない。神が彼の手にミデヤンと、陣営全部を渡されたのだ。」
0715 ギデオンはこの夢の話とその解釈を聞いたとき、主を礼拝した。そして、イスラエルの陣営に戻って言った。「立て。【主】はミデヤン人の陣営をあなたがたの手に下さった。」
0716 そして、彼は三百人を三隊に分け、全員の手に角笛とからつぼとを持たせ、そのつぼの中にたいまつを入れさせた。
0717 それから、彼らに言った。「私を見て、あなたがたも同じようにしなければならない。見よ。私が陣営の端に着いたら、私がするように、あなたがたもそうしなければならない。
0718 私と、私といっしょにいる者がみな、角笛を吹いたなら、あなたがたもまた、全陣営の回りで角笛を吹き鳴らし、『【主】のためだ。ギデオンのためだ』と言わなければならない。」
0719 ギデオンと、彼といっしょにいた百人の者が、真夜中の夜番の始まる時、陣営の端に着いた。ちょうどその時、番兵の交替をしたばかりであった。それで、彼らは角笛を吹き鳴らし、その手に持っていたつぼを打ちこわした。
0720 三隊の者が角笛を吹き鳴らして、つぼを打ち砕き、それから左手にたいまつを堅く握り、右手に吹き鳴らす角笛を堅く握って、「【主】の剣、ギデオンの剣だ」と叫び、
0721 それぞれ陣営の周囲の持ち場に着いたので、陣営の者はみな走り出し、大声をあげて逃げた。
0722 三百人が角笛を吹き鳴らしている間に、【主】は、陣営の全面にわたって、同士打ちが起こるようにされた。それで陣営はツェレラのほうのベテ・ハシタや、タバテの近くのアベル・メホラの端まで逃げた。
0723 イスラエル人はナフタリと、アシェルと、全マナセから呼び集められ、彼らはミデヤン人を追撃した。
0724 ついで、ギデオンはエフライムの山地全域に使者を送って言った。「降りて来て、ミデヤン人を攻めなさい。ベテ・バラまでの流れと、ヨルダン川を攻め取りなさい。」そこでエフライム人はみな呼び集められ、彼らはベテ・バラまでの流れと、ヨルダン川を攻め取った。
0725 また彼らはミデヤン人のふたりの首長オレブとゼエブを捕らえ、オレブをオレブの岩で、ゼエブをゼエブの酒ぶねで殺し、こうしてミデヤン人を追撃した。彼らはヨルダン川の向こう側にいたギデオンのところに、オレブとゼエブの首を持って行った。
0801 そのとき、エフライム人はギデオンに言った。「あなたは、私たちに何ということをしたのですか。ミデヤン人と戦いに行ったとき、私たちに呼びかけなかったとは。」こうして彼らはギデオンを激しく責めた。
0802 ギデオンは彼らに言った。「今、あなたがたのしたことに比べたら、私がいったい何をしたというのですか。アビエゼルのぶどうの収穫よりも、エフライムの取り残した実のほうが、よかったのではありませんか。
0803 神はあなたがたの手にミデヤン人の首長オレブとゼエブを渡されました。あなたがたに比べたら、私に何ができたのでしょう。」ギデオンがこのことを話すと、そのとき彼らの怒りは和らいだ。
0804 それからギデオンは、彼に従う三百人の人々とヨルダン川を渡った。彼らは疲れていたが、追撃を続けた。
0805 彼はスコテの人々に言った。「どうか、私について来ている民にパンを下さい。彼らは疲れているが、私はミデヤン人の王ゼバフとツァルムナを追っているのです。」
0806 すると、スコテのつかさたちは言った。「ゼバフとツァルムナの手首を、今、あなたは手にしているのでしょうか。私たちがあなたの軍団にパンを与えなければならないなどとは。」
0807 そこでギデオンは言った。「そういうことなら、【主】が私の手にゼバフとツァルムナを渡されるとき、私は荒野のいばらやとげで、あなたがたを踏みつけてやる。」
0808 ギデオンはそこからペヌエルに上って行き、同じように彼らに言った。すると、ペヌエルの人々もスコテの人々が答えたように彼に答えた。
0809 それでギデオンはまたペヌエルの人々に言った。「私が無事に帰って来たら、このやぐらをたたきこわしてやる。」
0810 ゼバフとツァルムナはカルコルにいたが、約一万五千からなるその陣営の者も彼らといっしょにいた。これは東の人々の陣営全体のうち生き残った者のすべてであった。剣を使う者十二万人が、すでに倒されていたからである。
0811 そこでギデオンは、ノバフとヨグボハの東の天幕に住む人々の道に沿って上って行き、陣営を打った。陣営は油断していた。
0812 ゼバフとツァルムナは逃げたが、ギデオンは彼らを追って、ミデヤンのふたりの王ゼバフとツァルムナを捕らえ、その全陣営をろうばいさせた。
0813 それから、ヨアシュの子ギデオンは、ヘレスの坂道を通って戦いから帰って来た。
0814 そのとき、彼はスコテの人々の中からひとりの若者を捕らえ、尋問した。すると、彼はギデオンのために、スコテのつかさたちと七十七人の長老たちの名を書いた。
0815 そこで、ギデオンはスコテの人々のところに行って、言った。「あなたがたが、『ゼバフとツァルムナの手首を、今、あなたは手にしているのか。私たちがあなたに従う疲れた人たちにパンを与えなければならないなどとは』と言って、私をそしったそのゼバフとツァルムナが、ここにいる。」
0816 そしてギデオンは、その町の長老たちを捕らえ、また荒野のいばらや、とげを取って、それでスコテの人々に思い知らせた。
0817 また彼はペヌエルのやぐらをたたきこわして、町の人々を殺した。
0818 それから、ギデオンはゼバフとツァルムナに言った。「おまえたちがタボルで殺した人たちは、どこにいるのか。」すると彼らは答えた。「あの人たちは、あなたのような人でした。どの人も王の子たちに似ていました。」
0819 ギデオンは言った。「彼らは私の兄弟、私の母の息子たちだ。【主】は生きておられる。おまえたちが彼らを生かしておいてくれたなら、私はおまえたちを殺しはしないのだが。」
0820 そしてギデオンは自分の長男エテルに「立って、彼らを殺しなさい」と言ったが、その若者は自分の剣を抜かなかった。彼はまだ若かったので、恐ろしかったからである。
0821 そこで、ゼバフとツァルムナは言った。「立って、あなたが私たちに撃ちかかりなさい。人の勇気はそれぞれ違うのですから。」すると、ギデオンは立って、ゼバフとツァルムナを殺し、彼らのらくだの首に掛けてあった三日月形の飾りを取った。
0822 そのとき、イスラエル人はギデオンに言った。「あなたも、あなたのご子息も、あなたの孫も、私たちを治めてください。あなたが私たちをミデヤン人の手から救ったのですから。」
0823 しかしギデオンは彼らに言った。「私はあなたがたを治めません。また、私の息子もあなたがたを治めません。【主】があなたがたを治められます。」
0824 ついで、ギデオンは彼らに言った。「あなたがたに一つ、お願いしたい。ひとりひとり、自分の分捕り物の耳輪を私に下さい。」──殺された者たちはイシュマエル人であったので、金の耳輪をつけていたからである──
0825 すると、彼らは「差し上げますとも」と答えて、一枚の上着を広げ、ひとりひとりその分捕り物の耳輪をその中に投げ込んだ。
0826 ギデオンが願った金の耳輪の目方は金で一千七百シェケルであった。このほかに、三日月形の飾りや、垂れ飾りや、ミデヤンの王たちの着ていた赤紫の衣、またほかに、彼らのらくだの首の回りに掛けていた首飾りなどもあった。
0827 ギデオンはそれで、一つのエポデを作り、彼の町のオフラにそれを置いた。すると、イスラエルはみな、それを慕って、そこで淫行を行った。それはギデオンとその一族にとって、落とし穴となった。
0828 こうしてミデヤン人はイスラエル人によって屈服させられ、二度とその頭を上げなかった。この国はギデオンの時代、四十年の間、穏やかであった。
0829 ヨアシュの子エルバアルは帰って自分の家に住んだ。
0830 ギデオンには彼から生まれた息子が七十人いた。彼には大ぜいの妻がいたからである。
0831 シェケムにいたそばめもまた、彼にひとりの男の子を産んだ。そこで彼はアビメレクという名をつけた。
0832 やがて、ヨアシュの子ギデオンは長寿を全うして死に、アビエゼル人のオフラにある父ヨアシュの墓に葬られた。
0833 ギデオンが死ぬとすぐ、イスラエル人は再びバアルを慕って淫行を行い、バアル・ベリテを自分たちの神とした。
0834 イスラエル人は、周囲のすべての敵から自分たちを救い出した彼らの神、【主】を心に留めなかった。
0835 彼らは、エルバアルすなわちギデオンがイスラエルに尽くした善意のすべてにふさわしい真実を、彼の家族に尽くさなかった。
0901 さて、エルバアルの子アビメレクは、シェケムにいる自分の母の身内の者たちのところに行き、彼らと母の一族の氏族全員に告げて言った。
0902 「どうかシェケムのすべての者に、よく言って聞かせてください。エルバアルの息子七十人がみなで、あなたがたを治めるのと、ただひとりがあなたがたを治めるのと、あなたがたにとって、どちらがよいか。私があなたがたの骨肉であることを思い起こしてください。」
0903 アビメレクの母の身内の者たちが、彼に代わって、これらのことをみな、シェケムのすべての者に言って聞かせたとき、彼らの心はアビメレクに傾いた。彼らは「彼は私たちの身内の者だ」と思ったからである。
0904 彼らはバアル・ベリテの宮から銀七十シェケルを取り出して彼に与えた。アビメレクはそれで、ごろつきの、ずうずうしい者たちを雇った。彼らはアビメレクのあとについた。
0905 それから、アビメレクはオフラにある彼の父の家に行って、自分の兄弟であるエルバアルの息子たち七十人を一つの石の上で殺した。しかし、エルバアルの末子ヨタムは隠れていたので生き残った。
0906 それで、シェケムの者とベテ・ミロの者はみな集まり、出かけて行って、シェケムにある石の柱のそばの樫の木のところで、アビメレクを王とした。
0907 このことがヨタムに告げられたとき、彼は行って、ゲリジム山の頂上に立ち、声を張り上げ、彼らに叫んで言った。「シェケムの者たち。私に聞け。そうすれば神はあなたがたに聞いてくださろう。
0908 木々が自分たちの王を立てて油をそそごうと出かけた。彼らはオリーブの木に言った。『私たちの王となってください。』
0909 すると、オリーブの木は彼らに言った。『私は神と人とをあがめるために使われる私の油を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
0910 ついで、木々はいちじくの木に言った。『来て、私たちの王となってください。』
0911 しかし、いちじくの木は彼らに言った。『私は、私の甘みと私の良い実を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
0912 それから、木々はぶどうの木に言った。『来て、私たちの王となってください。』
0913 しかし、ぶどうの木は彼らに言った。『私は、神と人とを喜ばせる私の新しいぶどう酒を捨て置いて、木々の上にそよぐために出かけなければならないだろうか。』
0914 そこで、すべての木がいばらに言った。『来て、私たちの王となってください。』
0915 すると、いばらは木々に言った。『もしあなたがたがまことをもって私に油をそそぎ、あなたがたの王とするなら、来て、私の陰に身を避けよ。そうでなければ、いばらから火が出て、レバノンの杉の木を焼き尽くそう。』
0916 今、あなたがたはまことと真心をもって行動して、アビメレクを王にしたのか。あなたがたはエルバアルとその家族とを、ねんごろに取り扱い、彼のてがらに報いたのか。
0917 私の父は、あなたがたのために戦い、自分のいのちをかけて、あなたがたをミデヤン人の手から助け出したのだ。
0918 あなたがたは、きょう、私の父の家にそむいて立ち上がり、その息子たち七十人を、一つの石の上で殺し、女奴隷の子アビメレクをあなたがたの身内の者だからというので、シェケムの者たちの王として立てた。
0919 もしあなたがたが、きょう、エルバアルと、その家族とにまことと真心をもって行動したのなら、あなたがたはアビメレクを喜び、彼もまた、あなたがたを喜ぶがよい。
0920 そうでなかったなら、アビメレクから火が出て、シェケムとベテ・ミロの者たちを食い尽くし、シェケムとベテ・ミロの者たちから火が出て、アビメレクを食い尽くそう。」
0921 それから、ヨタムは逃げ去り、ベエルに行き、兄弟アビメレクを避けてそこに住んだ。
0922 アビメレクは三年間、イスラエルを支配した。
0923 神は、アビメレクとシェケムの者たちの間にわざわいの霊を送ったので、シェケムの者たちはアビメレクを裏切った。
0924 そのためエルバアルの七十人の息子たちへの暴虐が再現し、彼らの血が、彼らを殺した兄弟アビメレクと、アビメレクに加勢して彼の兄弟たちを殺したシェケムの者たちの上に臨んだ。
0925 シェケムの者たちは、山々の頂上に彼を待ち伏せる者たちを置いたので、彼らは道でそばを過ぎるすべての者を略奪した。やがて、このことがアビメレクに告げられた。
0926 エベデの子ガアルとその身内の者たちが来て、シェケムを通りかかったとき、シェケムの者たちは彼を信用した。
0927 そこで彼らは畑に出て行って、ぶどうを収穫して、踏んだ。そして祭りをし、自分たちの神の宮に入って行って、飲み食いし、アビメレクをののしった。
0928 そのとき、エベデの子ガアルは言った。「アビメレクとは何者か。シェケムとは何者か。われわれが彼に仕えなければならないとは。アビメレクはエルバアルの子、ゼブルはアビメレクの役人ではないか。シェケムの父ハモルの人々に仕えなさい。なぜわれわれはアビメレクに仕えなければならないのか。
0929 だれか、この民を私の手に与えてくれないものか。そうすれば私はアビメレクを追い出すのだが。」そして彼はアビメレクに言った。「おまえの軍勢をふやして、出て来い。」
0930 この町のつかさゼブルは、エベデの子ガアルの言ったことを聞いて、怒りを燃やし、
0931 トルマにいるアビメレクのところに使者を送って言わせた。「今、エベデの子ガアルとその身内の者たちがシェケムに来ています。今、彼らは町を、あなたにそむかせようとしています。
0932 今、あなたとあなたとともにいる民は、夜のうちに立って、野で待ち伏せなさい。
0933 朝早く、太陽が上るころ、町に突入しなさい。すると、ガアルと、彼とともにいる民は、あなたに向かって出て来るでしょう。あなたは好機をつかんで、彼らを攻撃することができます。」
0934 そこでアビメレクと、彼とともにいた民はみな、夜のうちに立って、四隊に分かれてシェケムに向かって待ち伏せた。
0935 エベデの子ガアルが出て来て、町の門の入口に立ったとき、アビメレクと、彼とともにいた民は、待ち伏せしていた所から立ち上がった。
0936 ガアルはその民を見て、ゼブルに言った。「あれ、山々の頂から民が降りて来る。」すると、ゼブルは彼に言った。「あなたは、山々の影が人のように見えるのです。」
0937 ガアルはまた言った。「いや。人々がこの地の一番高い所から降りて来る。また一隊がメオヌニムの樫の木のほうから来る。」
0938 すると、ゼブルは彼に言った。「『アビメレクとは何者か。われわれが彼に仕えなければならないとは』と言ったあなたの口は、いったいどこにあるのですか。あなたが見くびったのは、この民ではありませんか。さあ、今、出て行って、彼と戦いなさい。」
0939 そこで、ガアルはシェケムの者たちの先頭に立って出て行き、アビメレクと戦った。
0940 アビメレクが彼を追ったので、ガアルは彼の前から逃げた。そして多くの者が刺し殺されて倒れ、門の入口にまで及んだ。
0941 アビメレクはアルマにとどまったが、ゼブルは、ガアルとその身内の者たちを追い払って、彼らをシェケムに住ませなかった。
0942 翌日、民は、野に出かけて行って、アビメレクに告げた。
0943 そこで、アビメレクは自分の民を引き連れて、それを三隊に分け、野で待ち伏せた。すると、民が町から出て来るのが見えたので、彼らを襲って打った。
0944 アビメレクと、彼とともにいた一隊は突入して、町の門の入口に立った。一方、他の二隊は野にいたすべての者を襲って、打ち殺した。
0945 アビメレクはその日、一日中、町で戦い、この町を攻め取り、そのうちにいた民を殺し、町を破壊して、そこに塩をまいた。
0946 シェケムのやぐらの者たちはみな、これを聞いて、エル・ベリテの宮の地下室に入って行った。
0947 シェケムのやぐらの者たちがみな集まったことがアビメレクに告げられたとき、
0948 アビメレクは、自分とともにいた民とツァルモン山に登って行った。アビメレクは手に斧を取って、木の枝を切り、これを持ち上げて、自分の肩に載せ、共にいる民に言った。「私がするのを見たとおりに、あなたがたも急いでそのとおりにしなさい。」
0949 それで民もまた、みなめいめい枝を切って、アビメレクについて行き、それを地下室の上に置き、火をつけて、地下室を焼いた。それでシェケムのやぐらの人たち、男女約一千人もみな死んだ。
0950 それから、アビメレクはテベツに行き、テベツに対して陣を敷き、これを攻め取った。
0951 この町の中に、一つ、堅固なやぐらがあった。すべての男、女、この町の者たちはみなそこへ逃げて、立てこもり、やぐらの屋根に上った。
0952 そこで、アビメレクはやぐらのところまで行って、これと戦い、やぐらの戸に近づいて、それを火で焼こうとした。
0953 そのとき、ひとりの女がアビメレクの頭にひき臼の上石を投げつけて、彼の頭蓋骨を砕いた。
0954 アビメレクは急いで道具持ちの若者を呼んで言った。「おまえの剣を抜いて、私を殺してくれ。女が殺したのだと私のことを人が言わないように。」それで、若者が彼を刺し通したので、彼は死んだ。
0955 イスラエル人はアビメレクが死んだのを見たとき、ひとりひとり自分のところへ帰った。
0956 こうして神は、アビメレクが彼の兄弟七十人を殺して、その父に行った悪を、彼に報いられた。
0957 神はシェケムの人々のすべての悪を彼らの頭上に報いられた。こうしてエルバアルの子ヨタムののろいが彼らに実現した。

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