サムエル記 第U

2201 【主】が、ダビデのすべての敵の手、特にサウルの手から彼を救い出された日に、ダビデはこの歌のことばを【主】に歌った。
2202 彼はこう歌った。「【主】はわが巌、わがとりで、わが救い主、
2203 わが身を避けるわが岩なる神。わが盾、わが救いの角、わがやぐら。私を暴虐から救う私の救い主、私の逃げ場。
2204 ほめたたえられる方、この【主】を呼び求めると、私は、敵から救われる。
2205 死の波は私を取り巻き、滅びの川は、私を恐れさせた。
2206 よみの綱は私を取り囲み、死のわなは私に立ち向かった。
2207 私は苦しみの中に【主】を呼び求め、わが神に叫んだ。主はその宮で私の声を聞かれ、私の叫びは、御耳に届いた。
2208 すると、地はゆるぎ、動いた。また、天の基も震え、揺れた。主がお怒りになったのだ。
2209 煙は鼻から立ち上り、その口から出る火はむさぼり食い、炭火は主から燃え上がった。
2210 主は、天を押し曲げて降りて来られた。暗やみをその足の下にして。
2211 主は、ケルブに乗って飛び、風の翼の上に現れた。
2212 主は、やみを回りに置かれた。仮庵は水の集まりと、濃い雲。
2213 御前の輝きから、炭火が燃え上がった。
2214 【主】は、天から雷鳴を響かせ、いと高き方は御声を発せられた。
2215 主は、矢を放って彼らを散らし、いなずまで彼らをかき乱された。
2216 こうして、海の底が現れ、地の基があらわにされた。【主】のとがめにより、その鼻の荒いいぶきによって。
2217 主は、いと高き所から御手を伸べて私を捕らえ、私を大水から引き上げられた。
2218 主は、私の強い敵と、私を憎む者とから私を救い出された。彼らは私より強かったから。
2219 彼らは私のわざわいの日に私に立ち向かった。だが、【主】は私のささえであった。
2220 主は、私を広い所に連れ出し、私を助け出された。主が私を喜びとされたから。
2221 【主】は、私の義にしたがって私に報い、私の手のきよさに従って私に償いをされた。
2222 私は【主】の道を守り、私の神に対して悪を行わなかった。
2223 主のすべてのさばきは私の前にあり、そのおきてから私は遠ざからなかった。
2224 私は主の前に全く、私の罪から身を守る。
2225 【主】は、私の義にしたがって、また、御目の前の私のきよさにしたがって私に償いをされた。
2226 あなたは、恵み深い者には、恵み深く、全き者には、全くあられ、
2227 きよい者には、きよく、曲がった者には、ねじ曲げる方。
2228 あなたは、悩む民を救われますが、高ぶる者に目を向けて、これを低くされます。
2229 【主】よ。あなたは私のともしび。【主】は、私のやみを照らされます。
2230 あなたによって私は軍勢に襲いかかり、私の神によって私は城壁を飛び越えます。
2231 神、その道は完全。【主】のみことばは純粋。主はすべて彼に身を避ける者の盾。
2232 まことに、【主】のほかにだれが神であろうか。私たちの神のほかにだれが岩であろうか。
2233 この神こそ、私の力強いとりで。私の道を完全に探り出される。
2234 彼は私の足を雌鹿のようにし、私を高い所に立たせてくださる。
2235 戦いのために私の手を鍛え、私の腕を青銅の弓でも引けるようにされる。
2236 こうしてあなたは、御救いの盾を私に下さいました。あなたの謙遜は、私を大きくされます。
2237 あなたは私を大またで歩かせます。私のくるぶしはよろけませんでした。
2238 私は、敵を追って、これを根絶やしにし、絶ち滅ぼすまでは、引き返しませんでした。
2239 私が彼らを絶ち滅ぼし、打ち砕いたため、彼らは立てず、私の足もとに倒れました。
2240 あなたは、戦いのために、私に力を帯びさせ、私に立ち向かう者を私のもとにひれ伏させました。
2241 また、敵が私に背を見せるようにされたので、私は私を憎む者を滅ぼしました。
2242 彼らが叫んでも、救う者はなかった。【主】に叫んでも、答えはなかった。
2243 私は、彼らを地のちりのように打ち砕き、道のどろのように、粉々に砕いて踏みつけた。
2244 あなたは、私の民の争いから、私を助け出し、私を国々のかしらとして保たれます。私の知らなかった民が私に仕えます。
2245 外国人らは、私におもねり、耳で聞くとすぐ、私の言うことを聞き入れます。
2246 外国人らはしなえて、彼らのとりでから震えて出て来ます。
2247 【主】は生きておられる。ほむべきかな。わが岩。あがむべきかな。わが救いの岩なる神。
2248 この神は私のために、復讐する方。諸国の民を私のもとに下らせる方。
2249 私の敵から私を携え出される方。あなたは私に立ち向かう者から私を引き上げ、暴虐の者から私を救い出されます。
2250 それゆえ、【主】よ。私は、国々の中であなたをほめたたえ、あなたの御名を、ほめ歌います。
2251 主は、王に救いを増し加え、油そそがれた者、ダビデとそのすえに、とこしえに恵みを施されます。」
2301 これはダビデの最後のことばである。エッサイの子ダビデの告げたことば。高くあげられた者、ヤコブの神に油そそがれた者の告げたことば。イスラエルの麗しい歌。
2302 「【主】の霊は、私を通して語り、そのことばは、私の舌の上にある。
2303 イスラエルの神は仰せられた。イスラエルの岩は私に語られた。『義をもって人を治める者、神を恐れて治める者は、
2304 太陽の上る朝の光、雲一つない朝の光のようだ。雨の後に、地の若草を照らすようだ。』
2305 まことにわが家は、このように神とともにある。とこしえの契約が私に立てられているからだ。このすべては備えられ、また守られる。まことに神は、私の救いと願いとを、すべて、育て上げてくださる。
2306 よこしまな者はいばらのように、みな投げ捨てられる。手で取る値うちがないからだ。
2307 これに触れる者はだれでも、鉄や槍の柄でこれを集め、その場で、これらはことごとく火で焼かれてしまう。」
2308 ダビデの勇士たちの名は次のとおりであった。補佐官のかしら、ハクモニの子ヤショブアム。彼は槍をふるって一度に八百人を刺し殺した。
2309 彼の次は、アホアハ人ドドの子エルアザル。ダビデにつく三勇士のひとりであった。彼がペリシテ人の間でそしったとき、ペリシテ人は戦うためにそこに集まった。そこで、イスラエル人は攻め上った。
2310 彼は立ち上がり、自分の手が疲れて、手が剣について離れなくなるまでペリシテ人を打ち殺した。【主】はその日、大勝利をもたらされ、兵士たちが彼のところに引き返して来たのは、ただ、はぎ取るためであった。
2311 彼の次はハラル人アゲの子シャマ。ペリシテ人が隊をなして集まったとき、そこにはレンズ豆の密生した一つの畑があり、民はペリシテ人の前から逃げたが、
2312 彼はその畑の真ん中に踏みとどまって、これを救い、ペリシテ人を打ち殺した。こうして、【主】は大勝利をもたらされた。
2313 三十人のうちのこの三人は、刈り入れのころ、アドラムのほら穴にいるダビデのところに下って来た。ペリシテ人の一隊は、レファイムの谷に陣を敷いていた。
2314 そのとき、ダビデは要害におり、ペリシテ人の先陣はそのとき、ベツレヘムにあった。
2315 ダビデはしきりに望んで言った。「だれか、ベツレヘムの門にある井戸の水を飲ませてくれたらなあ。」
2316 すると三人の勇士は、ペリシテ人の陣営を突き抜けて、ベツレヘムの門にある井戸から水を汲み、それを携えてダビデのところに持って来た。ダビデは、それを飲もうとはせず、それを注いで【主】にささげて、
2317 言った。「【主】よ。私がこれを飲むなど、絶対にできません。いのちをかけて行った人たちの血ではありませんか。」彼は、それを飲もうとはしなかった。三勇士は、このようなことをしたのである。
2318 ツェルヤの子ヨアブの兄弟アビシャイ、彼は三人のかしらであった。彼は槍をふるって三百人を刺し殺し、あの三人とともに名をあげた。
2319 彼は三人の中で最も誉れが高かった。そこで彼らの長になった。しかし、あの三人には及ばなかった。
2320 エホヤダの子ベナヤは、カブツェエルの出で、多くのてがらを立てた力ある人であった。彼は、モアブのふたりの英雄を打ち殺した。また、ある雪の日に、ほら穴の中に降りて行って雄獅子を打ち殺した。
2321 彼はまた、あの堂々としたエジプト人を打ち殺した。このエジプト人は、手に槍を持っていた。彼は杖を持ってその男のところに下って行き、エジプト人の手から槍をもぎ取って、その槍で彼を殺した。
2322 エホヤダの子ベナヤは、これらのことをして、三勇士とともに名をあげた。
2323 彼はあの三十人の中で最も誉れが高かったが、あの三人には及ばなかった。ダビデは彼を自分の護衛長にした。
2324 あの三十人の中には次の者がいた。ヨアブの兄弟アサエル。ベツレヘムの出のドドの子エルハナン。
2325 ハロデ人シャマ。ハロデ人エリカ。
2326 ペレテ人ヘレツ。テコア人イケシュの子イラ。
2327 アナトテ人アビエゼル。フシャ人メブナイ。
2328 アホアハ人ツァルモン。ネトファ人マフライ。
2329 ネトファ人バアナの子ヘレブ。ギブアの出のベニヤミン族リバイの子イタイ。
2330 ピルアトン人ベナヤ。ガアシュの谷の出のヒダイ。
2331 アラバ人アビ・アルボン。バルフム人アズマベテ。
2332 シャアルビム人エルヤフバ。ヤシェンの子ら。ヨナタン。
2333 ハラル人シャマ。アラル人シャラルの子アヒアム。
2334 マアカ人アハスバイの子エリフェレテ。ギロ人アヒトフェルの子エリアム。
2335 カルメル人ヘツライ。アラブ人パアライ。
2336 ツォバの出のナタンの子イグアル。ガド人バニ。
2337 アモン人ツェレク。ツェルヤの子ヨアブの道具持ちベエロテ人ナフライ。
2338 エテル人イラ。エテル人ガレブ。
2339 ヘテ人ウリヤ。全部で三十七人である。
2401 さて、再び【主】の怒りが、イスラエルに向かって燃え上がった。主は「さあ、イスラエルとユダの人口を数えよ」と言って、ダビデを動かして彼らに向かわせた。
2402 王は側近の軍隊の長ヨアブに言った。「さあ、ダンからベエル・シェバに至るまでのイスラエルの全部族の間を行き巡り、その民を登録し、私に、民の数を知らせなさい。」
2403 すると、ヨアブは王に言った。「あなたの神、【主】が、この民を今より百倍も増してくださいますように。王さまが、親しくこれをご覧になりますように。ところで、王さまは、なぜ、このようなことを望まれるのですか。」
2404 しかし王は、ヨアブと将校たちを説き伏せたので、ヨアブと将校たちは、王の前から去って、イスラエルの民を登録しに出かけた。
2405 彼らはヨルダン川を渡って、ガドの谷の真ん中にある町、ヤゼルに向かって右側にあるアロエルに宿営し、
2406 それから、ギルアデとタフティム・ホデシの地に行き、さらにダン・ヤアンに行き、シドンに回った。
2407 そしてツロの要塞に行き、ヒビ人やカナン人のすべての町々に行き、それからユダのネゲブへ出て行って、ベエル・シェバに来た。
2408 こうして彼らは全土を行き巡り、九か月と二十日の後にエルサレムに帰って来た。
2409 そして、ヨアブは民の登録人数を王に報告した。イスラエルには剣を使う兵士が八十万、ユダの兵士は五十万人であった。
2410 ダビデは、民を数えて後、良心のとがめを感じた。そこで、ダビデは【主】に言った。「私は、このようなことをして、大きな罪を犯しました。【主】よ。今、あなたのしもべの咎を見のがしてください。私はほんとうに愚かなことをしました。」
2411 朝ダビデが起きると、次のような【主】のことばがダビデの先見者である預言者ガドにあった。
2412 「行って、ダビデに告げよ。『【主】はこう仰せられる。わたしがあなたに負わせる三つのことがある。そのうち一つを選べ。わたしはあなたのためにそれをしよう。』」
2413 ガドはダビデのもとに行き、彼に告げて言った。「七年間のききんが、あなたの国に来るのがよいか。三か月間、あなたは仇の前を逃げ、仇があなたを追うのがよいか。三日間、あなたの国に疫病があるのがよいか。今、よく考えて、私を遣わされた方に、何と答えたらよいかを決めてください。」
2414 ダビデはガドに言った。「それは私には非常につらいことです。【主】の手に陥ることにしましょう。主のあわれみは深いからです。人の手には陥りたくありません。」
2415 すると、【主】は、その朝から、定められた時まで、イスラエルに疫病を下されたので、ダンからベエル・シェバに至るまで、民のうち七万人が死んだ。
2416 御使いが、エルサレムに手を伸べて、これを滅ぼそうとしたとき、【主】はわざわいを下すことを思い直し、民を滅ぼしている御使いに仰せられた。「もう十分だ。あなたの手を引け。」【主】の使いは、エブス人アラウナの打ち場のかたわらにいた。
2417 ダビデは、民を打っている御使いを見たとき、【主】に言った。「罪を犯したのは、この私です。私が悪いことをしたのです。この羊の群れがいったい何をしたというのでしょう。どうか、あなたの御手を、私と私の一家に下してください。」
2418 その日、ガドはダビデのところに来て、彼に言った。「エブス人アラウナの打ち場に上って行って、【主】のために祭壇を築きなさい。」
2419 そこでダビデは、ガドのことばのとおりに、【主】が命じられたとおりに、上って行った。
2420 アラウナが見おろすと、王とその家来たちが自分のほうに進んで来るのが見えた。それで、アラウナは出て来て、地にひれ伏して、王に礼をした。
2421 アラウナは言った。「なぜ、王さまは、このしもべのところにおいでになるのですか。」そこでダビデは言った。「あなたの打ち場を買って、【主】のために祭壇を建てるためです。神罰が民に及ばないようになるためです。」
2422 アラウナはダビデに言った。「王さま。お気に召す物を取って、おささげください。ご覧ください。ここに全焼のいけにえのための牛がいます。たきぎにできる打穀機や牛の用具もあります。
2423 王さま。このアラウナはすべてを王に差し上げます。」アラウナはさらに王に言った。「あなたの神、【主】が、あなたのささげ物を受け入れてくださいますように。」
2424 しかし王はアラウナに言った。「いいえ、私はどうしても、代金を払って、あなたから買いたいのです。費用もかけずに、私の神、【主】に、全焼のいけにえをささげたくありません。」そしてダビデは、打ち場と牛とを銀五十シェケルで買った。
2425 こうしてダビデは、そこに【主】のために祭壇を築き、全焼のいけにえと和解のいけにえとをささげた。【主】が、この国の祈りに心を動かされたので、神罰はイスラエルに及ばないようになった。

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