創世記

0101 初めに、神が天と地を創造した。
0102 地は茫漠として何もなかった。やみが大水の上にあり、神の霊が水の上を動いていた。
0103 神は仰せられた。「光があれ。」すると光があった。
0104 神は光を見て良しとされた。神は光とやみとを区別された。
0105 神は光を昼と名づけ、やみを夜と名づけられた。夕があり、朝があった。 一日。
0106 神は仰せられた。「大空が水の真っただ中にあれ。水と水との間に区別があれ。」
0107 神は大空を造り、大空の下の水と、大空の上の水とを区別された。そのようになった。
0108 神は大空を天と名づけられた。夕があり、朝があった。 二日。
0109 神は仰せられた。「天の下の水が一所に集まれ。かわいた所が現れよ。」そのようになった。
0110 神はかわいた所を地と名づけ、水の集まった所を海と名づけられた。神はそれを見て良しとされた。
0111 神は仰せられた。「地が植物、すなわち種を生じる草やその中に種がある実を結ぶ果樹を、種類にしたがって、地の上に芽ばえさせよ。」そのようになった。
0112 地は植物、すなわち種を生じる草を、種類にしたがって、またその中に種がある実を結ぶ木を、種類にしたがって生じさせた。神はそれを見て良しとされた。
0113 夕があり、朝があった。 三日。
0114 神は仰せられた。「光る物が天の大空にあって、昼と夜とを区別せよ。しるしのため、季節のため、日のため、年のためにあれ。
0115 また天の大空で光る物となり、地上を照らせ。」そのようになった。
0116 神は二つの大きな光る物を造られた。大きいほうの光る物には昼をつかさどらせ、小さいほうの光る物には夜をつかさどらせた。また星を造られた。
0117 神はそれらを天の大空に置き、地上を照らさせ、
0118 また昼と夜とをつかさどり、光とやみとを区別するようにされた。神はそれを見て良しとされた。
0119 夕があり、朝があった。 四日。
0120 神は仰せられた。「水には生き物が群がれ。鳥が地の上、天の大空を飛べ。」
0121 神は、海の巨獣と、種類にしたがって、水に群がりうごめくすべての生き物と、種類にしたがって、翼のあるすべての鳥を創造された。神はそれを見て良しとされた。
0122 神はそれらを祝福して仰せられた。「生めよ。ふえよ。海の水に満ちよ。また鳥は地にふえよ。」
0123 夕があり、朝があった。 五日。
0124 神は仰せられた。「地が、種類にしたがって、生き物を生ぜよ。家畜や、はうもの、野の獣を、種類にしたがって。」そのようになった。
0125 神は、種類にしたがって野の獣を、種類にしたがって家畜を、種類にしたがって地のすべてのはうものを造られた。神はそれを見て良しとされた。
0126 神は仰せられた。「さあ人を造ろう。われわれのかたちとして、われわれに似せて。彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地をはうすべてのものを支配するように。」
0127 神は人をご自身のかたちとして創造された。神のかたちとして彼を創造し、男と女とに彼らを創造された。
0128 神は彼らを祝福された。神は彼らに仰せられた。「生めよ。ふえよ。地を満たせ。地を従えよ。海の魚、空の鳥、地をはうすべての生き物を支配せよ。」
0129 神は仰せられた。「見よ。わたしは、全地の上にあって、種を持つすべての草と、種を持って実を結ぶすべての木をあなたがたに与える。それがあなたがたの食物となる。
0130 また、地のすべての獣、空のすべての鳥、地をはうすべてのもので、いのちの息のあるもののために、食物として、すべての緑の草を与える。」そのようになった。
0131 神はお造りになったすべてのものを見られた。見よ。それは非常に良かった。夕があり、朝があった。 六日。
0201 こうして、天と地とそのすべての万象が完成された。
0202 神は 七日目に、なさっていたわざの完成を告げられた。すなわち 七日目に、なさっていたすべてのわざを休まれた。
0203 神は 七日目を祝福し、この日を聖であるとされた。それは、その日に、神がなさっていたすべての創造のわざを休まれたからである。
0204 これは天と地が創造されたときの経緯である。神である【主】が地と天を造られたとき、
0205 地には、まだ一本の野の灌木もなく、まだ一本の野の草も芽を出していなかった。それは、神である【主】が地上に雨を降らせず、土地を耕す人もいなかったからである。
0206 ただ、水が地から湧き出て、土地の全面を潤していた。
0207 神である【主】は土地のちりで人を形造り、その鼻にいのちの息を吹き込まれた。そこで人は生きものとなった。
0208 神である【主】は東の方エデンに園を設け、そこに主の形造った人を置かれた。
0209 神である【主】は、その土地から、見るからに好ましく食べるのに良いすべての木を生えさせた。園の中央には、いのちの木、それから善悪の知識の木を生えさせた。
0210 一つの川が、この園を潤すため、エデンから出ており、そこから分かれて、四つの源となっていた。
0211 一のものの名はピション。それはハビラの全土を巡って流れる。そこには金があった。
0212 その地の金は、良質で、また、そこにはベドラハとしまめのうもあった。
0213 二の川の名はギホン。それはクシュの全土を巡って流れる。
0214 三の川の名はティグリス。それはアシュルの東を流れる。 四の川、それはユーフラテスである。
0215 神である【主】は人を取り、エデンの園に置き、そこを耕させ、またそこを守らせた。
0216 神である【主】は人に命じて仰せられた。「あなたは、園のどの木からでも思いのまま食べてよい。
0217 しかし、善悪の知識の木からは取って食べてはならない。それを取って食べるとき、あなたは必ず死ぬ。」
0218 神である【主】は仰せられた。「人が、ひとりでいるのは良くない。わたしは彼のために、彼にふさわしい助け手を造ろう。」
0219 神である【主】は土からあらゆる野の獣と、あらゆる空の鳥を形造り、それにどんな名を彼がつけるかを見るために、人のところに連れて来られた。人が生き物につける名はみな、それがその名となった。
0220 人はすべての家畜、空の鳥、野のあらゆる獣に名をつけた。しかし人には、ふさわしい助け手が見つからなかった。
0221 神である【主】は深い眠りをその人に下されたので、彼は眠った。そして、彼のあばら骨の一つを取り、そのところの肉をふさがれた。
0222 神である【主】は、人から取ったあばら骨をひとりの女に造り上げ、その女を人のところに連れて来られた。
0223 人は言った。「これこそ、今や、私の骨からの骨、私の肉からの肉。これを女と名づけよう。これは男から取られたのだから。」
0224 それゆえ男はその父母を離れ、妻と結び合い、ふたりは一体となるのである。
0225 人とその妻は、ふたりとも裸であったが、互いに恥ずかしいと思わなかった。
0301 さて、神である【主】が造られたあらゆる野の獣のうちで、蛇が一番狡猾であった。蛇は女に言った。「あなたがたは、園のどんな木からも食べてはならない、と神は、ほんとうに言われたのですか。」
0302 女は蛇に言った。「私たちは、園にある木の実を食べてよいのです。
0303 しかし、園の中央にある木の実について、神は、『あなたがたは、それを食べてはならない。それに触れてもいけない。あなたがたが死ぬといけないからだ』と仰せになりました。」
0304 そこで、蛇は女に言った。「あなたがたは決して死にません。
0305 あなたがたがそれを食べるその時、あなたがたの目が開け、あなたがたが神のようになり、善悪を知るようになることを神は知っているのです。」
0306 そこで女が見ると、その木は、まことに食べるのに良く、目に慕わしく、賢くするというその木はいかにも好ましかった。それで女はその実を取って食べ、いっしょにいた夫にも与えたので、夫も食べた。
0307 このようにして、ふたりの目は開かれ、それで彼らは自分たちが裸であることを知った。そこで、彼らは、いちじくの葉をつづり合わせて、自分たちの腰のおおいを作った。
0308 そよ風の吹くころ、彼らは園を歩き回られる神である【主】の声を聞いた。それで人とその妻は、神である【主】の御顔を避けて園の木の間に身を隠した。
0309 神である【主】は、人に呼びかけ、彼に仰せられた。「あなたは、どこにいるのか。」
0310 彼は答えた。「私は園で、あなたの声を聞きました。それで私は裸なので、恐れて、隠れました。」
0311 すると、仰せになった。「あなたが裸であるのを、だれがあなたに教えたのか。あなたは、食べてはならない、と命じておいた木から食べたのか。」
0312 人は言った。「あなたが私のそばに置かれたこの女が、あの木から取って私にくれたので、私は食べたのです。」
0313 そこで、神である【主】は女に仰せられた。「あなたは、いったいなんということをしたのか。」女は答えた。「蛇が私を惑わしたのです。それで私は食べたのです。」
0314 神である【主】は蛇に仰せられた。「おまえが、こんな事をしたので、おまえは、あらゆる家畜、あらゆる野の獣よりものろわれる。おまえは、一生、腹ばいで歩き、ちりを食べなければならない。
0315 わたしは、おまえと女との間に、また、おまえの子孫と女の子孫との間に、敵意を置く。彼は、おまえの頭を踏み砕き、おまえは、彼のかかとにかみつく。」
0316 女にはこう仰せられた。「わたしは、あなたのうめきと苦しみを大いに増す。あなたは、苦しんで子を産まなければならない。しかも、あなたは夫を恋い慕うが、彼は、あなたを支配することになる。」
0317 また、人に仰せられた。「あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないとわたしが命じておいた木から食べたので、土地は、あなたのゆえにのろわれてしまった。あなたは、一生、苦しんで食を得なければならない。
0318 土地は、あなたのために、いばらとあざみを生えさせ、あなたは、野の草を食べなければならない。
0319 あなたは、顔に汗を流して糧を得、ついに、あなたは土に帰る。あなたはそこから取られたのだから。あなたはちりだから、ちりに帰らなければならない。」
0320 さて、人は、その妻の名をエバと呼んだ。それは、彼女がすべて生きているものの母であったからである。
0321 神である【主】は、アダムとその妻のために、皮の衣を作り、彼らに着せてくださった。
0322 神である【主】は仰せられた。「見よ。人はわれわれのひとりのようになり、善悪を知るようになった。今、彼が、手を伸ばし、いのちの木からも取って食べ、永遠に生きないように。」
0323 そこで神である【主】は、人をエデンの園から追い出されたので、人は自分がそこから取り出された土を耕すようになった。
0324 こうして、神は人を追放して、いのちの木への道を守るために、エデンの園の東に、ケルビムと輪を描いて回る炎の剣を置かれた。

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