出エジプト記
0401 モーセは答えて申し上げた。「ですが、彼らは私を信ぜず、また私の声に耳を傾けないでしょう。『【主】はあなたに現れなかった』と言うでしょうから。」
0402 【主】は彼に仰せられた。「あなたの手にあるそれは何か。」彼は答えた。「杖です。」
0403 すると仰せられた。「それを地に投げよ。」彼がそれを地に投げると、杖は蛇になった。モーセはそれから身を引いた。
0404 【主】はまた、モーセに仰せられた。「手を伸ばして、その尾をつかめ。」彼が手を伸ばしてそれを握ったとき、それは手の中で杖になった。
0405 「これは、彼らの父祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神、【主】があなたに現れたことを、彼らが信じるためである。」
0406 【主】はなおまた、彼に仰せられた。「手をふところに入れよ。」彼は手をふところに入れた。そして、出した。なんと、彼の手はツァラアトに冒され、雪のようになっていた。
0407 また、主は仰せられた。「あなたの手をもう一度ふところに入れよ。」そこで彼はもう一度手をふところに入れた。そして、ふところから出した。なんと、それは再び彼の肉のようになっていた。
0408 「たとい彼らがあなたを信ぜず、また初めのしるしの声に聞き従わなくても、後のしるしの声は信じるであろう。
0409 もしも彼らがこの二つのしるしをも信ぜず、あなたの声にも聞き従わないなら、ナイルから水を汲んで、それをかわいた土に注がなければならない。あなたがナイルから汲んだその水は、かわいた土の上で血となる。」
0410 モーセは【主】に申し上げた。「ああ主よ。私はことばの人ではありません。以前からそうでしたし、あなたがしもべに語られてからもそうです。私は口が重く、舌が重いのです。」
0411 【主】は彼に仰せられた。「だれが人に口をつけたのか。だれが口をきけなくし、耳を聞こえなくし、あるいは、目を開いたり、盲目にしたりするのか。それはこのわたし、【主】ではないか。
0412 さあ行け。わたしがあなたの口とともにあって、あなたの言うべきことを教えよう。」
0413 すると申し上げた。「ああ主よ。どうかほかの人を遣わしてください。」
0414 すると、【主】の怒りがモーセに向かって燃え上がり、こう仰せられた。「あなたの兄、レビ人アロンがいるではないか。わたしは彼がよく話すことを知っている。今、彼はあなたに会いに出て来ている。あなたに会えば、心から喜ぼう。
0415 あなたが彼に語り、その口にことばを置くなら、わたしはあなたの口とともにあり、彼の口とともにあって、あなたがたのなすべきことを教えよう。
0416 彼があなたに代わって民に語るなら、彼はあなたの口の代わりとなり、あなたは彼に対して神の代わりとなる。
0417 あなたはこの杖を手に取り、これでしるしを行わなければならない。」
0418 それで、モーセはしゅうとのイテロのもとに帰り、彼に言った。「どうか私をエジプトにいる親類のもとに帰らせ、彼らがまだ生きながらえているかどうか見させてください。」イテロはモーセに「安心して行きなさい」と答えた。
0419 【主】はミデヤンでモーセに仰せられた。「エジプトに帰って行け。あなたのいのちを求めていた者は、みな死んだ。」
0420 そこで、モーセは妻や息子たちを連れ、彼らをろばに乗せてエジプトの地へ帰った。モーセは手に神の杖を持っていた。
0421 【主】はモーセに仰せられた。「エジプトに帰って行ったら、わたしがあなたの手に授けた不思議を、ことごとく心に留め、それをパロの前で行え。しかし、わたしは彼の心をかたくなにする。彼は民を去らせないであろう。
0422 そのとき、あなたはパロに言わなければならない。【主】はこう仰せられる。『イスラエルはわたしの子、わたしの初子である。
0423 そこでわたしはあなたに言う。わたしの子を行かせて、わたしに仕えさせよ。もし、あなたが拒んで彼を行かせないなら、見よ、わたしはあなたの子、あなたの初子を殺す。』」
0424 さて、途中、一夜を明かす場所でのことだった。【主】はモーセに会われ、彼を殺そうとされた。
0425 そのとき、チッポラは火打石を取って、自分の息子の包皮を切り、それをモーセの両足につけ、そして言った。「まことにあなたは私にとって血の花婿です。」
0426 そこで、主はモーセを放された。彼女はそのとき割礼のゆえに「血の花婿」と言ったのである。
0427 さて、【主】はアロンに仰せられた。「荒野に行って、モーセに会え。」彼は行って、神の山でモーセに会い、口づけした。
0428 モーセは自分を遣わすときに【主】が語られたことばのすべてと、命じられたしるしのすべてを、アロンに告げた。
0429 それからモーセとアロンは行って、イスラエル人の長老たちをみな集めた。
0430 アロンは、【主】がモーセに告げられたことばをみな告げ、民の目の前でしるしを行ったので、
0431 民は信じた。彼らは、【主】がイスラエル人を顧み、その苦しみをご覧になったことを聞いて、ひざまずいて礼拝した。
0501 その後、モーセとアロンはパロのところに行き、そして言った。「イスラエルの神、【主】がこう仰せられます。『わたしの民を行かせ、荒野でわたしのために祭りをさせよ。』」
0502 パロは答えた。「【主】とはいったい何者か。私がその声を聞いてイスラエルを行かせなければならないというのは。私は【主】を知らない。イスラエルを行かせはしない。」
0503 すると彼らは言った。「ヘブル人の神が私たちにお会いくださったのです。どうか今、私たちに荒野へ三日の道のりの旅をさせ、私たちの神、【主】にいけにえをささげさせてください。でないと、主は疫病か剣で、私たちを打たれるからです。」
0504 エジプトの王は彼らに言った。「モーセとアロン。おまえたちは、なぜ民に仕事をやめさせようとするのか。おまえたちの苦役に戻れ。」
0505 パロはまた言った。「見よ。今や彼らはこの地の人々よりも多くなっている。そしておまえたちは彼らの苦役を休ませようとしているのだ。」
0506 その日、パロはこの民を使う監督と人夫がしらに命じて言った。
0507 「おまえたちはれんがを作るわらを、これまでのようにこの民に与えてはならない。自分でわらを集めに行かせよ。
0508 そしてこれまで作っていた量のれんがを作らせるのだ。それを減らしてはならない。彼らはなまけ者だ。だから、『私たちの神に、いけにえをささげに行かせてください』と言って叫んでいるのだ。
0509 あの者たちの労役を重くし、その仕事をさせなければならない。偽りのことばにかかわりを持たせてはいけない。」
0510 そこで、この民を使う監督と人夫がしらたちは出て行って、民に告げて言った。「パロはこう言われる。『私はおまえたちにわらを与えない。
0511 おまえたちは自分でどこへでも行ってわらを見つけて、取って来い。おまえたちの労役は少しも減らさないから。』」
0512 そこで、民はエジプト全土に散って、わらの代わりに刈り株を集めた。
0513 監督たちは彼らをせきたてて言った。「わらがあったときと同じように、おまえたちの仕事、おまえたちのその日その日の仕事を仕上げよ。」
0514 パロの監督たちがこの民の上に立てたイスラエル人の人夫がしらたちは、打ちたたかれ、「なぜおまえたちは定められたれんがの分を、きのうもきょうも、これまでのように仕上げないのか」と言われた。
0515 そこで、イスラエル人の人夫がしらたちは、パロのところに行き、叫んで言った。「なぜあなたのしもべどもを、このように扱うのですか。
0516 あなたのしもべどもには、わらが与えられていません。それでも、彼らは私たちに、『れんがを作れ』と言っています。見てください。あなたのしもべどもは打たれています。しかし、いけないのはあなたの民なのです。」
0517 パロは言った。「おまえたちはなまけ者だ。なまけ者なのだ。だから『私たちの【主】にいけにえをささげに行かせてください』と言っているのだ。
0518 さあ、すぐに行って働け。わらは与えないが、おまえたちは割り当てどおりれんがを納めるのだ。」
0519 イスラエル人の人夫がしらたちは、「おまえたちのれんがのその日その日の数を減らしてはならない」と聞かされたとき、これは、悪いことになったと思った。
0520 彼らはパロのところから出て来たとき、彼らを迎えに来ているモーセとアロンに出会った。
0521 彼らはふたりに言った。「【主】があなたがたを見て、さばかれますように。あなたがたはパロやその家臣たちに私たちを憎ませ、私たちを殺すために彼らの手に剣を渡したのです。」
0522 それでモーセは【主】のもとに戻り、そして申し上げた。「主よ。なぜあなたはこの民に害をお与えになるのですか。何のために、私を遣わされたのですか。
0523 私がパロのところに行って、あなたの御名によって語ってからこのかた、彼はこの民に害を与えています。それなのにあなたは、あなたの民を少しも救い出そうとはなさいません。」
0601 それで【主】はモーセに仰せられた。「わたしがパロにしようとしていることは、今にあなたにわかる。すなわち強い手で、彼は彼らを出て行かせる。強い手で、彼はその国から彼らを追い出してしまう。」
0602 神はモーセに告げて仰せられた。「わたしは【主】である。
0603 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに、全能の神として現れたが、【主】という名では、わたしを彼らに知らせなかった。
0604 またわたしは、カナンの地、すなわち彼らがとどまった在住の地を彼らに与えるという契約を彼らに立てた。
0605 今わたしは、エジプトが奴隷としているイスラエル人の嘆きを聞いて、わたしの契約を思い起こした。
0606 それゆえ、イスラエル人に言え。わたしは【主】である。わたしはあなたがたをエジプトの苦役の下から連れ出し、労役から救い出す。伸ばした腕と大いなるさばきとによってあなたがたを贖う。
0607 わたしはあなたがたを取ってわたしの民とし、わたしはあなたがたの神となる。あなたがたは、わたしがあなたがたの神、【主】であり、あなたがたをエジプトの苦役の下から連れ出す者であることを知るようになる。
0608 わたしは、アブラハム、イサク、ヤコブに与えると誓ったその地に、あなたがたを連れて行き、それをあなたがたの所有として与える。わたしは【主】である。」
0609 モーセはこのようにイスラエル人に話したが、彼らは落胆と激しい労役のためモーセに聞こうとはしなかった。
0610 【主】はモーセに告げて仰せられた。
0611 「エジプトの王パロのところへ行って、彼がイスラエル人をその国から去らせるように告げよ。」
0612 しかしモーセは【主】の前に訴えて言った。「ご覧ください。イスラエル人でさえ、私の言うことを聞こうとはしないのです。どうしてパロが私の言うことを聞くでしょう。私は口べたなのです。」
0613 そこで【主】はモーセとアロンに語り、イスラエル人をエジプトから連れ出すため、イスラエル人とエジプトの王パロについて彼らに命令された。
0614 彼らの父祖の家のかしらたちは次のとおりである。イスラエルの長子ルベンの子はエノク、パル、ヘツロン、カルミで、これらがルベン族である。
0615 シメオンの子はエムエル、ヤミン、オハデ、ヤキン、ツォハル、およびカナン人の女の子サウルで、これらがシメオン族である。
0616 レビの子の家系の名は、次のとおりである。ゲルション、ケハテ、メラリ。レビの一生は百三十七年であった。
0617 ゲルションの子の諸氏族はリブニとシムイである。
0618 ケハテの子はアムラム、イツハル、ヘブロン、ウジエルである。ケハテの一生は百三十三年であった。
0619 メラリの子はマフリとムシである。これらはレビ人の諸氏族の家系である。
0620 アムラムは父の妹ヨケベデを妻にめとり、彼女はアロンとモーセを産んだ。アムラムの一生は百三十七年であった。
0621 イツハルの子はコラ、ネフェグ、ジクリである。
0622 ウジエルの子はミシャエル、エルツァファン、シテリである。
0623 アロンは、アミナダブの娘でナフションの妹であるエリシェバを妻にめとり、彼女はナダブとアビフ、エルアザルとイタマルを産んだ。
0624 コラの子はアシル、エルカナ、アビアサフで、これらはコラ族である。
0625 アロンの子エルアザルは、プティエルの娘のひとりを妻にめとり、彼女はピネハスを産んだ。これらはレビ人の諸氏族の一族のかしらたちである。
0626 【主】が「イスラエル人を集団ごとにエジプトの地から連れ出せ」と仰せられたのは、このアロンとモーセにである。
0627 エジプトの王パロに向かって、イスラエル人をエジプトから連れ出すようにと言ったのは、このモーセとアロンであった。
0628 【主】がエジプトの地でモーセに告げられたときに、
0629 【主】はモーセに告げて仰せられた。「わたしは【主】である。わたしがあなたに話すことを、みな、エジプトの王パロに告げよ。」
0630 しかしモーセは【主】の前に申し上げた。「ご覧ください。私は口べたです。どうしてパロが私の言うことを聞くでしょう。」