4001 【主】はさらに、ヨブに答えて仰せられた。
4002 非難する者が全能者と争おうとするのか。神を責める者は、それを言いたててみよ。
4003 ヨブは【主】に答えて言った。
4004 ああ、私はつまらない者です。あなたに何と口答えできましょう。私はただ手を口に当てるばかりです。
4005 一度、私は語りましたが、もう口答えしません。二度と、私はくり返しません。
4006 【主】はあらしの中からヨブに答えて仰せられた。
4007 さあ、あなたは勇士のように腰に帯を締めよ。わたしはあなたに尋ねる。わたしに示せ。
4008 あなたはわたしのさばきを無効にするつもりか。自分を義とするために、わたしを罪に定めるのか。
4009 あなたには神のような腕があるのか。神のような声で雷鳴をとどろき渡らせるのか。
4010 さあ、誉れ、気高さで身を装い、尊厳と威光を身につけよ。
4011 あなたの激しい怒りを吐き散らし、すべて高ぶる者を見て、これを低くせよ。
4012 すべて高ぶる者を見て、これを押さえ、悪者どもを、その場で踏みにじれ。
4013 彼らを共にちりの中に隠し、その顔を隠れた所につなぎとめよ。
4014 そうすれば、わたしはあなたをたたえて言おう。あなたの右の手があなたを救えると。
4015 さあ、河馬を見よ。これはあなたと並べてわたしが造ったもの、牛のように草を食らう。
4016 見よ。その力は腰にあり、その強さは腹の筋にある。
4017 尾は杉の木のように垂れ、ももの筋はからみ合っている。
4018 骨は青銅の管、肋骨は鉄の棒のようだ。
4019 これは神が造られた 一の獣、これを造られた方が、ご自分の剣でこれに近づく。
4020 山々は、これのために産物をもたらし、野の獣もみな、そこで戯れる。
4021 彼ははすの下、あるいは、葦の茂みや沼に横たわる。
4022 はすはその陰で、これをおおい、川の柳はこれを囲む。
4023 たとい川があふれても、それはあわてない。その口にヨルダン川が注ぎ込んでも、動じない。
4024 だれがその目をつかんでこれを捕らええようか。だれがわなにかけて、その鼻を突き通すことができようか。
4101 あなたは釣り針でレビヤタンを釣り上げることができるか。輪繩でその舌を押さえつけることができるか。
4102 あなたは葦をその鼻に通すことができるか。鉤をそのあごに突き通すことができるか。
4103 これがあなたに、しきりに哀願し、優しいことばで、あなたに語りかけるだろうか。
4104 これがあなたと契約を結び、あなたはこれを捕らえていつまでも奴隷とすることができようか。
4105 あなたは鳥と戯れるようにこれと戯れ、あなたの娘たちのためにこれをつなぐことができるか。
4106 漁師仲間はこれを売りに出し、商人たちの間でこれを分けるだろうか。
4107 あなたはもりでその皮を、やすでその頭を十分に突くことができようか。
4108 その上にあなたの手を置いてみよ。その戦いを思い出して、二度と手を出すな。
4109 見よ。その望みは裏切られる。それを見ただけで投げ倒されるではないか。
4110 これを起こすほどの狂った者はいない。だから、だれがいったい、わたしの前に立つことができよう。
4111 だれがわたしにささげたのか、わたしが報いなければならないほどに。天の下にあるものはみな、わたしのものだ。
4112 わたしは彼のおしゃべりと、雄弁と、美辞麗句に黙っていることはできない。
4113 だれがその外套をはぎ取ることができるか。だれがその胸当ての折り目の間に、入れるか。
4114 だれがその顔の戸をあけることができるか。その歯の回りは恐ろしい。
4115 その背は並んだ盾、封印したように堅く閉じている。
4116 一つ一つぴったりついて、風もその間を通らない。
4117 互いにくっつき合い、堅くついて離せない。
4118 そのくしゃみはいなずまを放ち、その目は暁のまぶたのようだ。
4119 その口からは、たいまつが燃え出し、火花を散らす。
4120 その鼻からは煙が出て、煮え立つかまや、燃える葦のようだ。
4121 その息は炭火をおこし、その口から炎が出る。
4122 その首には力が宿り、その前には恐れが踊る。
4123 その肉のひだはくっつき合い、その身にしっかりついて、動かない。
4124 その心臓は石のように堅く、臼の下石のように堅い。
4125 それが起き上がると、力ある者もおじけづき、ぎょっとしてとまどう。
4126 それを剣で襲っても、ききめがなく、槍も投げ槍も矢じりもききめがない。
4127 それは鉄をわらのように、青銅を腐った木のようにみなす。
4128 矢もそれを逃げさせることができず、石投げの石も、それにはわらのようになる。
4129 こん棒をもわらのようにみなし、投げ槍のうなる音をあざ笑う。
4130 その下腹は鋭い土器のかけら、それは打穀機のように泥の上に身を伸ばす。
4131 それは深みをかまのように沸き立たせ、海を香油をかき混ぜるなべのようにする。
4132 その通ったあとは輝き、深い淵は白髪のように思われる。
4133 地の上には、これと似たものはなく、恐れを知らないものとして造られた。
4134 それは、すべて高いものを見おろし、それは、すべての誇り高い獣の王である。
4201 ヨブは【主】に答えて言った。
4202 あなたには、すべてができること、あなたは、どんな計画も成し遂げられることを、私は知りました。
4203 知識もなくて、摂理をおおい隠す者は、だれか。まことに、私は、自分で悟りえないことを告げました。自分でも知りえない不思議を。
4204 さあ聞け。わたしが語る。わたしがあなたに尋ねる。わたしに示せ。
4205 私はあなたのうわさを耳で聞いていました。しかし、今、この目であなたを見ました。
4206 それで私は自分をさげすみ、ちりと灰の中で悔いています。
4207 さて、【主】がこれらのことばをヨブに語られて後、【主】はテマン人エリファズに仰せられた。「わたしの怒りはあなたとあなたのふたりの友に向かって燃える。それは、あなたがたがわたしについて真実を語らず、わたしのしもべヨブのようではなかったからだ。
4208 今、あなたがたは雄牛七頭、雄羊七頭を取って、わたしのしもべヨブのところに行き、あなたがたのために全焼のいけにえをささげよ。わたしのしもべヨブはあなたがたのために祈ろう。わたしは彼を受け入れるので、わたしはあなたがたの恥辱となることはしない。あなたがたはわたしについて真実を語らず、わたしのしもべヨブのようではなかったが。」
4209 テマン人エリファズと、シュアハ人ビルダデと、ナアマ人ツォファルが行って、【主】の彼らに命じたようにすると、【主】はヨブの祈りを受け入れられた。
4210 ヨブがその友人たちのために祈ったとき、【主】はヨブの繁栄を元どおりにされた。【主】はヨブの所有物もすべて二倍に増された。
4211 こうして彼のすべての兄弟、すべての姉妹、それに以前のすべての知人は、彼のところに来て、彼の家で彼とともに食事をした。そして彼をいたわり、【主】が彼の上にもたらしたすべてのわざわいについて、彼を慰めた。彼らはめいめい一ケシタと金の輪一つずつを彼に与えた。
4212 【主】はヨブの前の半生よりあとの半生をもっと祝福された。それで彼は羊一万四千頭、らくだ六千頭、牛一千くびき、雌ろば一千頭を持つことになった。
4213 また、息子七人、娘三人を持った。
4214 彼はその 一の娘をエミマ、 二の娘をケツィア、 三の娘をケレン・ハプクと名づけた。
4215 ヨブの娘たちほど美しい女はこの国のどこにもいなかった。彼らの父は、彼女たちにも、その兄弟たちの間に相続地を与えた。
4216 この後ヨブは百四十年生き、自分の子と、その子の子たちを四代目まで見た。
4217 こうしてヨブは老年を迎え、長寿を全うして死んだ。