雅歌

0401 ああ、わが愛する者。あなたはなんと美しいことよ。なんと美しいことよ。あなたの目は、顔おおいのうしろで鳩のようだ。あなたの髪は、ギルアデの山から降りて来るやぎの群れのよう、
0402 あなたの歯は、洗い場から上って来て毛を刈られる雌羊の群れのようだ。それはみな、ふたごを産み、ふたごを産まないものは一頭もいない。
0403 あなたのくちびるは紅の糸。あなたの口は愛らしい。あなたの頬は、顔おおいのうしろにあって、ざくろの片割れのようだ。
0404 あなたの首は、兵器庫のために建てられたダビデのやぐらのようだ。その上には千の盾が掛けられていて、みな勇士の丸い小盾だ。
0405 あなたの二つの乳房は、ゆりの花の間で草を食べているふたごのかもしか、二頭の子鹿のようだ。
0406 そよ風が吹き始め、影が消え去るころまでに、私は没薬の山、乳香の丘に行こう。
0407 わが愛する者よ。あなたのすべては美しく、あなたには何の汚れもない。
0408 花嫁よ。私といっしょにレバノンから、私といっしょにレバノンから来なさい。アマナの頂から、セニル、すなわちヘルモンの頂から、獅子のほら穴、ひょうの山から降りて来なさい。
0409 私の妹、花嫁よ。あなたは私の心を奪った。あなたのただ一度のまなざしと、あなたの首飾りのただ一つの宝石で、私の心を奪ってしまった。
0410 私の妹、花嫁よ。あなたの愛は、なんと麗しいことよ。あなたの愛は、ぶどう酒よりもはるかにまさり、あなたの香油のかおりは、すべての香料にもまさっている。
0411 花嫁よ。あなたのくちびるは蜂蜜をしたたらせ、あなたの舌の裏には蜜と乳がある。あなたの着物のかおりは、レバノンのかおりのようだ。
0412 私の妹、花嫁は、閉じられた庭、閉じられた源、封じられた泉。
0413 あなたの産み出すものは、最上の実をみのらすざくろの園、ヘンナ樹にナルド、
0414 ナルド、サフラン、菖蒲、肉桂に、乳香の取れるすべての木、没薬、アロエに、香料の最上のものすべて、
0415 庭の泉、湧き水の井戸、レバノンからの流れ。
0416 北風よ、起きよ。南風よ、吹け。私の庭に吹き、そのかおりを漂わせておくれ。私の愛する方が庭に入り、その最上の実を食べることができるように。
0501 私の妹、花嫁よ。私は、私の庭に入り、没薬と香料を集め、蜂の巣と蜂蜜を食べ、ぶどう酒と乳を飲む。友よ、食べよ。飲め。愛する人たちよ。大いに飲め。
0502 私は眠っていましたが、心はさめていました。戸をたたいている愛する方の声。「わが妹、わが愛する者よ。戸をあけておくれ。私の鳩よ。汚れのないものよ。私の頭は露にぬれ、髪の毛も夜のしずくでぬれている。」
0503 私は着物を脱いでしまった。どうしてまた、着られましょう。足も洗ってしまった。どうしてまた、よごせましょう。
0504 私の愛する方が戸の穴から手を差し入れました。私の心は、あの方のために立ち騒ぎました。
0505 私は起きて、私の愛する方のために戸をあけました。私の手から没薬が、私の指から没薬の液が、かんぬきの取っ手の上にしたたりました。
0506 私が、愛する方のために戸をあけると、愛する方は、背を向けて去って行きました。あの方のことばで、私は気を失いました。私が捜しても、あの方は見あたりませんでした。私が呼んでも、答えはありませんでした。
0507 町を行き巡る夜回りたちが私を見つけました。彼らは私を打ち、傷つけました。城壁を守る者たちも、私のかぶり物をはぎ取りました。
0508 エルサレムの娘たち。誓ってください。あなたがたが私の愛する方を見つけたら、あの方に何と言ってくださるでしょう。私が愛に病んでいる、と言ってください。
0509 女のなかで最も美しい人よ。あなたの愛する方は、ほかの愛人より何がすぐれているのですか。あなたがそのように私たちに切に願うとは。あなたの愛する方は、ほかの愛人より何がすぐれているのですか。
0510 私の愛する方は、輝いて、赤く、万人よりすぐれ、
0511 その頭は純金です。髪の毛はなつめやしの枝で、烏のように黒く、
0512 その目は、乳で洗われ、池のほとりで休み、水の流れのほとりにいる鳩のようです。
0513 その頬は、良いかおりを放つ香料の花壇のよう。くちびるは没薬の液をしたたらせるゆりの花。
0514 その腕は、タルシシュの宝石をはめ込んだ金の棒。からだは、サファイヤでおおった象牙の細工。
0515 その足は、純金の台座に据えられた大理石の柱。その姿はレバノンのよう。杉のようにすばらしい。
0516 そのことばは甘いぶどう酒。あの方のすべてがいとしい。エルサレムの娘たち。これが私の愛する方、これが私の連れ合いです。
0601 女のなかで最も美しい人よ。あなたの愛する方は、どこへ行かれたのでしょう。あなたの愛する方は、どこへ向かわれたのでしょう。私たちも、あなたといっしょに捜しましょう。
0602 私の愛する方は、自分の庭、香料の花壇へ下って行かれました。庭の中で群れを飼い、ゆりの花を集めるために。
0603 私は、私の愛する方のもの。私の愛する方は私のもの。あの方はゆりの花の間で群れを飼っています。
0604 わが愛する者よ。あなたはティルツァのように美しく、エルサレムのように愛らしい。だが、旗を掲げた軍勢のように恐ろしい。
0605 あなたの目を私からそらしておくれ。それが私をひきつける。あなたの髪は、ギルアデから降りて来るやぎの群れのよう、
0606 あなたの歯は、洗い場から上って来た雌羊の群れのようだ。それはみな、ふたごを産み、ふたごを産まないものは一頭もいない。
0607 あなたの頬は、顔おおいのうしろにあって、ざくろの片割れのようだ。
0608 王妃は六十人、そばめは八十人、おとめたちは数知れない。
0609 汚れのないもの、私の鳩はただひとり。彼女は、その母のひとり子、彼女を産んだ者の愛する子。娘たちは彼女を見て、幸いだと言い、王妃たち、そばめたちも彼女をほめた。
0610 「暁の光のように見おろしている、月のように美しい、太陽のように明るい、旗を掲げた軍勢のように恐ろしいもの。それはだれか。」
0611 私はくるみの木の庭へ下って行きました。谷の新緑を見るために。ぶどうの木が芽を出したか、ざくろの花が咲いたかを見るために。
0612 私自身が知らないうちに、私は民の高貴な人の車に乗せられていました。
0613 帰れ。帰れ。シュラムの女よ。帰れ。帰れ。私たちはあなたを見たい。どうしてあなたがたはシュラムの女を見るのです。二つの陣営の舞のように。

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