0401 すると、テマン人エリファズが話しかけて言った。
0402 もし、だれかがあなたにあえて語りかけたら、あなたはそれに耐えられようか。しかし、だれが黙っておられよう。
0403 見よ。あなたは多くの人を訓戒し、弱った手を力づけた。
0404 あなたのことばはつまずく者を起こし、くずおれるひざをしっかり立たせた。
0405 だが、今これがあなたにふりかかると、あなたは、これに耐えられない。これがあなたを打つと、あなたはおびえている。
0406 あなたが神を恐れていることはあなたの確信ではないか。あなたの望みはあなたの潔白な行いではないか。
0407 さあ思い出せ。だれか罪がないのに滅びた者があるか。どこに正しい人で絶たれた者があるか。
0408 私の見るところでは、不幸を耕し、害毒を蒔く者が、それを刈り取るのだ。
0409 彼らは神のいぶきによって滅び、その怒りの息によって消えうせる。
0410 獅子のほえる声、たける獅子の声は共にやみ、若い獅子のきばも砕かれる。
0411 雄獅子は獲物がなくて滅び、雌獅子の子らは散らされる。
0412 一つのことばが私に忍び寄り、そのささやきが私の耳を捕らえた。
0413 夜の幻で思い乱れ、深い眠りが人々を襲うとき、
0414 恐れとおののきが私にふりかかり、私の骨々は、わなないた。
0415 そのとき、一つの霊が私の顔の上を通り過ぎ、私の身の毛がよだった。
0416 それは立ち止まったが、私はその顔だちを見分けることができなかった。しかし、その姿は、私の目の前にあった。静寂…、そして私は一つの声を聞いた。
0417 人は神の前に正しくありえようか。人はその造り主の前にきよくありえようか。
0418 見よ。神はご自分のしもべさえ信頼せず、その御使いたちにさえ誤りを認められる。
0419 まして、ちりの中に土台を据える泥の家に住む者はなおさらのことである。彼らはしみのようにたやすく押しつぶされ、
0420 彼らは朝から夕方までに打ち砕かれ、永遠に滅ぼされて、だれも顧みない。
0421 彼らの幕屋の綱も彼らのうちから取り去られないであろうか。彼らは知恵がないために死ぬ。
0501 さあ、呼んでみよ。だれかあなたに答える者があるか。聖者のうちのだれにあなたは向かって行こうとするのか。
0502 憤りは愚か者を殺し、ねたみはあさはかな者を死なせる。
0503 私は愚か者が根を張るのを見た。しかし、その住みかは、たちまち腐った。
0504 その子たちは危険にさらされ、門で押しつぶされても、彼らを救い出す者もいない。
0505 彼の刈り入れる物は飢えた人が食べ、いばらの中からさえこれを奪う。渇いた者が彼らの富をあえぎ求める。
0506 なぜなら、不幸はちりから出て来ず、苦しみは土から芽を出さないからだ。
0507 人は生まれると苦しみに会う。火花が上に飛ぶように。
0508 私なら、神に尋ね、私のことを神に訴えよう。
0509 神は大いなる事をなして測り知れず、その奇しいみわざは数えきれない。
0510 神は地の上に雨を降らし、野の面に水を送る。
0511 神は低い者を高く上げ、悲しむ者を引き上げて救う。
0512 神は悪賢い者のたくらみを打ちこわす。それで彼らの手は、何の効果ももたらさない。
0513 神は知恵のある者を彼ら自身の悪知恵を使って捕らえる。彼らのずるいはかりごとはくつがえされる。
0514 彼らは昼間にやみに会い、真昼に、夜のように手さぐりする。
0515 神は貧しい者を剣から、彼らの口から、強い者の手から救われる。
0516 こうして寄るべのない者は望みを持ち、不正はその口をつぐむ。
0517 ああ、幸いなことよ。神に責められるその人は。だから全能者の懲らしめをないがしろにしてはならない。
0518 神は傷つけるが、それを包み、打ち砕くが、その手でいやしてくださるからだ。
0519 神は六つの苦しみから、あなたを救い出し、七つ目のわざわいはあなたに触れない。
0520 ききんのときには死からあなたを救い、戦いのときにも剣の力からあなたを救う。
0521 舌でむち打たれるときも、あなたは隠され、破壊の来るときにも、あなたはそれを恐れない。
0522 あなたは破壊とききんとをあざ笑い、地の獣をも恐れない。
0523 野の石とあなたは契りを結び、野の獣はあなたと和らぐからだ。
0524 あなたは自分の天幕が安全であるのを知り、あなたの牧場を見回っても何も失っていない。
0525 あなたは自分の子孫が多くなり、あなたのすえが地の草のようになるのを知ろう。
0526 あなたは長寿を全うして墓に入ろう。あたかも麦束がその時期に収められるように。
0527 さあ、私たちが調べ上げたことはこのとおりだ。これを聞き、あなた自身でこれを知れ。
0601 ヨブは答えて言った。
0602 ああ、私の苦悶の重さが量られ、私の災害も共にはかりにかけられたら。
0603 それは、きっと海の砂よりも重かろう。だから、私のことばが激しかったのだ。
0604 全能者の矢が私に刺さり、私のたましいがその毒を飲み、神の脅かしが私に備えられている。
0605 野ろばは若草の上で鳴くだろうか。牛は飼葉の上でうなるだろうか。
0606 味のない物は塩がなくて食べられようか。卵のしろみに味があろうか。
0607 私はそんなものに触れるまい。それは私には腐った食物のようだ。
0608 ああ、私の願いがかなえられ、私の望むものを神が与えてくださるとよいのに。
0609 私を砕き、御手を伸ばして私を絶つことが神のおぼしめしであるなら、
0610 私はなおも、それに慰めを得、容赦ない苦痛の中でも、こおどりして喜ぼう。私は聖なる方のことばを拒んだことがないからだ。
0611 私にどんな力があるからといって、私は待たなければならないのか。私にどんな終わりがあるからといって、私は耐え忍ばなければならないのか。
0612 私の力は石の力であろうか。私の肉は青銅であろうか。
0613 私のうちには、何の助けもないではないか。すぐれた知性も私から追い散らされているではないか。
0614 落胆している者には、その友から友情を。さもないと、彼は全能者への恐れを捨てるだろう。
0615 私の兄弟たちは川のように裏切った。流れている川筋の流れのように。
0616 氷で黒ずみ、雪がその上を隠している。
0617 炎天のころになると、それはなくなり、暑くなると、その所から消える。
0618 隊商はその道を変え、荒地に行って、滅びる。
0619 テマの隊商はこれを目当てとし、シェバの旅人はこれに期待をかける。
0620 彼らはこれにたよったために恥を見、そこまで来て、はずかしめを受ける。
0621 今あなたがたは、そのようになった。あなたがたは恐ろしいことを見ておびえている。
0622 私が言ったことがあるか。「私に与えよ」とか、「あなたがたの持ち物の中から、私のために贈り物をせよ」と。
0623 あるいは「敵の手から私を救い出せ。横暴な者の手から私を贖え」と。
0624 私に教えよ。そうすれば、私は黙ろう。私がどんなあやまちを犯したか、私に悟らせよ。
0625 まっすぐなことばはなんと痛いことか。あなたがたは何を責めたてているのか。
0626 あなたがたはことばで私を責めるつもりか。絶望した者のことばは風のようだ。
0627 あなたがたはみなしごをくじ引きにし、自分の友さえ売りに出す。
0628 今、思い切って私のほうを向いてくれ。あなたがたの顔に向かって、私は決してまやかしを言わない。
0629 どうか、思い直してくれ。不正があってはならない。もう一度、思い返してくれ。私の正しい訴えを。
0630 私の舌に不正があるだろうか。私の口はわざわいをわきまえないだろうか。