列王記 第T

1301 ひとりの神の人が、【主】の命令によって、ユダからベテルにやって来た。ちょうどそのとき、ヤロブアムは香をたくために祭壇のそばに立っていた。
1302 すると、この人は、【主】の命令によって祭壇に向かい、これに呼ばわって言った。「祭壇よ。祭壇よ。【主】はこう仰せられる。『見よ。ひとりの男の子がダビデの家に生まれる。その名はヨシヤ。彼は、おまえの上で香をたく高き所の祭司たちをいけにえとしておまえの上にささげ、人の骨がおまえの上で焼かれる。』」
1303 その日、彼は次のように言って一つのしるしを与えた。「これが、【主】の告げられたしるしである。見よ。祭壇は裂け、その上の灰はこぼれ出る。」
1304 ヤロブアム王は、ベテルの祭壇に向かって叫んでいる神の人のことばを聞いたとき、祭壇から手を伸ばして、「彼を捕らえよ」と言った。すると、彼に向けて伸ばした手はしなび、戻すことができなくなった。
1305 神の人が【主】のことばによって与えたしるしのとおり、祭壇は裂け、灰は祭壇からこぼれ出た。
1306 そこで、王はこの神の人に向かって言った。「どうか、あなたの神、【主】にお願いをして、私のために祈ってください。そうすれば、私の手はもとに戻るでしょう。」神の人が【主】に願ったので、王の手はもとに戻り、前と同じようになった。
1307 王は神の人に言った。「私といっしょに家に来て、食事をして元気をつけてください。あなたに贈り物をしたい。」
1308 すると、神の人は王に言った。「たとい、あなたの家の半分を私に下さっても、あなたといっしょにまいりません。また、この所ではパンを食べず、水も飲みません。
1309 【主】の命令によって、『パンを食べてはならない。水も飲んではならない。また、もと来た道を通って帰ってはならない』と命じられているからです。」
1310 こうして、彼はベテルに来たときの道は通らず、ほかの道を通って帰った。
1311 ひとりの年寄りの預言者がベテルに住んでいた。その息子たちが来て、その日、ベテルで神の人がしたことを残らず彼に話した。また、この人が王に告げたことばも父に話した。
1312 すると父は、「その人はどの道を行ったか」と彼らに尋ねた。息子たちはユダから来た神の人の帰って行った道を知っていた。
1313 父は息子たちに、「ろばに鞍を置いてくれ」と言った。彼らがろばに鞍を置くと、父はろばに乗り、
1314 神の人のあとを追って行った。その人が樫の木の下にすわっているのを見つけると、「あなたがユダからおいでになった神の人ですか」と尋ねた。その人は、「私です」と答えた。
1315 彼はその人に、「私といっしょに家に来て、パンを食べてください」と言った。
1316 するとその人は、「私はあなたといっしょに引き返し、あなたといっしょに行くことはできません。この所では、あなたといっしょにパンも食べず、水も飲みません。
1317 というのは、私は【主】の命令によって、『そこではパンを食べてはならない。水も飲んではならない。もと来た道を通って帰ってはならない』と命じられているからです。」
1318 彼はその人に言った。「私もあなたと同じく預言者です。御使いが【主】の命令を受けて、私に『その人をあなたの家に連れ帰り、パンを食べさせ、水を飲ませよ』と言って命じました。」こうしてその人をだました。
1319 そこで、その人は彼といっしょに帰り、彼の家でパンを食べ、水を飲んだ。
1320 彼らが食卓についていたとき、その人を連れ戻した預言者に、【主】のことばがあったので、
1321 彼はユダから来た神の人に叫んで言った。「【主】はこう仰せられる。『あなたは【主】のことばにそむき、あなたの神、【主】が命じられた命令を守らず、
1322 主があなたに、パンを食べてはならない、水も飲んではならない、と命じられた場所に引き返して、そこであなたはパンを食べ、水を飲んだので、あなたのなきがらは、あなたの先祖の墓には、入らない。』」
1323 彼はパンを食べ、水を飲んで後、彼が連れ帰った預言者のために、ろばに鞍を置いた。
1324 その人が出て行くと、獅子が道でその人に会い、その人を殺した。死体は道に投げ出され、ろばはそのそばに立っていた。獅子も死体のそばに立っていた。
1325 そこを、人々が通りかかり、道に投げ出されている死体と、その死体のそばに立っている獅子を見た。彼らはあの年寄りの預言者の住んでいる町に行って、このことを話した。
1326 その人を途中から連れ帰ったあの預言者は、それを聞いて言った。「それは、【主】のことばにそむいた神の人だ。【主】が彼に告げたことばどおりに、【主】が彼を獅子に渡し、獅子が彼を裂いて殺したのだ。」
1327 そして息子たちに、「ろばに鞍を置いてくれ」と言ったので、彼らは鞍を置いた。
1328 彼は出かけて行って、道に投げ出されている死体と、その死体のそばに立っているろばと獅子とを見つけた。獅子はその死体を食べず、ろばを裂き殺してもいなかった。
1329 そこで、預言者は、神の人の死体を取り上げ、それをろばに乗せてこの年寄りの預言者の町に持ち帰り、いたみ悲しんで、葬った。
1330 彼がなきがらを自分の墓に納めると、みなはその人のために、「ああ、わが兄弟」と言って、いたみ悲しんだ。
1331 彼はその人を葬って後、息子たちに言った。「私が死んだら、あの神の人を葬った墓に私を葬り、あの人の骨のそばに私の骨を納めてくれ。
1332 あの人が【主】の命令によって、ベテルにある祭壇と、サマリヤの町々にあるすべての高き所の宮とに向かって呼ばわったことばは、必ず成就するからだ。」
1333 このことがあって後も、ヤロブアムは悪い道から立ち返ることもせず、引き続いて、一般の民の中から高き所の祭司たちを任命し、だれでも志願する者を任職して高き所の祭司にした。
1334 このことによって、ヤロブアムの家が罪を犯すこととなり、ついには、地の面から根絶やしにされるようになった。
1401 このころ、ヤロブアムの子アビヤが病気になったので、
1402 ヤロブアムは妻に言った。「さあ、変装して、ヤロブアムの妻だと悟られないようにしてシロへ行ってくれ。そこには、私がこの民の王となることを私に告げた預言者アヒヤがいる。
1403 パン十個と菓子数個、それに、蜜のびんを持って彼のところへ行ってくれ。彼は子どもがどうなるか教えてくれるだろう。」
1404 ヤロブアムの妻は言われたとおりにして、シロへ出かけ、アヒヤの家に行ったが、アヒヤは年をとって目がこわばり、見ることができなかった。
1405 しかし、【主】はアヒヤに言われた。「今、ヤロブアムの妻が子どものことで、あなたに尋ねるために来ている。その子が病気だからだ。あなたはこれこれのことを彼女に告げなければならない。入って来るときには、彼女は、ほかの女のようなふりをしている。」
1406 アヒヤは戸口に入って来る彼女の足音を聞いて言った。「お入りなさい。ヤロブアムの奥さん。なぜ、ほかの女のようなふりをしているのですか。私はあなたにきびしいことを伝えなければなりません。
1407 帰って行ってヤロブアムに言いなさい。イスラエルの神、【主】は、こう仰せられます。『わたしは民の中からあなたを高くあげ、わたしの民イスラエルを治める君主とし、
1408 ダビデの家から王国を引き裂いてあなたに与えた。あなたは、わたしのしもべダビデのようではなかった。ダビデは、わたしの命令を守り、心を尽くしてわたしに従い、ただ、わたしの見る目にかなったことだけを行った。
1409 ところが、あなたはこれまでのだれよりも悪いことをし、行って、自分のためにほかの神々と、鋳物の像を造り、わたしの怒りを引き起こし、わたしをあなたのうしろに捨て去った。
1410 だから、見よ、わたしはヤロブアムの家にわざわいをもたらす。ヤロブアムに属する小わっぱから奴隷や自由の者に至るまで、イスラエルにおいて断ち滅ぼし、糞を残らず焼き去るように、ヤロブアムの家のあとを除き去る。
1411 ヤロブアムに属する者で、町で死ぬ者は犬がこれを食らい、野で死ぬ者は空の鳥がこれを食らう。』【主】がこう仰せられたのです。
1412 さあ、家へ帰りなさい。あなたの足が町に入るとき、あの子は死にます。
1413 イスラエルのすべてがその子のためにいたみ悲しんで葬りましょう。ヤロブアムの家の者で、墓に葬られるのは、彼だけでしょう。ヤロブアムの家で、彼は、イスラエルの神、【主】の御心にかなっていたからです。
1414 【主】はご自分のためにイスラエルの上にひとりの王を起こされます。彼は、その日、そしてただちに、ヤロブアムの家を断ち滅ぼします。
1415 【主】は、イスラエルを打って、水に揺らぐ葦のようにし、彼らの先祖たちに与えられたこの良い地からイスラエルを引き抜き、ユーフラテス川の向こうに散らされるでしょう。彼らがアシェラ像を造って【主】の怒りを引き起こしたからです。
1416 ヤロブアムが自分で犯した罪と、彼がイスラエルに犯させた罪のために、主はイスラエルを捨てられるのです。」
1417 ヤロブアムの妻は立ち去って、ティルツァに着いた。彼女が家の敷居に来たとき、その子どもは死んだ。
1418 人々はその子を葬り、全イスラエルは彼のためにいたみ悲しんだ。【主】がそのしもべ、預言者アヒヤによって語られたことばのとおりであった。
1419 ヤロブアムのその他の業績、彼がいかに戦い、いかに治めたかは、イスラエルの王たちの年代記の書にまさしくしるされている。
1420 ヤロブアムが王であった期間は二十二年であった。彼は先祖たちとともに眠り、その子ナダブが代わって王となった。
1421 ユダではソロモンの子レハブアムが王になっていた。レハブアムは四十一歳で王となり、【主】がご自分の名を置くためにイスラエルの全部族の中から選ばれた都、エルサレムで十七年間、王であった。彼の母の名はナアマといい、アモン人であった。
1422 ユダの人々は【主】の目の前に悪を行い、彼らの先祖たちよりひどい罪を犯して主を怒らせた。
1423 彼らもまた、すべての高い丘の上や青木の下に、高き所や、石の柱や、アシェラ像を立てた。
1424 この国には神殿男娼もいた。彼らは、【主】がイスラエル人の前から追い払われた異邦の民の、すべての忌みきらうべきならわしをまねて行っていた。
1425 レハブアム王の 五年に、エジプトの王シシャクがエルサレムに攻め上って来て、
1426 【主】の宮の財宝、王宮の財宝を奪い取り、何もかも奪って、ソロモンが作った金の盾も全部奪い取った。
1427 それで、レハブアム王は、その代わりに青銅の盾を作り、これを王宮の門を守る近衛兵の隊長の手に託した。
1428 王が【主】の宮に入るたびごとに、近衛兵が、これを運んで行き、また、これを近衛兵の控え室に運び帰った。
1429 レハブアムのその他の業績、彼の行ったすべての事、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
1430 レハブアムとヤロブアムとの間には、いつまでも戦いがあった。
1431 レハブアムは彼の先祖たちとともに眠り、先祖たちとともにダビデの町に葬られた。彼の母の名はナアマといい、アモン人であった。彼の子アビヤムが代わって王となった。
1501 ネバテの子ヤロブアム王の 十八年に、アビヤムはユダの王となり、
1502 エルサレムで三年間、王であった。彼の母の名はマアカといい、アブシャロムの娘であった。
1503 彼は父がかつて犯したすべての罪を行い、彼の心は父ダビデの心のようには、彼の神、【主】と全く一つにはなっていなかった。
1504 しかし、ダビデに免じて、彼の神、【主】は、エルサレムにおいて彼に一つのともしびを与え、彼の跡を継ぐ子を起こし、エルサレムを堅く立てられた。
1505 それはダビデが【主】の目にかなうことを行い、ヘテ人ウリヤのことのほかは、一生の間、主が命じられたすべてのことにそむかなかったからである。
1506 レハブアムとヤロブアムとの間には、一生の間、争いがあった。
1507 アビヤムのその他の業績、彼の行ったすべての事、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。アビヤムとヤロブアムとの間には争いがあった。
1508 アビヤムは彼の先祖たちとともに眠り、人々は彼をダビデの町に葬った。彼の子アサが代わって王となった。
1509 イスラエルの王ヤロブアムの 二十年に、ユダの王アサが王となった。
1510 彼はエルサレムで四十一年間、王であった。彼の母の名はマアカといい、アブシャロムの娘であった。
1511 アサは父ダビデのように、【主】の目にかなうことを行った。
1512 彼は神殿男娼を国から追放し、先祖たちが造った偶像をことごとく取り除いた。
1513 彼はまた、彼の母マアカがアシェラのために憎むべき像を造ったので、彼女を王母の位から退けた。アサはその憎むべき像を切り倒し、これをキデロン川で焼いた。
1514 高き所は取り除かれなかったが、アサの心は一生涯、【主】と全く一つになっていた。
1515 彼は、彼の父が聖別した物と、彼が聖別した物、すなわち、銀、金、器類を、【主】の宮に運び入れた。
1516 アサとイスラエルの王バシャとの間には、彼らの生きている間、争いがあった。
1517 イスラエルの王バシャはユダに上って来て、ユダの王アサのもとにだれも出入りできないようにするためにラマを築いた。
1518 アサは【主】の宮の宝物倉と王宮の宝物倉とに残っていた銀と金をことごとく取って、自分の家来たちの手に渡した。アサ王は、彼らをダマスコに住んでいたアラムの王ヘズヨンの子タブリモンの子ベン・ハダデのもとに遣わして言わせた。
1519 「私の父とあなたの父上の間にあったように、私とあなたの間に同盟を結びましょう。ご覧ください。私はあなたに銀と金の贈り物をしました。どうか、イスラエルの王バシャとの同盟を破棄し、彼が私のもとから離れ去るようにしてください。」
1520 ベン・ハダデはアサ王の願いを聞き入れ、自分の配下の将校たちをイスラエルの町々に差し向け、イヨンと、ダンと、アベル・ベテ・マアカ、および、キネレテ全土と、ナフタリの全土とを打った。
1521 バシャはこれを聞くと、ラマを築くのをやめて、ティルツァにとどまった。
1522 アサ王はユダ全土にもれなく布告し、バシャが建築に用いたラマの石材と木材を運び出させた。アサ王は、これを用いてベニヤミンのゲバとミツパとを建てた。
1523 アサのその他のすべての業績、すべての功績、彼の行ったすべての事、彼が建てた町々、それはユダの王たちの年代記の書にしるされているではないか。ただ、彼は年をとったとき、足の病気にかかった。
1524 アサは彼の先祖たちとともに眠り、先祖たちとともに父ダビデの町に葬られた。彼の子ヨシャパテが代わって王となった。
1525 ユダの王アサの 二年に、ヤロブアムの子ナダブがイスラエルの王となり、二年間、イスラエルの王であった。
1526 彼は【主】の目の前に悪を行い、彼の父の道に歩み、父がイスラエルに犯させた彼の罪の道に歩んだ。
1527 それでイッサカルの家のアヒヤの子バシャは、彼に謀反を企てた。バシャはペリシテ人のギベトンで彼を打った。ナダブと全イスラエルはギベトンを攻め囲んでいた。
1528 こうしてバシャはユダの王アサの 三年に、彼を殺し、彼に代わって王となった。
1529 彼は、王となったとき、ヤロブアムの全家を打ち、ヤロブアムに属する息のある者をひとりも残さず、根絶やしにした。【主】がそのしもべ、シロ人アヒヤを通して言われたことばのとおりであった。
1530 これはヤロブアムが犯した罪のため、またイスラエルに犯させた罪のためであり、またイスラエルの神、【主】の怒りを引き起こしたその怒りによるのであった。
1531 ナダブのその他の業績、彼の行ったすべての事、それはイスラエルの王たちの年代記の書にしるされているではないか。
1532 アサとイスラエルの王バシャとの間には、彼らの生きている間、争いがあった。
1533 ユダの王アサの 三年に、アヒヤの子バシャがティルツァで全イスラエルの王となった。治世は二十四年。
1534 彼は【主】の目の前に悪を行い、ヤロブアムの道に歩み、ヤロブアムがイスラエルに犯させた彼の罪の道に歩んだ。

次へ
戻る
INDEX