イザヤ書

4901 島々よ。私に聞け。遠い国々の民よ。耳を傾けよ。【主】は、生まれる前から私を召し、母の胎内にいる時から私の名を呼ばれた。
4902 主は私の口を鋭い剣のようにし、御手の陰に私を隠し、私をとぎすました矢として、矢筒の中に私を隠した。
4903 そして、私に仰せられた。「あなたはわたしのしもべ、イスラエル。わたしはあなたのうちに、わたしの栄光を現す。」
4904 しかし、私は言った。「私はむだな骨折りをして、いたずらに、むなしく、私の力を使い果たした。それでも、私の正しい訴えは、【主】とともにあり、私の報酬は、私の神とともにある。」
4905 今、【主】は仰せられる。──主はヤコブをご自分のもとに帰らせ、イスラエルをご自分のもとに集めるために、私が母の胎内にいる時、私をご自分のしもべとして造られた。私は【主】に尊ばれ、私の神は私の力となられた。──
4906 主は仰せられる。「ただ、あなたがわたしのしもべとなって、ヤコブの諸部族を立たせ、イスラエルのとどめられている者たちを帰らせるだけではない。わたしはあなたを諸国の民の光とし、地の果てにまでわたしの救いをもたらす者とする。」
4907 イスラエルを贖う、その聖なる方、【主】は、人にさげすまれている者、民に忌みきらわれている者、支配者たちの奴隷に向かってこう仰せられる。「王たちは見て立ち上がり、首長たちもひれ伏す。【主】が真実であり、イスラエルの聖なる方があなたを選んだからである。」
4908 【主】はこう仰せられる。「恵みの時に、わたしはあなたに答え、救いの日にあなたを助けた。わたしはあなたを見守り、あなたを民の契約とし、国を興し、荒れ果てたゆずりの地を継がせよう。
4909 わたしは捕らわれ人には『出よ』と言い、やみの中にいる者には『姿を現せ』と言う。彼らは道すがら羊を飼い、裸の丘の至る所が、彼らの牧場となる。
4910 彼らは飢えず、渇かず、熱も太陽も彼らを打たない。彼らをあわれむ者が彼らを導き、水のわく所に連れて行くからだ。
4911 わたしは、わたしの山々をすべて道とし、わたしの大路を高くする。
4912 見よ。ある者は遠くから来る。また、ある者は北から西から、また、ある者はシニムの地から来る。」
4913 天よ。喜び歌え。地よ。楽しめ。山々よ。喜びの歌声をあげよ。【主】がご自分の民を慰め、その悩める者をあわれまれるからだ。
4914 しかし、シオンは言った。「【主】は私を見捨てた。主は私を忘れた」と。
4915 「女が自分の乳飲み子を忘れようか。自分の胎の子をあわれまないだろうか。たとい、女たちが忘れても、このわたしはあなたを忘れない。
4916 見よ。わたしは手のひらにあなたを刻んだ。あなたの城壁は、いつもわたしの前にある。
4917 あなたの子どもたちは急いで来る。あなたを滅ぼし、あなたを廃墟とした者は、あなたのところから出て行く。
4918 目を上げて、あたりを見回せ。彼らはみな集まって、あなたのところに来る。わたしは生きている。──【主】の御告げ──あなたは必ず、彼らをみな飾り物として身につけ、花嫁のように彼らを帯に結ぶ。
4919 必ず、あなたの廃墟と荒れ跡と滅びた地は、いまに、人が住むには狭すぎるようになり、あなたを滅ぼした者たちは遠くへ離れ去る。
4920 あなたが子を失って後に生まれた子らが、再びあなたの耳に言おう。『この場所は、私には狭すぎる。私が住めるように、場所をあけてもらいたい』と。
4921 そのとき、あなたは心の中で言おう。『だれが私に、この者たちを生んでくれたのだろう。私は子に死なれた女、うまずめ、亡命のさすらい者であったのに。だれがこの者たちを育てたのだろう。見よ。私は、ただひとり、残されていたのに、この者たちはどこから来たのだろう。』」
4922 神である主はこう仰せられる。「見よ。わたしは国々に向かって手を上げ、わたしの旗を国々の民に向かって揚げる。彼らは、あなたの息子たちをふところに抱いて来、あなたの娘たちは肩に負われて来る。
4923 王たちはあなたの世話をする者となり、王妃たちはあなたのうばとなる。彼らは顔を地につけて、あなたを伏し拝み、あなたの足のちりをなめる。あなたは、わたしが【主】であることを知る。わたしを待ち望む者は恥を見ることがない。」
4924 奪われた物を勇士から取り戻せようか。罪のないとりこたちを助け出せようか。
4925 まことに、【主】はこう仰せられる。「勇士のとりこは取り戻され、横暴な者に奪われた物も奪い返される。あなたの争う者とわたしは争い、あなたの子らをこのわたしが救う。
4926 わたしは、あなたをしいたげる者に、彼ら自身の肉を食らわせる。彼らは甘いぶどう酒に酔うように、自分自身の血に酔う。すべての者が、わたしが【主】、あなたの救い主、あなたの贖い主、ヤコブの力強き者であることを知る。」
5001 【主】はこう仰せられる。「あなたがたの母親の離婚状は、どこにあるか。わたしが彼女を追い出したというのなら。あるいは、その債権者はだれなのか。わたしがあなたがたを売ったというのなら。見よ。あなたがたは、自分の咎のために売られ、あなたがたのそむきの罪のために、あなたがたの母親は追い出されたのだ。
5002 なぜ、わたしが来たとき、だれもおらず、わたしが呼んだのに、だれも答えなかったのか。わたしの手が短くて贖うことができないのか。わたしには救い出す力がないと言うのか。見よ。わたしは、しかって海を干上がらせ、多くの川を荒野とする。その魚は水がなくて臭くなり、渇きのために死に絶える。
5003 わたしは天をやみでおおい、荒布をそのおおいとする。」
5004 神である主は、私に弟子の舌を与え、疲れた者をことばで励ますことを教え、朝ごとに、私を呼びさまし、私の耳を開かせて、私が弟子のように聞くようにされる。
5005 神である主は、私の耳を開かれた。私は逆らわず、うしろに退きもせず、
5006 打つ者に私の背中をまかせ、ひげを抜く者に私の頬をまかせ、侮辱されても、つばきをかけられても、私の顔を隠さなかった。
5007 しかし、神である主は、私を助ける。それゆえ、私は、侮辱されなかった。それゆえ、私は顔を火打石のようにし、恥を見てはならないと知った。
5008 私を義とする方が近くにおられる。だれが私と争うのか。さあ、さばきの座に共に立とう。どんな者が、私を訴えるのか。私のところに出て来い。
5009 見よ。神である主が、私を助ける。だれが私を罪に定めるのか。見よ。彼らはみな、衣のように古び、しみが彼らを食い尽くす。
5010 あなたがたのうち、だれが【主】を恐れ、そのしもべの声に聞き従うのか。暗やみの中を歩き、光を持たない者は、【主】の御名に信頼し、自分の神に拠り頼め。
5011 見よ。あなたがたはみな、火をともし、燃えさしを身に帯びている。あなたがたは自分たちの火のあかりを持ち、火をつけた燃えさしを持って歩くがよい。このことはわたしの手によってあなたがたに起こり、あなたがたは、苦しみのうちに伏し倒れる。
5101 義を追い求める者、【主】を尋ね求める者よ。わたしに聞け。あなたがたの切り出された岩、掘り出された穴を見よ。
5102 あなたがたの父アブラハムと、あなたがたを産んだサラのことを考えてみよ。わたしが彼ひとりを呼び出し、わたしが彼を祝福し、彼の子孫をふやしたことを。
5103 まことに【主】はシオンを慰め、そのすべての廃墟を慰めて、その荒野をエデンのようにし、その砂漠を【主】の園のようにする。そこには楽しみと喜び、感謝と歌声とがある。
5104 わたしの民よ。わたしに心を留めよ。わたしの国民よ。わたしに耳を傾けよ。おしえはわたしから出、わたしはわたしの公義を定め、国々の民の光とする。
5105 わたしの義は近い。わたしの救いはすでに出ている。わたしの腕は国々の民をさばく。島々はわたしを待ち望み、わたしの腕に拠り頼む。
5106 目を天に上げよ。また下の地を見よ。天は煙のように散りうせ、地も衣のように古びて、その上に住む者は、ぶよのように死ぬ。しかし、わたしの救いはとこしえに続き、わたしの義はくじけないからだ。
5107 義を知る者、心にわたしのおしえを持つ民よ。わたしに聞け。人のそしりを恐れるな。彼らのののしりにくじけるな。
5108 しみが彼らを衣のように食い尽くし、虫が彼らを羊毛のように食い尽くす。しかし、わたしの義はとこしえに続き、わたしの救いは代々にわたるからだ。
5109 さめよ。さめよ。力をまとえ。【主】の御腕よ。さめよ。昔の日、いにしえの代のように。ラハブを切り刻み、竜を刺し殺したのは、あなたではないか。
5110 海と大いなる淵の水を干上がらせ、海の底に道を設けて、贖われた人々を通らせたのは、あなたではないか。
5111 【主】に贖われた者たちは帰って来る。彼らは喜び歌いながらシオンに入り、その頭にはとこしえの喜びをいただく。楽しみと喜びがついて来、悲しみと嘆きとは逃げ去る。
5112 わたし、このわたしが、あなたがたを慰める。あなたは、何者なのか。死ななければならない人間や、草にも等しい人の子を恐れるとは。
5113 天を引き延べ、地の基を定め、あなたを造った【主】を、あなたは忘れ、一日中、絶えず、しいたげる者の憤りを恐れている。まるで滅びに定められているかのようだ。そのしいたげる者の憤りはどこにあるのか。
5114 捕らわれ人は、すぐ解き放たれ、死んで穴に下ることがなく、パンにも事欠かない。
5115 わたしは、あなたの神、【主】であって、海をかき立て、波をとどろかせる。その名は万軍の【主】。
5116 わたしは、わたしのことばをあなたの口に置き、わたしの手の陰にあなたをかばい、天を引き延べ、地の基を定め、「あなたはわたしの民だ」とシオンに言う。
5117 さめよ。さめよ。立ち上がれ。エルサレム。あなたは、【主】の手から、憤りの杯を飲み、よろめかす大杯を飲み干した。
5118 彼女が産んだすべての子らのうち、だれも彼女を導く者がなく、彼女が育てたすべての子らのうち、だれも彼女の手を取る者がない。
5119 これら二つの事が、あなたを見舞う。だれが、あなたのために嘆くだろうか。滅亡と破滅、ききんと剣──わたしはどのようにしてあなたを慰めようか。
5120 あなたの子らは網にかかった大かもしかのように気を失って、すべての町かどに倒れ伏す。彼らには、【主】の憤りと、あなたの神のとがめとが満ちている。
5121 それゆえ、さあ、これを聞け。悩んでいる者、酔ってはいても、酒のせいではない者よ。
5122 あなたの主、ご自分の民を弁護するあなたの神、【主】は、こう仰せられる。「見よ。わたしはあなたの手から、よろめかす杯を取り上げた。あなたはわたしの憤りの大杯をもう二度と飲むことはない。
5123 わたしはこれを、あなたを悩ます者たちの手に渡す。彼らはかつてあなたに、『ひれ伏せ。われわれは乗り越えて行こう』と言ったので、あなたは背中を地面のようにし、また、歩道のようにして、彼らが乗り越えて行くのにまかせた。」

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