0101 三十年の 四の月の五日、私がケバル川のほとりで、捕囚の民とともにいたとき、天が開け、私は神々しい幻を見た。
0102 それはエホヤキン王が捕囚となって連れて行かれてから五年目であった。その月の五日に、
0103 カルデヤ人の地のケバル川のほとりで、ブジの子、祭司エゼキエルにはっきりと【主】のことばがあり、【主】の御手が彼の上にあった。
0104 私が見ていると、見よ、激しい風とともに、大きな雲と火が、ぐるぐるとひらめき渡りながら北から来た。その回りには輝きがあり、火の中央には青銅の輝きのようなものがあった。
0105 その中に何か四つの生きもののようなものが現れ、その姿はこうであった。彼らは何か人間のような姿をしていた。
0106 彼らはおのおの四つの顔を持ち、四つの翼を持っていた。
0107 その足はまっすぐで、足の裏は子牛の足の裏のようであり、みがかれた青銅のように輝いていた。
0108 その翼の下から人間の手が四方に出ていた。そして、その四つのものの顔と翼は次のようであった。
0109 彼らの翼は互いに連なり、彼らが進むときには向きを変えず、おのおの正面に向かってまっすぐ進んだ。
0110 彼らの顔かたちは、人間の顔であり、四つとも、右側に獅子の顔があり、四つとも、左側に牛の顔があり、四つとも、うしろに鷲の顔があった。
0111 これが彼らの顔であった。彼らの翼は上方に広げられ、それぞれ、二つは互いに連なり、他の二つはおのおののからだをおおっていた。
0112 彼らはおのおの前を向いてまっすぐに行き、霊が行かせる所に彼らは行き、行くときには向きを変えなかった。
0113 それらの生きもののようなものは、燃える炭のように見え、たいまつのように見え、それが生きものの間を行き来していた。火が輝き、その火から、いなずまが出ていた。
0114 それらの生きものは、いなずまのひらめきのように走って行き来していた。
0115 私が生きものを見ていると、地の上のそれら四つの生きもののそばに、それぞれ一つずつの輪があった。
0116 それらの輪の形と作りは、緑柱石の輝きのようで、四つともよく似ていて、それらの形と作りは、ちょうど、一つの輪が他の輪の中にあるようであった。
0117 それらは四方に向かって行き、行くときには、それらは向きを変えなかった。
0118 その輪のわくは高くて、恐ろしく、その四つの輪のわくの回りには目がいっぱいついていた。
0119 生きものが行くときには、輪もそのそばを行き、生きものが地の上から上がるときには、輪も上がった。
0120 これらは霊が行かせる所に行き、霊が行かせる所には、輪もまたそれらとともに上がった。生きものの霊が輪の中にあったからである。
0121 生きものが行くときには、輪も行き、生きものが立ち止まるときには、輪も立ち止まり、生きものが地の上から上がるときには、輪も共に上がった。生きものの霊が輪の中にあったからである。
0122 生きものの頭の上には、澄んだ水晶のように輝く大空のようなものがあり、彼らの頭の上のほうへ広がっていた。
0123 その大空の下には、互いにまっすぐに伸ばし合った彼らの翼があり、それぞれ、ほかの二つの翼は、彼らのからだをおおっていた。
0124 彼らが進むとき、私は彼らの翼の音を聞いた。それは大水のとどろきのようであり、全能者の声のようであった。それは陣営の騒音のような大きな音で、彼らが立ち止まるときには、その翼を垂れた。
0125 彼らの頭の上方の大空から声があると、彼らは立ち止まり、翼を垂れた。
0126 彼らの頭の上、大空のはるか上のほうには、サファイヤのような何か王座に似たものがあり、その王座に似たもののはるか上には、人間の姿に似たものがあった。
0127 私が見ると、その腰と見える所から上のほうは、その中と回りとが青銅のように輝き、火のように見えた。その腰と見える所から下のほうに、私は火のようなものを見た。その方の回りには輝きがあった。
0128 その方の回りにある輝きのさまは、雨の日の雲の間にある虹のようであり、それは【主】の栄光のように見えた。私はこれを見て、ひれ伏した。そのとき、私は語る者の声を聞いた。
0201 その方は私に仰せられた。「人の子よ。立ち上がれ。わたしがあなたに語るから。」
0202 その方が私に語りかけられると、すぐ霊が私のうちに入り、私を立ち上がらせた。そのとき、私は私に語りかけることばを聞いた。
0203 その方は私に仰せられた。「人の子よ。わたしはあなたをイスラエルの民、すなわち、わたしにそむいた反逆の国民に遣わす。彼らも、その先祖たちも、わたしにそむいた。今日もそうである。
0204 彼らはあつかましくて、かたくなである。わたしはあなたを彼らに遣わす。あなたは彼らに『神である主はこう仰せられる』と言え。
0205 彼らは反逆の家だから、彼らが聞いても、聞かなくても、彼らは、彼らのうちに預言者がいることを知らなければならない。
0206 人の子よ。彼らや、彼らのことばを恐れるな。たとい、あざみといばらがあなたといっしょにあっても、またあなたがさそりの中に住んでも、恐れるな。彼らは反逆の家だから、そのことばを恐れるな。彼らの顔にひるむな。
0207 彼らは反逆の家だから、彼らが聞いても、聞かなくても、あなたはわたしのことばを彼らに語れ。
0208 人の子よ。わたしがあなたに語ることを聞け。反逆の家のようにあなたは逆らってはならない。あなたの口を大きく開いて、わたしがあなたに与えるものを食べよ。」
0209 そこで私が見ると、なんと、私のほうに手が伸ばされていて、その中に一つの巻き物があった。
0210 それが私の前で広げられると、その表にも裏にも字が書いてあって、哀歌と、嘆きと、悲しみとがそれに書いてあった。
0301 その方は私に仰せられた。「人の子よ。あなたの前にあるものを食べよ。この巻き物を食べ、行って、イスラエルの家に告げよ。」
0302 そこで、私が口をあけると、その方は私にその巻き物を食べさせ、
0303 そして仰せられた。「人の子よ。わたしがあなたに与えるこの巻き物で腹ごしらえをし、あなたの腹を満たせ。」そこで、私はそれを食べた。すると、それは私の口の中で蜜のように甘かった。
0304 その方はまた、私に仰せられた。「人の子よ。さあ、イスラエルの家に行き、わたしのことばのとおりに彼らに語れ。
0305 わたしはあなたを、むずかしい外国語を話す民に遣わすのではなく、イスラエルの家に遣わすのだ。
0306 あなたを、そのことばを聞いてもわからないようなむずかしい外国語を話す多くの国々の民に、遣わすのではない。もし、これらの民にあなたを遣わすなら、彼らはあなたの言うことを聞くであろう。
0307 しかし、イスラエルの家はあなたの言うことを聞こうとはしない。彼らはわたしの言うことを聞こうとはしないからだ。イスラエルの全家は鉄面皮で、心がかたくなだからだ。
0308 見よ。わたしはあなたの顔を、彼らの顔と同じように堅くし、あなたの額を、彼らの額と同じように堅くする。
0309 わたしはあなたの額を、火打石よりも堅い金剛石のようにする。彼らは反逆の家だから、彼らを恐れるな。彼らの顔にひるむな。」
0310 その方は私に仰せられた。「人の子よ。わたしがあなたに告げるすべてのことばを、あなたの心に納め、あなたの耳で聞け。
0311 さあ、捕囚になっているあなたの民のところへ行って、彼らに告げよ。彼らが聞いても、聞かなくても、『神である主はこう仰せられる』と彼らに言え。」
0312 それから、霊が私を引き上げた。そのとき、私は、うしろのほうで、「御住まいの【主】の栄光はほむべきかな」という大きなとどろきの音を聞いた。
0313 それは、互いに触れ合う生きものたちの翼の音と、そのそばの輪の音で、大きなとどろきの音であった。
0314 霊が私を持ち上げ、私を捕らえたので、私は憤って、苦々しい思いで出て行った。しかし、【主】の御手が強く私の上にのしかかっていた。
0315 そこで、私はテル・アビブの捕囚の民のところへ行った。彼らはケバル川のほとりに住んでいたので、私は彼らが住んでいるその所で、七日間、ぼう然として、彼らの中にとどまっていた。
0316 七日目の終わりになって、私に次のような【主】のことばがあった。
0317 「人の子よ。わたしはあなたをイスラエルの家の見張り人とした。あなたは、わたしの口からことばを聞くとき、わたしに代わって彼らに警告を与えよ。
0318 わたしが悪者に、『あなたは必ず死ぬ』と言うとき、もしあなたが彼に警告を与えず、悪者に悪の道から離れて生きのびるように語って、警告しないなら、その悪者は自分の不義のために死ぬ。そして、わたしは彼の血の責任をあなたに問う。
0319 もしあなたが悪者に警告を与えても、彼がその悪を悔い改めず、その悪の道から立ち返らないなら、彼は自分の不義のために死ななければならない。しかしあなたは自分のいのちを救うことになる。
0320 もし、正しい人がその正しい行いをやめて、不正を行うなら、わたしは彼の前につまずきを置く。彼は死ななければならない。それはあなたが彼に警告を与えなかったので、彼は自分の罪のために死に、彼が行った正しい行いも覚えられないのである。わたしは、彼の血の責任をあなたに問う。
0321 しかし、もしあなたが正しい人に罪を犯さないように警告を与えて、彼が罪を犯さないようになれば、彼は警告を受けたのであるから、彼は生きながらえ、あなたも自分のいのちを救うことになる。」
0322 その所で【主】の御手が私の上にあった。主は私に仰せられた。「さあ、谷間に出て行け。そこでわたしはあなたに語ろう。」
0323 私はすぐ、谷間に出て行った。すると、そこに、【主】の栄光が、かつて私がケバル川のほとりで見た栄光のように、現れた。それで私はひれ伏した。
0324 しかし、霊が私のうちに入り、私を立ち上がらせた。主は私に語りかけて仰せられた。「行って、あなたの家に閉じこもっていよ。
0325 人の子よ。今、あなたに、なわがかけられ、あなたはそれで縛られて、彼らのところに出て行けなくなる。
0326 わたしがあなたの舌を上あごにつかせるので、あなたは話せなくなり、彼らを責めることができなくなる。彼らが反逆の家だからだ。
0327 しかし、わたしは、あなたと語るときあなたの口を開く。あなたは彼らに、『神である主はこう仰せられる』と言え。聞く者には聞かせ、聞かない者には聞かせるな。彼らが反逆の家だからだ。