出エジプト記


1901 エジプトの地を出たイスラエル人は、 三の月の新月のその日に、シナイの荒野に入った。
1902 彼らはレフィディムを旅立って、シナイの荒野に入り、その荒野で宿営した。イスラエルはそこで、山のすぐ前に宿営した。
1903 モーセは神のみもとに上って行った。【主】は山から彼を呼んで仰せられた。「あなたは、このように、ヤコブの家に言い、イスラエルの人々に告げよ。
1904 あなたがたは、わたしがエジプトにしたこと、また、あなたがたを鷲の翼に載せ、わたしのもとに連れて来たことを見た。
1905 今、もしあなたがたが、まことにわたしの声に聞き従い、わたしの契約を守るなら、あなたがたはすべての国々の民の中にあって、わたしの宝となる。全世界はわたしのものであるから。
1906 あなたがたはわたしにとって祭司の王国、聖なる国民となる。これが、イスラエル人にあなたの語るべきことばである。」
1907 モーセは行って、民の長老たちを呼び寄せ、【主】が命じられたこれらのことばをみな、彼らの前に述べた。
1908 すると民はみな口をそろえて答えた。「私たちは【主】が仰せられたことを、みな行います。」それでモーセは民のことばを【主】に持って帰った。
1909 すると、【主】はモーセに仰せられた。「見よ。わたしは濃い雲の中で、あなたに臨む。わたしがあなたと語るのを民が聞き、いつまでもあなたを信じるためである。」それからモーセは民のことばを【主】に告げた。
1910 【主】はモーセに仰せられた。「あなたは民のところに行き、きょうとあす、彼らを聖別し、自分たちの着物を洗わせよ。
1911 彼らは三日目のために用意をせよ。三日目には、【主】が民全体の目の前で、シナイ山に降りて来られるからである。
1912 あなたは民のために、周囲に境を設けて言え。山に登ったり、その境界に触れたりしないように注意しなさい。山に触れる者は、だれでも必ず殺されなければならない。
1913 それに手を触れてはならない。触れる者は必ず石で打ち殺されるか、刺し殺される。獣でも、人でも、生かしておいてはならない。しかし雄羊の角が長く鳴り響くとき、彼らは山に登って来なければならない。」
1914 それでモーセは山から民のところに降りて来た。そして、民を聖別し、彼らに自分たちの着物を洗わせた。
1915 モーセは民に言った。「三日目のために用意をしなさい。女に近づいてはならない。」
1916 三日目の朝になると、山の上に雷といなずまと密雲があり、角笛の音が非常に高く鳴り響いたので、宿営の中の民はみな震え上がった。
1917 モーセは民を、神を迎えるために、宿営から連れ出した。彼らは山のふもとに立った。
1918 シナイ山は全山が煙っていた。それは【主】が火の中にあって、山の上に降りて来られたからである。その煙は、かまどの煙のように立ち上り、全山が激しく震えた。
1919 角笛の音が、いよいよ高くなった。モーセは語り、神は声を出して、彼に答えられた。
1920 【主】がシナイ山の頂に降りて来られ、【主】がモーセを山の頂に呼び寄せられたので、モーセは登って行った。
1921 【主】はモーセに仰せられた。「下って行って、民を戒めよ。【主】を見ようと、彼らが押し破って来て、多くの者が滅びるといけない。
1922 【主】に近づく祭司たちもまた、その身をきよめなければならない。【主】が彼らに怒りを発しないために。」
1923 モーセは【主】に申し上げた。「民はシナイ山に登ることはできません。あなたが私たちを戒められて、『山の回りに境を設け、それを聖なる地とせよ』と仰せられたからです。」
1924 【主】は彼に仰せられた。「降りて行け。そしてあなたはアロンといっしょに登れ。祭司たちと民とは、【主】のところに登ろうとして押し破ってはならない。主が彼らに怒りを発せられないために。」
1925 そこでモーセは民のところに降りて行き、彼らに告げた。
2001 それから神はこれらのことばを、ことごとく告げて仰せられた。
2002 「わたしは、あなたをエジプトの国、奴隷の家から連れ出した、あなたの神、【主】である。
2003 あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない。
2004 あなたは、自分のために、偶像を造ってはならない。上の天にあるものでも、下の地にあるものでも、地の下の水の中にあるものでも、どんな形をも造ってはならない。
2005 それらを拝んではならない。それらに仕えてはならない。あなたの神、【主】であるわたしは、ねたむ神、わたしを憎む者には、父の咎を子に報い、三代、四代にまで及ぼし、
2006 わたしを愛し、わたしの命令を守る者には、恵みを千代にまで施すからである。
2007 あなたは、あなたの神、【主】の御名を、みだりに唱えてはならない。【主】は、御名をみだりに唱える者を、罰せずにはおかない。
2008 安息日を覚えて、これを聖なる日とせよ。
2009 六日間、働いて、あなたのすべての仕事をしなければならない。
2010 しかし七日目は、あなたの神、【主】の安息である。あなたはどんな仕事もしてはならない。──あなたも、あなたの息子、娘、それにあなたの男奴隷や女奴隷、家畜、また、あなたの町囲みの中にいる在留異国人も──
2011 それは【主】が六日のうちに、天と地と海、またそれらの中にいるすべてのものを造り、七日目に休まれたからである。それゆえ、【主】は安息日を祝福し、これを聖なるものと宣言された。
2012 あなたの父と母を敬え。あなたの神、【主】が与えようとしておられる地で、あなたの齢が長くなるためである。
2013 殺してはならない。
2014 姦淫してはならない。
2015 盗んではならない。
2016 あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない。
2017 あなたの隣人の家を欲しがってはならない。すなわち隣人の妻、あるいは、その男奴隷、女奴隷、牛、ろば、すべてあなたの隣人のものを、欲しがってはならない。」
2018 民はみな、雷と、いなずま、角笛の音と、煙る山を目撃した。民は見て、たじろぎ、遠く離れて立った。
2019 彼らはモーセに言った。「どうか、私たちに話してください。私たちは聞き従います。しかし、神が私たちにお話しにならないように。私たちが死ぬといけませんから。」
2020 それでモーセは民に言った。「恐れてはいけません。神が来られたのはあなたがたを試みるためなのです。また、あなたがたに神への恐れが生じて、あなたがたが罪を犯さないためです。」
2021 そこで、民は遠く離れて立ち、モーセは神のおられる暗やみに近づいて行った。
2022 【主】はモーセに仰せられた。「あなたはイスラエル人にこう言わなければならない。あなたがた自身、わたしが天からあなたがたと話したのを見た。
2023 あなたがたはわたしと並べて、銀の神々を造ってはならない。また、あなたがた自身のために金の神々も造ってはならない。
2024 わたしのために土の祭壇を造り、その上で、羊と牛をあなたの全焼のいけにえとし、和解のいけにえとしてささげなければならない。わたしの名を覚えさせるすべての所で、わたしはあなたに臨み、あなたを祝福しよう。
2025 あなたが石の祭壇をわたしのために造るなら、切り石でそれを築いてはならない。あなたが石に、のみを当てるなら、それを汚すことになる。
2026 あなたは階段で、わたしの祭壇に上ってはならない。あなたの裸が、その上にあらわれてはならないからである。
2101 あなたが彼らの前に立てる定めは次のとおりである。
2102 あなたがヘブル人の奴隷を買う場合、彼は六年間、仕え、七年目には自由の身として無償で去ることができる。
2103 もし彼が独身で来たのなら、独身で去り、もし彼に妻があれば、その妻は彼とともに去ることができる。
2104 もし彼の主人が彼に妻を与えて、妻が彼に男の子、または女の子を産んだのなら、この妻とその子どもたちは、その主人のものとなり、彼は独身で去らなければならない。
2105 しかし、もし、その奴隷が、『私は、私の主人と、私の妻と、私の子どもたちを愛しています。自由の身となって去りたくありません』と、はっきり言うなら、
2106 その主人は、彼を神のもとに連れて行き、戸または戸口の柱のところに連れて行き、彼の耳をきりで刺し通さなければならない。彼はいつまでも主人に仕えることができる。
2107 人が自分の娘を女奴隷として売るような場合、彼女は男奴隷が去る場合のように去ることはできない。
2108 彼女がもし、彼女を自分のものにしようと定めた主人の気に入らなくなったときは、彼は彼女が贖い出されるようにしなければならない。彼は彼女を裏切ったのであるから、外国の民に売る権利はない。
2109 もし、彼が彼女を自分の息子のものとするなら、彼女を娘に関する定めによって、取り扱わなければならない。
2110 もし彼が他の女をめとるなら、先の女への食べ物、着物、夫婦の務めを減らしてはならない。
2111 もし彼がこれら三つのことを彼女に行わないなら、彼女は金を払わないで無償で去ることができる。
2112 人を打って死なせた者は、必ず殺されなければならない。
2113 ただし、彼に殺意がなく、神が御手によって事を起こされた場合、わたしはあなたに彼ののがれる場所を指定しよう。
2114 しかし、人が、ほしいままに隣人を襲い、策略をめぐらして殺した場合、この者を、わたしの祭壇のところからでも連れ出して殺さなければならない。
2115 自分の父または母を打つ者は、必ず殺されなければならない。
2116 人をさらった者は、その人を売っていても、自分の手もとに置いていても、必ず殺されなければならない。
2117 自分の父または母をのろう者は、必ず殺されなければならない。
2118 人が争い、ひとりが石かこぶしで相手を打ち、その相手が死なないで床についた場合、
2119 もし再び起き上がり、杖によって、外を歩くようになれば、打った者は罰せられない。ただ彼が休んだ分を弁償し、彼が完全に直るようにしてやらなければならない。
2120 自分の男奴隷、あるいは女奴隷を杖で打ち、その場で死なせた場合、その者は必ず復讐されなければならない。
2121 ただし、もしその奴隷が一日か二日生きのびたなら、その者は復讐されない。奴隷は彼の財産だからである。
2122 人が争っていて、みごもった女に突き当たり、流産させるが、殺傷事故がない場合、彼はその女の夫が負わせるだけの罰金を必ず払わなければならない。その支払いは裁定による。
2123 しかし、殺傷事故があれば、いのちにはいのちを与えなければならない。
2124 目には目。歯には歯。手には手。足には足。
2125 やけどにはやけど。傷には傷。打ち傷には打ち傷。
2126 自分の男奴隷の片目、あるいは女奴隷の片目を打ち、これをそこなった場合、その目の代償として、その奴隷を自由の身にしなければならない。
2127 また、自分の男奴隷の歯一本、あるいは女奴隷の歯一本を打ち落としたなら、その歯の代償として、その奴隷を自由の身にしなければならない。
2128 牛が男または女を突いて殺した場合、その牛は必ず石で打ち殺さなければならない。その肉を食べてはならない。しかし、その牛の持ち主は無罪である。
2129 しかし、もし、牛が以前から突くくせがあり、その持ち主が注意されていても、それを監視せず、その牛が男または女を殺したのなら、その牛は石で打ち殺し、その持ち主も殺されなければならない。
2130 もし彼に贖い金が課せられたなら、自分に課せられたものは何でも、自分のいのちの償いとして支払わなければならない。
2131 男の子を突いても、女の子を突いても、この規定のとおりに処理されなければならない。
2132 もしその牛が、男奴隷、あるいは女奴隷を突いたなら、牛の持ち主はその奴隷の主人に銀貨三十シェケルを支払い、その牛は石で打ち殺されなければならない。
2133 井戸のふたをあけていたり、あるいは、井戸を掘って、それにふたをしないでいたりして、牛やろばがそこに落ち込んだ場合、
2134 その井戸の持ち主は金を支払って、その持ち主に償いをしなければならない。しかし、その死んだ家畜は彼のものとなる。
2135 ある人の牛が、もうひとりの人の牛を突いて、その牛が死んだ場合、両者は生きている牛を売って、その金を分け、また死んだ牛も分けなければならない。
2136 しかし、その牛が以前から突くくせのあることがわかっていて、その持ち主が監視をしなかったのなら、その人は必ず牛は牛で償わなければならない。しかし、その死んだ牛は自分のものとなる。




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